資金繰り表の基本から分かりやすいつくり方・活用法まで徹底解説
資金繰り表の作成は必須ではありませんが、事業成長に役立つツールのため、多くの企業で作成・活用されています。 本記事では、資金繰り表について基本的なことから解説するので、今後の経営の参考にしてください。
目次
資金繰り表とは 資金繰り表をつくるときの基本 資金繰り表の作成で必要な書類 資金繰り表を作成する流れ 資金繰り表を作成する頻度 資金繰り表を効率的に作成する方法 インターネットで公開されているフォーマットを活用する 市販の会計ソフトを活用する 専門家に資金繰り表の作成を依頼する 資金繰り表の具体的な活用方法 資金繰りが悪化する要因や厳しくなる時期を予想する 金融機関に提出することで融資の可能性を高める 資金繰りの専門家に自社の状況を分析してもらう際の資料にする 資金繰り表を作成する際によくある疑問
資金繰り表は、一定期間の現金収支を表でまとめたものであり、経営の現状把握や将来の予測に活用できるツールです。作成は義務ではありませんが、資金不足を回避し安定した経営を行う手段として価値が高い方法のため、作成した方がいい資料といえるでしょう。また、金融機関に提出することで、融資審査を通過する可能性を高まることも期待できます。
本記事では、資金繰り表の基本的な役割や作成方法、活用の仕方を具体的に解説します。経営改善やリスク回避策を検討する際に、ぜひお役立てください。
資金繰り表とは

資金繰り表とは、企業の一定期間の現金収支を表でまとめたものです。資金繰り表を作成することで現金収支の動きを「見える化」し、資金の過不足を把握できます。資金不足が予測されるタイミングを事前に把握できるため、早めの資金調達を検討するなど、適切な経営判断に役立ちます。
金融機関から融資を受ける際には、資金繰り表の提出を求められることも多い傾向にあります。企業にとって事業を行ううえで欠かせない資料ともいえるでしょう。
キャッシュフロー計算書と混同されがちですが、キャッシュフロー計算書は過去の実績を示すものです。一方、資金繰り表は将来の予測を行う点で違いがあります。
資金繰り表をつくるときの基本

資金繰り表を作成する際に必要となる書類や作成の流れなど、実際の手順を解説します。
資金繰り表の作成で必要な書類
資金繰り表を作成する際は、次のような書類が必要となります。
| 書類名称 | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 現金出納帳 | 現金の収支や支出を記録した帳簿 | 経営の全体像を把握する |
| 月次試算表 | 現金の収支や支出を記録した帳簿 経営の全体像を把握するために使用 |
日々の現金の動きを把握する |
| 預金出納帳・預金通帳 | 預金通帳:預金口座の収支や残高を記録した帳簿 | 銀行取引の詳細を確認する |
| 手形帳 | 発行した手形や受け取った手形の記録を管理する帳簿 | 手形の状況を把握する |
| 借入金返済明細書 | 借入金の返済額やスケジュールを記載した明細書 | 将来の返済計画を把握する |
| 売掛金・買掛金台帳 | 売掛金や買掛金の状況を記録した帳簿 | 入金・支払い予定を把握する |
このほか、必要に応じて請求書や見積書、税金の納付計画表なども用意しましょう。このように財務に関わる複数の書類を活用することで、現在の現金残高だけでなく、今後の支出や収入額をより正確に把握できます。
例えば、現金出納帳や預金通帳をもとに毎月の現金の流れを確認し、借入金返済明細書を通じて将来の返済予定を整理することが可能です。
必要な書類をきちんと揃えることで、より精度の高い資金繰り表を作成できます。
資金繰り表を作成する流れ
用意した書類をもとに、資金繰り表を作成していきます。後述しますが、市販の会計ソフトや日本政策金融公庫が提供している資金繰り表フォーマットの活用がおすすめです。項目がすでに設定されているため、データを入力するだけで作成できます。
まずは資金繰り表のフォーマットを作成しましょう。主に次のような項目を作成します。
- 前月繰越
- 営業収支
- 財務収支
- 経常外収支
- 翌月繰越 など
次に各帳簿や書類から必要なデータを抽出し入力していきます。最後に、入力した収支をもとに翌月繰越額を算出します。この額が翌月の資金繰り計画の基準となります。
以上の手順を毎月繰り返すことで、資金の流れが可視化できる資金繰り表が整います。
資金繰り表の作成例については、こちらの資料でも解説しています。あわせてお役立てください。
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資金繰り表を作成する頻度
資金繰り表は基本的に毎月作成しましょう。月次で作成することで現金収支の動きをタイムリーに把握し、迅速な経営判断を下せるためです。また、複数月の資金繰り表を見ることで、季節的な売上変動や大きな支出が発生する時期や、資金が不足しやすいタイミングを事前に把握できます。
12カ月分をひとまとめにして管理すると、全体の資金状況も把握しやすくなります。定期的に作成・分析することで、安定した事業運営に寄与します。
資金繰り表を効率的に作成する方法

