卸売メインだった販売経路が「BtoC」に拡大。EC用の商品開発で、季節性の高いビジネスからの脱却

2024.07.29

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群馬県高崎市で張り子製品の企画・製作を行う株式会社一千乃。BtoB向けの卸売事業がメインでしたが、ECショップ「ハリコオンライン」開設後、BtoCにも販路を拡大しました。たった一人でEC運営を担当し、さまざまな施策によって約3年間で売上5倍を達成した竹内 和弥さんに、試行錯誤から生まれたユニークなEC運営術を伺いました。

 

目次

プロフィール
ECサイト「ハリコオンライン」で販路拡大
季節に依存した商品販売からの脱却
Web広告の配信タイミングにこだわり、顧客層を拡大
「申し訳ありませんでした」から始まるコミュニケーション
「BtoB」も意識したECサイト運営で、さらなる販路拡大を実現

 

プロフィール

竹内 和弥 / 株式会社一千乃 張り子クリエイター / ハリコオンラインEC担当

犬張り子や招き猫など、張り子製品の企画・製作を行う株式会社一千乃でEC運営を担当し、BtoBが主だった民芸品の販売をBtoCに拡大した。

 

ECサイト「ハリコオンライン」で販路拡大

ーー「株式会社 一千乃」についてご紹介ください。

民芸品の犬張り子や招き猫など、手作りの張り子製品の企画・製作を行っています。寺社院向けの卸売が中心で、お正月と5月の端午の節句が、販売のピークシーズンです。

ーーECサイト「ハリコオンライン」を立ち上げたのはなぜなのでしょうか?

販路拡大のためです。

これまでは、年2回のピークシーズンに合わせた販売準備をしており、その対応に精一杯で新しい販路拡大に注力できない課題がありました。自社院だけでなく、一般のお客さまへの販促体制を強化したいと考え、2014年にECサイト「ハリコオンライン」を立ち上げました。

サイト立ち上げ当初は運用がうまくいかない部分も多かったです。しかし、ここ数年はさまざまな試行錯誤の末、一般のお客さまへの販売が拡大しており、ECの売上は3年間で約5倍に伸びています。

 

季節に依存した商品販売からの脱却

ーーECサイト運営上の工夫を教えてください。

複数ありますが、そのなかでも特に効果が大きかった3つをご紹介します。

1つ目は、通年で需要のある商材の企画です。季節性の高い商品への依存から脱却する狙いがありました。民芸品とコラボレーションした商品や、シリーズものの商品を開発し、飽きのこない商品棚を目指しました。その結果、年間を通した商品販売が可能になり、お客さま数の増加につながったのです。

季節のイベントに依存しがちだった従来の商品は、稼働期間の山と谷の高低差が顕著でした。しかし、ECサイトは季節を問わず年間を通してオープンしているため、季節の影響を低減でき、一定の売上が期待できます。生産体制や販売体制も平準化されるため、運営的にも楽になりました。

 

Web広告の配信タイミングにこだわり、顧客層を拡大

2つ目は、新しい顧客層に向けたマーケティング施策の実行です。特に、Web広告の配信タイミングにはこだわりました。私たちのお客さまの7割が女性です。その方々が『いつ』広告を見ているのか、仮説を立てながら検証を進めました。

「余暇時間は、朝か夜か」「スマートフォンを見るのはどのようなシチュエーションか」など、具体的な行動を考えながら仮説を立てることで、ベストな配信タイミングとペースが分かりました。その結果、今まで売れなかった時期に売れるようになりましたね。

適切な配信タイミングはもちろん、「配信しすぎない」重要性も分かりました。広告の頻度が増え、商品を目にしていただく機会が増えると『もうこの商品は見た』と、わずらわしく感じる方が増えてしまいます。特に、民芸品は生活必需品ではないため、表示回数と購買意欲とは相関しないという傾向にあります。広告の配信頻度が上がりすぎると売上も頭打ちになってしまう傾向があるのです。

 

「申し訳ありませんでした」から始まるコミュニケーション

3つ目は、「人間らしい」メッセージづくりです。

弊社では自動集客支援ツールを導入しており、そのツールの機能の1つにAIによる広告文作成の補助機能がありました。しかし、自動生成したコピーはどこか機械的で平たい表現になりがちで、ブランドのイメージに合いませんでした。

試行錯誤するなか、お客さまからの思わぬ反響があったのは、「先日は在庫が切れてしまい、申し訳ありませんでした」から始まるメッセージでした。弊社の商品は手作りで生産数が限られるため、タイミングによっては欠品することもあります。普通ならばピンチですが、一つひとつ丁寧に手作りしているがゆえという理由を、あえてお客さまにお伝えしました。

初回のお客さまは、「どのような商品なのだろう」という興味から、「ハリコオンライン」の来訪、そして売上へとつながりました。

加えて、「いつ入荷するのか?」とお問い合わせをいただくこともありました。お問い合わせを起点に、メールやお電話で11のやりとりから、別商品のご案内をさせていただいたり、商品開発に結びつくアイデアをいただくことにもつながりましたね。

 

「BtoB」も意識したECサイト運営で、さらなる販路拡大を実現

ーーEC事業運営で、特に意識していることがあれば教えてください。

 ECサイトは、「BtoC」に限らず「BtoB」に対しても、自社の商品情報を発信できる場です。一度構築すれば人手をかけずに24時間365日発信を続け、今まで想定していなかったお客さまへの認知を広め、販路拡大につなげてくれます。

そこで弊社では、「BtoB」のお客さまを意識して、従来行っている国内外のさまざまな展示会への出展のほかに、積極的なWeb会議やクラウドシステムの導入、LINEでの卸システム構築といったDX化の推進など工夫を行っています。その結果、企業OEM製作をはじめ新たな「BtoB」のお客さまとつながる場となりました。

ーー最後に、今後の展望について教えてください。

引き続き試行錯誤を続け、売上拡大を図っていければと考えています。

また、社会貢献の一環として「Smile Partnership」という企画を立ち上げ障がい者支援も行なっています。以前よりさまざまな施設に一部の内職作業を委託していますが、よりやりがいや楽しさを感じていただけるようにクリエイティブを伝播しながら支援を行う制度をつくり、すべての方が楽しく働いていける社会を目指しています。

 

<本記事は、取材時点の情報です>

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