販管費率とは? 販管費率を分析する際のポイントや削減方法を解説

2025.03.25

#販管費率

販管費率とは? 販管費率を分析する際のポイントや削減方法を解説

販管費率は、販売費および一般管理費(販管費)が売上高に占める比率です。主に自社の経営効率の把握や収益性の向上、予算管理の改善などに用いられます。本記事では、販管費を分析する際のポイントや、販管費率を削減する具体的な方法を解説します。

 

目次

販管費率とは 売上高における販売費と一般管理費の割合 販管費と売上原価の違い 販管費率の考え方 販売費率と販売管理費比率の計算方法 売上高総利益率との違い 販管費の内訳・勘定科目一覧 販売費の勘定科目・内訳一覧 一般管理費の内訳・勘定科目一覧 人件費は売上原価になることもあるため注意 販管費を分析する際のポイント 販管費の内訳を分析して把握する 同規模の同業他社と比較する 期間で比較する 販管費を削減する方法 地代・家賃の見直し 旅費交通費の見直し 広告宣伝費の見直し 役員報酬の見直し 人件費の見直し その他諸費用の見直し 販管費率の分析・削減が企業成長をサポートする

 

販管費率とは、販売費および一般管理費が売上高に占める比率のことです。利益に大きく影響する要素のため、販管費のコスト削減は規模にかかわらず企業にとって課題の1つといえます。例えば、トヨタ自動車株式会社では販管費を分析し、徹底した低減を図ることで利益を向上させました。

本記事では、販管費を分析する際のポイントや、販管費率を削減する具体的な方法を解説します。

販管費率とは

販管費率とは、売上高のなかで販売費および一般管理費が占める割合を表す指標です。一般的に、販管費は低いほどいいとされます。売上に対する費用の比率が少ないほど経費効率がよいことを示すためです。

売上高における販売費と一般管理費の割合

販売費と一般管理費は、企業の利益を左右する重要な指標です。まず、販売費とは商品やサービスを販売するために発生する費用を指します。具体的には、販売活動を行う従業員の給与や交通費、商品発送料、広告宣伝費、商品の保管にかかる費用などが該当します。これらのコストをおさえられれば、その分営業利益を増やせます。

一方、一般管理費とは、企業全体の管理業務にかかる費用を指します。例えば、オフィスの家賃、水道光熱費、電話やインターネットの通信費などです。さらに、文具やコピー用紙などの消耗品、複合機やパソコンのリース料も一般管理費に含まれます。

一般管理費を売上高と比較し、割合を把握することで、企業の運営効率を測定できます。

販管費と売上原価の違い

売上原価とは、「売れた製品を製造するためにかかった総費用」を指します。例えば、製造に必要な原材料費や労働力、製造設備の維持費などが含まれます。

一方、販管費は「製品を販売するためにかかる費用」です。この中には、広告宣伝費やPR活動のための出張費、従業員の研修費用なども含まれることがあります。売上原価が「製品をつくるコスト」であるのに対し、販管費は「製品を売るためのコスト」として位置づけられます。

販管費と売上原価の違いを把握することで、どこにコストがかかっているかを明確にでき、適切な経営につなげることが可能です。

販管費率の考え方

販管費を用いた財務分析で、一般的なのが販売費率(販売管理費比率)です。販売費率は、売上に対して販売費や一般管理費がどれぐらいの割合になっているかを見る指標です。

販売費率と販売管理費比率の計算方法

販売費率と販売管理費比率は、会社の費用効率を分析するための重要な指標です。まず、販売費率は、販売費のみを売上高と比較して計算します。計算式は以下の通りです。

販売費率=販売費 ÷ 売上高 × 100

例えば、販売費が200万円で売上高が1,000万円の場合、「200万円 ÷ 1,000万円 × 100」で20%となります。一方、販売管理費比率は、販売費と一般管理費を合わせた費用を対象とします。計算式は以下の通りです。