資金繰り表はフォーマットができていれば作成に大きな手間はかかりませんが、一からつくるとなるとその工程は大きく増えてしまいます。また慣れるまでは、どの数値を入力すればいいかの判断に時間がかかる可能性もあります。
資金繰り表をより効率的に作成するには、各ツールを活用することがポイントです。資金繰り表作成の負担を減らす方法を紹介します。
インターネットで公開されているフォーマットを活用する
インターネット上で公開されているフォーマットを活用するのが、一つ目の方法です。
無料で公開されているものもあるため、使いやすいものを選びましょう。ダウンロード後に自社の状況に合わせてカスタマイズすることも可能です。
例えばExcel用のフォーマットでは、収支の合計欄にSUM関数が設定されていることが多いため、自分で計算式や項目を作成する必要がありません。
また、日本政策金融公庫の公式サイトでも、資金繰り表の作成に役立つフォーマットをダウンロードできます。記載例や作成手順やポイントも添付されているため、初めて作成する場合は特に活用しやすい手段です。
市販の会計ソフトを活用する
会計ソフトのなかには、日頃の収支データを入力するだけで自動的に資金繰り表を作成できるものもあります。「資金繰り表を作成するための時間」を取る必要がないため、その他の業務にリソースを割けるようになるでしょう。特に、定期的に資金繰り表を作成したい場合や、収支の管理を一元化したい場合に有用です。
会計ソフトは買い切り型と月額課金型の2種類あります。自社の予算や今後の活用方法などに応じて選択しましょう。
日々の入力を確実に行えば、正確な資金繰り表を簡単に作成できるため、業務効率化にも大きく寄与するツールとなります。
専門家に資金繰り表の作成を依頼する
税理事務所や経理の代行サービス、資金調達コンサルティングなど、専門家に依頼するという手段もあります。その他、クラウドソーシングサービスを活用して、希望する条件にあった依頼先を見つけることも可能です。
無料のフォーマットや会計ソフトを活用する場合に比べて費用はかかりますが、その分作成業務の負担を軽減できる点は大きなメリットです。特にスタートアップ企業など、資金管理や資金計画に慣れていない場合は有用でしょう。
資金調達コンサルティングは、資金繰り表の作成だけでなく、データに基づいた事業へのアドバイスを依頼することも可能です。財務面を含め事業のサポートを求める場合は検討価値の高い方法となるでしょう。
資金調達コンサルティングに依頼できる内容や活用するメリットなど、詳しくはこちらの記事で解説しています。あわせてご覧ください。
資金繰り表の具体的な活用方法

