ブランドストーリーを語り、「想い」を伝える。お客さまからも、求職者からも、選ばれる理由をつくる

2024.06.28

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全ての動物とその家族の幸せな生活をサポートするため、ペットフードの製造・販売や動物病院運営などのペット関連事業を展開している犬猫生活株式会社。ペットフードの販売数は、創業5年で2,500万食を突破し、現在の売上規模は約20億円に達しています。D2C事業を伸ばす秘訣について、佐藤淳さんにお話を伺いました。

 

目次


・プロフィール
・ペットフードのD2C事業をメインに、事業を拡充中
・「犬猫生活だから買いたい」と思ってもらえるブランディングを意識
・CSはブランドの顔。外注せず、質を上げる努力を
・「共感」できるブランドづくりは、優秀な人材採用にも活きる
・広告予算増を判断する際の2つの注意点

 

プロフィール

佐藤 淳 / 犬猫生活株式会社 代表取締役

オイシックス・ラ・大地でのEC事業本部 販売促進室の責任者、犬猫生活の前身となる「オネストフード」の立ち上げを経て、国産無添加のペットフードD2Cブランドをスタート。2021年には前澤ファンドから出資を受けている。

 

ペットフードのD2C事業をメインに、事業を拡充中

――貴社の事業についてご紹介ください。

ペットフードのD2C事業をメインに、ペット関連商品の企画・製造・販売を手掛けています。ドライフードからフレッシュタイプと呼ばれる冷凍品、ペット用おやつやサプリメントなど、一通りのラインナップを取り揃えています。

創業時に始めたペットフードのD2C事業に加えて、現在はペットライフプラットフォームとしての事業拡充も進めています。すでに展開しているのは、動物病院の事業です。もう一つの軸としていきたいのはグローバル展開で、まずは台湾とアメリカで商品を発売できるよう準備を進めています。

――事業立ち上げ後に直面した壁のうち、一番大きなものは何でしたか?また、それをどう乗り越えたのでしょうか。

「ここが一番大きな壁だった」といえるものはなく、その都度何かしらの壁があり、どれも大きかったなという感じですね。

初期には、そもそも「商品をつくれないかも」という壁がありました。アレルギーに配慮するため、グレインフリーにしたうえで肉の比率を高めた、無添加のペットフードをつくりたいというのが私の希望でした。しかし、ドライフードはクッキーのように固める必要があるため水分量の調整がシビアで、水分の多い生肉を使いつつ、さらに穀類を使わないで固めることは、とても困難でした。

OEMの候補先からことごとく断られてしまいました。それでも、諦めずに熱意を伝えていった結果、一社だけが耳を傾けてくれました。

 

「犬猫生活だから買いたい」と思ってもらえるブランディングを意識

――佐藤さんは、ECサイトの運営代行会社の立ち上げや、中途入社した食材宅配大手会社での経験を積まれて今に至ります。これまでの経験から得た「こうすれば選ばれる」というセオリーがあれば教えていただきたいです。

最近の流れとして、「もの消費」から「こと消費」に変わってきているという点が、挙げられます。「こと消費」とは、ただ商品を買うだけではなく、購入により得られる体験を求める消費行動です。そうした体験のなかで、「誰から買うか」を重視されるお客さまが増えていると感じています。

メーカーからすると、自社の製品がいかに高品質なのかを訴求したくなるものですよね。しかし、今は商品もブランドも数があまりにも増えているため、商品スペックの良さを訴えても「本当に?」と半信半疑で見てしまうお客さまも多い傾向にあるんです。よい商品をつくり、その良さを伝えられれば売れるわけではないんですね。

そこで重要になるのが「この会社・ブランドから買いたい」と思ってもらうことです。

――どうすれば、お客さまに「ここから買いたい」と思ってもらえるのでしょうか。

有効な手法の1つは、企業・ブランドストーリーの発信ですね。どのような想いを持って取り組んでいるのかを発信することで、お客さまからの信頼、応援を得られるようになっていきます。

実は、弊社もブランド立ち上げ当初は、どちらかというと商品スペックを押していました。商品に自信がありましたから、お客さまに喜んでいただけそうな情報を整理し、PRすれば売れると思っていたんです。しかし、販売開始後にユーザーインタビューを重ねていくと、購入理由の一位は「応援したいと思ったから」だったのです。

そこから、「犬猫生活はこういう企業です」「こういう想いで取り組んでいます」というストーリー発信に力を入れる方向にシフトしました。その結果、売上規模が数億円から数十億円に拡大しました。商品スペック押しのままだったとしたら、ここまでの拡大はなかったのではないかと思っています。

 

CSはブランドの顔。外注せず、質を上げる努力を

――これまでのご経験から、D2CメーカーがECで成功するために必要なこと、逆に避けたいことについて、佐藤さんはどのような意見をお持ちですか?

