【2024年最新版】スタートアップ企業が活用できる税制優遇まとめ
法人税や所得税の負担により、キャッシュフローの悪化を懸念するスタートアップ企業や経営者に向けて、最新版の税制優遇を紹介します。税制優遇の要件や控除額、キャッシュフローを改善する方法もあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
スタートアップ企業向けの税制優遇 中小企業投資促進税制 ストックオプション税制 研究開発税制 パーシャルスピンオフ税制 スタートアップ企業に投資する投資家向けの税制優遇 エンジェル税制 オープンイノベーション促進税制 スタートアップ企業が税制優遇を活用するポイント 必ず最新の情報を確認する 税金のプロに相談する 税制優遇を活用してスタートアップ企業の成長を促進しよう
スタートアップ企業にとって、税制優遇はメリットの多い制度です。適切に活用することで税負担を軽減し、キャッシュフローの改善にも寄与することが期待できます。
特にスタートアップ企業を対象とした制度は、事業成長を促進し、持続可能なビジネスモデルの構築をサポートすることを目的に設計されています。
本記事では、スタートアップ企業が活用できる主な税制優遇を紹介します。企業にとってのメリットや活用時のポイントも解説しますので、ぜひご覧ください。
スタートアップ企業向けの税制優遇

スタートアップ企業にとって有用な税の優遇制度を紹介します。
対象や条件など、制度内容は変更される可能性があるため、実際に活用する際は公的機関の最新情報を確認するようにしてください。
中小企業投資促進税制
中小企業投資促進税制は、初期投資の負担を軽減できる制度です。個人事業主や資本金3,000万円以下の法人を対象として、一定の設備投資やソフトウェアの導入に対して特別償却または税額控除が適用されます。
特にスタートアップ企業にとって、事業拡大における設備投資の資金的な負担は課題になることが多い傾向にあります。初期投資の負担を軽減し資金の効率的な運用が可能になる中小企業投資促進税制の活用は、スタートアップ企業の成長を後押しする税制ともいえます。
ストックオプション税制
ストックオプション税制は、株式を権利行使する際の取得株式の時価と権利行使価額との差額に対する給与所得課税を株式売却時まで繰り延べ、株式売却時に売却価格と権利行使価額との差額を譲渡所得として課税する制度です。
例えば、企業が従業員にストックオプションを付与し、権利行使価格、つまり株式の購入価格が1株1,000円だとします。その後企業の株価が2,000円に上昇した場合、従業員は1,000円で株式を購入し、2,000円で売却することができます。株式購入時の利益には課税されず、この差額1,000円に対し、譲渡所得として課税されるというわけです。
このように、ストックオプションを導入することで、将来的に株価が上昇すれば従業員は利益を得ることができます。
ストックオプション税制によって権利行使期間が延長されることは、従業員にとって利益を得やすくなる点でメリットです。特に、事業が軌道に乗るまでに時間がかかりやすいディープテック企業などにとって、人材確保に役立つ手段にもなるでしょう。
研究開発税制
研究開発税制は、企業が研究開発活動に取り組む際に税制上の優遇を受けられる制度です。民間企業の研究開発投資を維持・拡大することにより、イノベーション創出につながる中長期・革新的な研究開発等を促し、国の成長力・国際競争力を強化することを目的としています。
研究開発税制は、一般型、中小企業技術基盤強化税制、オープンイノベーション型の3種類から構成されています。研究の種類により活用できる税制が異なりますが、試験研究費の一部を対象として法人税の控除が受けられます。
スタートアップ企業にとって、研究開発は事業成長に不可欠ですが、投資には不確実性が伴うため、十分な資金を確保することが難しい場合があります。研究開発税制を活用することで、リスクを軽減しながら研究開発投資を行えるため、事業の成長を加速させていくことが期待できます。
※参考:研究開発税制について(国税庁)
パーシャルスピンオフ税制
パーシャルスピンオフ税制は、スピンオフ(※1)を行う際、親会社に持分を一部残す場合にも、一定の要件を満たせば親会社および株主の課税を対象外とする制度です。つまり、親会社が一部の持分を保持しながらスピンオフを実施する際、一定の条件を満たすことで税負担を軽減できる制度です。
スピンオフは事業構造をシンプル化できるため、経営効率の向上や経営における意思決定の迅速化が図れます。パーシャルスピンオフ税制を活用することで、よりスピンオフも実行しやすくなるでしょう。
また、適格組織再編に該当するスピンオフであれば、株式譲渡益課税や配当課税が免除されるため、再編時の税負担を大きく軽減することが可能になります。
※1 企業が特定の事業部門や子会社を切り離して独立させる事業再編手法
※参考:企業グループや組織再編に係る税制の整備(経済産業省)
スタートアップ企業に投資する投資家向けの税制優遇