資金繰り表を作成し活用することで、企業として必要なタイミングで資金調達を行えるようになります。適切な行動を起こせることで、資金繰りの安定化、ひいては事業の安定化や事業拡大につなげることが期待できます。
つまり、資金繰り表は作成して終わりではなく、その結果を活用し事業に反映させていくことが重要といえるでしょう。本章では、作成した資金繰り表の具体的な活用方法を紹介していきます。
資金繰りが悪化する要因や厳しくなる時期を予想する
資金繰り表を分析することで、資金繰りが厳しくなる時期を事前に予想できます。資金の流れを可視化できるため、何が資金繰りに影響を与えているのかを特定しやすくなり、早めの資金調達や対策を検討できるようになります。
例えば、支払いと売上の入金にタイムラグがある場合や、売上の急拡大、事業費用が急増している場合に資金繰りが悪化する傾向があります。このような場合、キャッシュフローの調整が一つの対策となりますが、資金繰り表があれば、適切なタイミングで適切な対策を講じることが可能です。
このように資金不足を回避し事業の成長を促進できることから、資金繰り表は、経営戦略の基盤となる重要なツールといえます。
金融機関に提出することで融資の可能性を高める
融資を申請する際に資金繰り表を提出すると、審査の通過可能性を高められる可能性があります。収支を具体的な数字で示すことができ、返済能力に説得性を持たせることができるためです。
融資の審査は時間がかかる傾向にあるため、融資を希望する際は早めに行動するようにしましょう。資金繰りが悪化し始めてからではなく、資金繰りに改善の余地が見え始めた段階から動き出すことが大切です。
資金繰りの専門家に自社の状況を分析してもらう際の資料にする
資金繰りの相談をする際、資金繰り表を提示することで自社の状況を具体的に伝えられるため、より的確なアドバイスを受けられるようになります。専門家の助言を受けることで資金計画の精度が上がり、経営の安定化や資金調達の成功にもつながります。
資金繰りについて相談できる機関は多く、例えば公的な相談先には次のようなものがあります。
- 日本政策金融公庫
- 商工会議所
- 商工会
- 中小企業基盤整備機構
- よろず支援拠点
- ワンストップ相談窓口Plus One
- 税務署
基本的に無料で相談可能です。
また有料となりますが、資金調達コンサルティングに依頼する方法もあります。
資金繰り表を作成する際によくある疑問

最後に資金繰り表に関して、よくある疑問をいくつか取り上げて解説します。特に初めて資金繰り表を作成するスタートアップ企業の方は、ぜひ参考にしてみてください。
資金繰り表を作成する義務はある?
貸借対照表や損益計算書は、会社法や法人税法などによって作成や提出が義務付けられていますが、資金繰り表には法規的な義務はありません。
しかし前述したように、資金繰り表は自社の資金状況を正確に把握し、将来の資金計画を立てるうえで重要な資料です。そのため、義務ではないものの「作成した方がいい」といえるでしょう。
資金繰り表の保管は必要?
資金繰り表に一定期間の保管義務はありません。「〇〇年分を保管しなけらばならない」ということはありませんが、過去の資金繰り表を参照することで、特定の時期における資金の流れや改善策の効果を検証できます。予測と実績の比較のためには、ある程度の期間、保管しておいた方がいいでしょう。
紙ベースでオフィスの保管スペースが取られる場合は、デジタル化してデータとして保管しておくのがおすすめです。データの参照も容易になるため、効率性も高まります。
資金繰り表なしでも経営はできる?
実際、資金繰り表を作成せずに経営を続けている企業も存在します。しかしこの場合、現状の資産状況を正確に把握することが難しく、将来予測の精度も下がります。結果として黒字倒産のリスクが高まることも考えられるでしょう。
例えば、売上が順調でも、支払いや返済のタイミングが重なると現金が不足するケースが発生します。黒字倒産の要因となるわけですが、資金繰り表をもとに事態を予想できていれば、事前に対策を講じることが可能です。
資金繰り表は事業運営に必須ではありませんが、このようなリスクを未然に防ぐツールになるため、経営の安定化や持続的な成長に必要な資料だといえます。
資金繰り表を作成して経営の安定化を図ろう

資金繰り表は、経営の現状を把握し、将来の資金状況を予測するためのツールです。適切に活用することで、資金繰りを安定させ、資金に余裕のある経営を実現できます。
資金繰りを安定させるには、日頃のキャッシュフローを安定化させることもポイントです。例えば、弊社のマーケティング費や広告費の分割後払いサービス「AD YELL(アドエール)」(※1)や期日の迫った請求書をクレジットカードで支払うことで、最大60日後に支払い延長可能なサービス「請求書をクレジットカード払いにできる、Vankable 請求書カード払い」は、キャッシュアウトを遅らせることでキャッシュフローの改善に役立つサービスです。支払いサイトを延長することで、資金繰りの安定化を図れます。
企業の成長を促進し事業拡大につなげるためにも、資金状況を可視化して効率的な経営を行っていきましょう。
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