販売管理費比率=(販売費+一般管理費)÷ 売上高 × 100

例えば、販売費が200万円、一般管理費が200万円、売上高が1,000万円であれば、「(200万円+200万円)÷ 1,000万円 × 100」で40%となります。これらの指標は、コスト構造の改善や収益性向上の判断材料となります。

売上高総利益率との違い

売上高総利益率と売上高販管費率は、それぞれ異なる視点から会社のパフォーマンスを評価します。売上高総利益率は、「商品やサービスの競争力や付加価値の高さ」を測る指標であり、計算式は「(売上高-売上原価)÷ 売上高 × 100」です。

これに対し、売上高販管費率が表すのは「営業活動の効率性」です。例えば、「商品力が強いが営業力が弱い」場合、販管費率が高くなる傾向があります。これは、販売活動に多くの費用がかかっていることを示します。

一方、「商品力が弱いが営業力が強い」場合には、販管費率が低くなり、販売活動の効率性が高いことを意味します。このように、両指標の違いを理解することで、会社の経営戦略を適切に見直せます。

販管費の内訳・勘定科目一覧

ここからは販売費と一般管理費の勘定科目と内訳をそれぞれ紹介します。

販売費の勘定科目・内訳一覧

販売費は商品やサービスを販売するために発生する費用で、下記のような項目があります。

勘定科目 内訳
広告宣伝費 広告費、ポスターやチラシの印刷代など
販売手数料 販売代理店へ支払う手数料
荷造運賃 商品の運送費用
販売促進費 キャンペーンやサンプル品などの費用
接待交際費 取引先関係者への接待、食事代、慶弔費など
旅費交通費 取引先や営業先への移動や出張費など

一般管理費の内訳・勘定科目一覧

一般管理費は、会社運営に必要になる日常的な費用を指し、主な項目は上記の通りです。

勘定科目 内訳
役員報酬 役員に支払われる報酬
給与賃金 従業員の給料・賞与など
雑給 パートやアルバイトなどに対しての給料・賞与
法定福利費 健康保険のような事業者に義務付けられた福利厚生に関わる費用
修繕費 事務所や機器などのメンテナンス費用
外注工賃 バックオフィスやデザイン、プログラムなど外注した場合の費用
水道光熱費 水道代、電気代、ガス代など
地代家賃 事業所の家賃や駐車場の地代など
消耗品費 事務消耗品、少額の工具や器具など
旅費交通費 従業員の通勤手当や出張費など
通信費 インターネット代や電話代など
保険料 会社の所有物に対する損害保険料など
減価償却費 資産計上している減価償却資産の当期費用計上分

人件費は売上原価になることもあるため注意

人件費は、業種や業務内容によって分類が異なります。例えば、製造業では、工場で働く人への賃金と事務所で働く人への給料が分けられます。工場で働く人への賃金は、製品の製造に直接関わるため、売上原価として扱われます。

一方、事務所で働く人への給料は、間接的な業務に該当するため、一般管理費に分類されます。この違いを理解することは、正確な原価計算や経営分析に欠かせません。特に、製造業などで複雑なコスト構造を持つ場合、この区分が収益性の把握やコスト削減の基盤となります。

販管費を分析する際のポイント

販管費を正しく分析するためには、ポイントをおさえることが大切です。ここでは、推移の比較や、内訳を把握するなど自社でできる分析のほか、同業種の他社との比較方法を紹介します。

推移や内訳などの自社内における比較、同業種で同規模の他社との比較を通して、販管費を分析しましょう。

販管費の内訳を分析して把握する

販管費を分析することで、どの項目にコストが集中しているかが分かります。ただ販売費と一般管理費に分けるだけでなく、さらに詳細に分類して現状を把握しましょう。

例えば、販売費なら販売手数料、送料、包装費を個別に分析します。一方、一般管理費では人件費、旅費交通費、家賃、減価償却費などに分けて管理します。これにより、コストの削減ポイントを見つけやすくなるでしょう。