今後の成長が予測しにくいスタートアップ企業への投資は、リスクが高いとみなされやすい傾向にあります。エンジェル税制やオープンイノベーション促進税制など、投資家が優遇措置を受けられる対象の企業になることで、リスクをおさえながら投資を促進することが可能になります。
エンジェル税制
エンジェル税制は、スタートアップ企業に投資する個人(エンジェル投資家)に対して適用される税制優遇制度です。投資家側のリスクが軽減されるため、スタートアップ企業にとっては、より多くの資金を調達できる可能性が高まります。
「ベンチャー企業要件」と「個人投資家要件」を満たしていることが適用条件です。企業側には、設立年数とそれに伴う要件、資本金の額、従業員数などさまざまな要件が課されています。
経済産業省では、企業がエンジェル税制の対象か否かを確認できる、事前確認制度を設けています。事前確認制度を活用することで、企業は個人投資家に対してエンジェル税制適用企業であることを提示できるため、出資を募る際のPR効果も期待できます。
関連記事:
エンジェル投資とは?出資を受ける方法やメリット・デメリット、注意点を解説
オープンイノベーション促進税制
オープンイノベーション促進税制は、国内の対象法人がオープンイノベーションを目的としてスタートアップ企業の株式を取得する際に、取得価額の25%を課税所得から控除できる制度です。この制度は、対象法人がスタートアップ企業と連携し、共同でイノベーションを推進することを後押しするものです。
これまでスタートアップ企業の出口戦略としてIPO(新規株式公開)が主な手段であったなか、M&A(企業買収)という選択肢が持ちやすくなった点がメリットとなります。
オープンイノベーション促進税制を活用することで、スタートアップ企業はM&Aによる資金調達や事業拡大の機会を得やすくなるでしょう。選択肢が増えることで、より自社に適した手法を選択することができるようになり、事業の成長を加速させることが期待できます。
スタートアップ企業が税制優遇を活用するポイント

スタートアップ企業にとって、税制優遇は積極的に活用をしていきたい制度といえます。しかし、適切に活用するためには、いくつかおさせておきたいポイントがあります。
必ず最新の情報を確認する
スタートアップ企業が税制優遇を活用する際、最新の税制情報を確認することが欠かせません。税制は定期的に見直されるため、優遇措置の内容が変更されることがあるためです。
例えば企業要件の改正により、それまでは対象となっていた企業が、改正後は優遇措置の適用外となる可能性もあります。そのため、税制を活用するタイミングで必ず最新の情報をチェックし、改正内容に注意する必要があります。
税制の見直し時期は制度によって異なるため、必ず活用を検討している制度ごとに公的機関の情報を確認するようにしましょう。
税金のプロに相談する
税制優遇は適用要件が細かく設定されていたり、必要書類や申請方法が煩雑だったりするため、税に関する知識がないと適切に活用できないことも考えられます。誤った申告をしてしまう、活用できるはずだった制度を見逃してしまうなど、企業にとって損失を招く可能性もあります。
そのため、税理士などの税金のプロに相談することも検討してみましょう。税務の専門家であれば、最新情報に基づいて適切な運用をサポートしてもらえます。企業の個々の状況に応じたアドバイスもしてもらえるため、より効率的な資金運用をしていけるでしょう。
税制優遇を活用してスタートアップ企業の成長を促進しよう

スタートアップ企業が活用できる税制優遇は多岐に渡ります。うまく活用すれば負担をおさえた事業運営ができるため、キャッシュフローの改善にも寄与するでしょう。
また、エンジェル税制やオープンイノベーション促進税制などをうまく活用することで、投資家との連携が強化され、将来の資金調達がスムーズに進められる可能性も期待できます。
スタートアップ企業の事業を成長・拡大していくためには、ファイナンス面の強化が大切です。本記事で紹介したような税制優遇も活用しながら、企業成長を促進していきましょう。
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