企業によって違うとは思いますが、明確に絶対避けたいのは、CS(カスタマーサポート)の機能の外注ですね。

――それはなぜでしょうか。

D2Cメーカーにとって、CSチームはブランドの顔だからです。リアル店舗でいう「店員」にあたる役割を外部に依頼するのは、D2Cの良さをなくすことにつながります。また、お客さまと直接やり取りをし、お客さまの状況やニーズをきちんと把握することは、ブランドの成長に必要不可欠です。

多くの成長途上のスタートアップ企業と同じように、弊社でも必要に応じて業務を外注することはありましたが、CSだけは自社で持ち、質を上げるよう意識してきました。

――どのようにしてCSの質を上げてきたのでしょうか。

採用と育成の二軸で考えています。

採用に関しては、CS経験者よりも動物関連の職業経験者を優先してCSに採用してきました。その結果、「弊社のCSは動物のプロです」とお客さまに言え、信頼してもらえる企業づくりにつながっています。現在10人ほどいるCSの半数は、動物病院の看護師やシェルタースタッフなど、CSではなく動物関連の仕事の経験者です。

育成は、「ペットに関する知識」「CSとしての対応力」の2つの方向性で行っています。いずれも資格試験を活用していて、ペットに関する知識向上では「ペット栄養管理士」を、CSの対応力向上に関しても能力を測りランク付けをするテストを活用しており、最終的な目標を一級取得としています。

 

「共感」できるブランドづくりは、優秀な人材採用にも活きる

――CSの採用に関してのお話がありましたが、CS以外でも「採用」はビジネスを成長させるうえで重要な事項です。佐藤さんが思う、採用成功の秘訣について伺いたいです。

売上規模が数十億円レベルの企業になれるかどうかの鍵の1つは、採用にあると思います。このフェーズで必要なのは、コアメンバーとも言える、各部署を引っ張っていける優秀な人材をいかに集められるかでしょう。

優秀なコアメンバーの採用に必要不可欠だと思っているのは、「共感」づくりです。なぜなら、「共感」をフックにすれば転職市場には出てこない優秀な人材にもアクセスできるからです。転職市場では、どうしても大企業やメガベンチャーと比較されるため、成長途上のスタートアップ企業の採用難易度は上がります。転職を考えていない優秀な方たちに、共感をきっかけに自社で働くことに興味を持ってもらうことで、転職市場よりもスムーズな採用活動ができるのです。

また、共感して入社してくれた方は、カルチャーフィットの面もクリアしているため、会社にすぐになじめ、パフォーマンスを最大限発揮してもらいやすいのも特徴の1つです。

弊社の場合、お客さま向けに行ってきた「共感してもらえる会社づくり」が、結果的に採用にもいい効果をもたらしました。お客さまから見て共感できる企業は、働きたいと思ってもらえる企業でもある。当然と言えば当然ですよね。結果、弊社で今活躍してくれているメンバーのほとんどは、転職サイトからの応募者ではなく、弊社のことを知り、「犬猫生活だから働きたい」と思って応募してきてくれた方ばかりです。

例えば、弊社の広告運用担当者は、わんちゃん猫ちゃんが好きだったり、実際に一緒に暮らしているメンバーが多く、そのぶん目線感がお客さまに近いクリエイティブを制作できるんですよ。

広告運用は代理店にアウトソースできる業務ではありますが、弊社では8割をインハウスにし、自社割合を高くしています。お客さまに届けたい想いに共感しているメンバーだからこそ、お客さまの心に響く広告づくりができるからです。

 

広告予算増を判断する際の2つの注意点

――貴社は事業立ち上げ当初から効率的に広告宣伝費にも投資をしてこられました。広告を積極的に行う際、注意すべき点があれば教えてください。

まず、LTV>CPAが成り立つ段階で広告に予算をかけることが大原則です。そのうえで、予算増加をする際に注意点が2つあります。

まず1つ目は、広告内容によってLTVが大きく変わることです。低CPAで獲得が出来る広告が見つかった場合、ついつい一気に予算を増やして拡大したくなります。しかし、広告からきたお客さまのLTVが低く、後から見たらLTV<CPAになってしまっていたということはありがちです。LTVは最初の2-3か月でおよそ傾向はつかめますので、しっかりとLTVの初速値も確認しながら予算を増やしていくことが大事です。

2つ目は、売上の拡大が早すぎると改善や組織づくりが間に合わなくなることです。

規模が大きくなり多くのお客さまが入ってくることで、ニーズは多様化し変化していきます。

会社はそうした変化に合わせて、商品やお客様とのコミュニケーションを常に改善していく必要があります。しかし一気に拡大した場合は、その変化への対応が間に合わずに、気づけばお客さまのニーズとのミスマッチが起こり、満足度やLTVの低下につながってしまうことがあります。

また、組織も売上に見合う状態が用意できなければ、品質の低下につながります。例えば、CSメンバーの人数不足だったり、新しいメンバーが多く知識や経験が不足する場合には、満足なお客様対応ができなくなってしまいます。事業をしていくうえで、いかにスピーディーに規模を拡大させていくかは重要なテーマですが、注意も必要なわけです。

ロングセラーとして愛されるブランドを育てるためには、商品やサービスの改善と、組織力の向上が必要になりますので、スピードと質のバランスは常に考える必要があります。実際、2~3年で3~40億円を売り上げたものの、その2年後には10億円規模に戻っているというケースも見られます。

弊社も常にスピードは意識してきましたので、その中で先行投資として広告予算を増やし、資金調達においては銀行融資ではない第3の選択肢も活用してきました。

しかし、実は弊社の場合、昨対で3倍以上の成長をした年はなく、常に2倍程度ずつでコンスタントに売上を積み上げてきました。長期的に愛される強いブランドを目指し、常に成長のスピードと質のバランスを意識しています。

――今後の展望についてお聞かせください。

グローバル展開、ペットライフのプラットフォームづくりという2つの軸で事業を推し進めていきます。今年は実際にいろいろと動き始めていく予定です。

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