同規模の同業他社と比較する

販管費率は業種や会社の規模によって異なります。自社の費用効率を判断するために、同業種・同規模の企業と比較することが必要になります。

例えば、中小企業庁の「中小企業実態基本調査(令和4年確報)」では、建設業の販売費率は19.35%、製造業は17.65%です。また、経済産業省の「商工業実態基本調査」によれば、製造業の販管費率は中小企業で20.8%、大企業で17.0%です。

これらの数値を基準に自社の販管費率を評価し、平均より低ければ効率的な経営と判断できます。同業他社のデータを積極的に活用しましょう。

期間で比較する

自社の過去データと比較することで、販管費率の推移を把握できます。前年度や前月と比べて販管費率が上昇している場合、売上に対して販管費が過剰であると考えられるでしょう。

特に、月単位で推移表を作成すると問題の原因を探りやすくなります。販管費率が高い場合は、コスト構造の見直しや無駄な支出の削減が必要になるでしょう。こうした継続的な分析が、経営効率向上につながります。

販管費を削減する方法

販管費率を削減する方法として代表的なものを紹介します。

地代・家賃の見直し

賃貸オフィスを利用している場合、家賃は販管費のなかでも大きな割合を占めます。事業の状況や規模に応じて、家賃の見直しを検討しましょう。例えば、テレワークを導入して事業所の規模を縮小すれば、毎月の家賃を削減できます。

また、事務所の立地や設備の見直しも効果的です。事業への必要性を見極めながら、柔軟な対応で販管費率の改善を目指しましょう。

旅費交通費の見直し

従業員の移動や出張が多い場合、旅費交通費の見直しが販管費削減に役立ちます。通勤の定期券を6カ月分で購入すると、一日あたりの料金が安くおさえられます。新幹線や飛行機のチケットは早割を活用するとさらにお得です。

加えて、宿泊を避けて日帰り出張にする、出張をWeb会議に切り替えるといった工夫も効果的です。これらの方法で無駄なコストを削減しましょう。

広告宣伝費の見直し

広告宣伝費は、販管費を圧迫する大きな要因になり得ます。特に、広告を外部に委託している場合は、どれだけの費用がかかっているかを正確に把握します

また、広告の効果を測るためにユニットエコノミクスなどの指標を活用し、自社の現状に合った広告戦略を再検討しましょう。例えば、費用対効果が低い施策を削減し、ターゲット層に適した広告へ集中させることで、無駄な支出をおさえられます。

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役員報酬の見直し

役員報酬の見直しは、販管費率削減に効果的な方法の1つです。ただし、変更には注意が必要になります。一般的に役員報酬の変更や減額は、事業年度の開始から3カ月以内に株主総会で承認を得なければなりません。

また、従業員の給与と異なり、原則として理由なく報酬額を変更することはできません。適切なタイミングと手続きを守りながら、会社全体の費用効率を向上させる施策として活用しましょう。

人件費の見直し

人件費は販管費の中でも大きな割合を占めます。例えば、特定の専門知識やスキルが必要な業務をアウトソーシングすることで、コストを削減可能です。

経理や人事業務などのバックオフィス業務を外部に委託したり、プログラマーやデザイナーをプロジェクト単位で活用するのも有効です。これにより、効率的な運営が可能になり、販管費率の改善につながります。柔軟な戦略で効果的なコスト管理を行いましょう。

その他諸費用の見直し

販管費の中には、無駄な費用が潜んでいる場合があります。例えば、備品や消耗品の購入はまとめ買いを検討し、安価な購入先を見つけることでコストを削減できます。

また、オフィスの照明をLEDに変更することで電力費を節約するのも効果的です。これらの小さな見直しが積み重なることで、全体の費用をおさえ、販管費率の改善につながります。

販管費率の分析・削減が企業成長をサポートする

販管費率とは、売上高に対して販売費および一般管理費が占める割合を示す重要な指標です。この数値を把握し、改善することで企業の収益性や経営効率を向上させることが可能です。

販管費率が高い場合は、役員報酬や固定費の見直しを行い、コスト削減を図りましょう。ただし、企業の経営安定には販管費率の調整だけでなく、多角的な施策が必要です。

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