国庫を財源とする融資制度を解説!日本政策金融公庫とは
国庫を財源とした融資は、日本政策金融公庫より提供されています。自社の状況や事業内容によって申請できる融資の種類は異なるため、まずはどのような制度があり、どのような企業が対象となるのかをおさえておくことが大切です。
この記事では、2024年現在実施されている日本政策金融公庫の融資制度について、具体的な融資の種類や活用のメリット、注意点を紹介します。自社に適した資金調達方法を検討する際にお役立てください。
日本政策金融公庫の融資制度内容や条件は変更されることがあるため、実際に活用する際は、最新情報を確認するようお気をつけください。
目次
国庫による融資は日本政策金融公庫が行っている
【2024年】一般事業向けの融資
■新事業活動促進資金
■企業活力強化貸付
■企業再建資金
■挑戦支援資本強化特別貸付
【2024年】美容業など、生活に関わる事業向けの融資
■生活衛生貸付
■振興事業貸付
新創業融資制度の廃止に伴い、2024年4月からは「新規開業資金」が拡充
■新創業融資制度が廃止された背景
■スタートアップ向け融資制度「新規開業資金」とは
日本政策金融公庫で融資を受けるメリット
■金利の低さ
■担保・保証人なしでも融資を受けられる
■経営のサポートを受けられる
日本政策金融公庫で融資を受ける基本の流れ
日本政策金融公庫で融資を受ける際の注意点
■満額の融資を受けられるとは限らない
■融資制度は変更される可能性がある
国庫による融資以外の資金調達方法
■株式の発行
■クラウドファンディングの活用
■BNPLの活用
日本政策金融公庫の融資制度を適切に活用していこう
国庫による融資は日本政策金融公庫が行っている
国庫による融資とは、国が100%出資する政策金融機関である日本政策金融公庫が行う融資制度を指します。
国の政策に基づいて金融サービスを提供し、一般の金融機関がカバーしきれない部分を補完する役割を担っています。例えば、ほかの金融機関と比べて低利での長期融資が可能であり、また、金融市場の変動に左右されにくい安定した資金調達を企業に提供することが可能です。
個人事業主や中小企業への融資を通じて、セーフティネット機能の発揮、経済成長と地域活性化へ貢献することを目的としています。
【2024年】一般事業向けの融資
一般事業向け(飲食店、喫茶店、理・美容業、クリーニング業、旅館業など、生活衛生関係を除く事業)の融資には、以下のものがあります。それぞれの融資限度額や返済期間、融資の条件について紹介していきます。
■新事業活動促進資金
新事業活動促進資金とは、経営革新計画の承認を受けた事業者などを対象とし、最大7,200万円の融資を受けられる制度のことです。経営革新計画は、既存の事業内容と異なる取り組みであるか、経営目標の実現が現実的であるかどうかなどが評価基準とされています。
資金の用途に応じて、設備資金の場合は最長20年、運転資金では最長7年の返済期間が設けられています。
新事業活動促進資金は、革新的な事業計画を支援する融資制度です。この融資により、事業者は新規事業の立ち上げや拡大に必要な資金を得ることが可能となり、経済全体の活性化にも寄与することが期待されます。
■企業活力強化貸付
企業活力強化貸付は、企業の成長と発展を支援する融資制度です。融資限度額は7,200万円で、うち4,800万円は運転資金となります。
対象となる融資は次の5つです。
- 企業活力強化資金
- 観光産業等生産性向上資金
- 事業継承・集約・活性化支援資金
- ソーシャルビジネス支援資金
- 海外展開・事業再編資金
いずれも設備資金の場合は最長20年、運転資金の場合は最長7年の返済期間が設定されています。
例えば、観光産業など生産性向上資金を活用することで、観光業者は新たな設備投資やサービスの改善を行い、競争力を高めることができます。同様に、事業継承・集約・活性化支援資金は、後継者不足に悩む中小企業にとって、円滑に事業継承を行うための資金を得る手段となるでしょう。
このように、企業活力強化貸付は多岐に渡る支援を通じて、企業の持続的な成長をサポートする融資制度といえます。
■企業再建資金
企業再建資金は、経営再建を目指す企業向けの設備投資融資です。最大7,200万円の融資を受けることが可能で、設備資金の返済期間は最長20年、運転資金は最長7年です。
例えば、老朽化した工場設備を最新のものにすることで、生産効率を向上させ企業の競争力を取り戻すといった設備投資に活用できます。
経営難に直面した企業が再び成長軌道に乗るために活用できる手段の1つといえるでしょう。
■挑戦支援資本強化特別貸付
挑戦支援資本強化特別貸付は、スタートアップ企業や新事業の展開、海外展開、事業再生などを目指す企業の財務体質や、ベンチャーキャピタル・民間金融機関などからの資金調達の円滑化を支援する融資制度です。資本性ローンとも呼ばれます。
融資限度額は7,200万円で、設備投資や運転資金として活用できます。利率は返済期間だけでなく、企業の直近の業績によっても変動します。赤字フェーズなど業績が低調なときは低い利率が適用されるため、その分、事業拡大に向けた投資に注力することができるようになります。
この点、新たな市場に進出するスタートアップ企業がこの融資を活用することで、必要な設備を整え、運転資金を確保し、迅速に事業を展開することができます。なかでも、成長期にあるスタートアップ企業にとって活用しやすい融資といえるでしょう。
【2024年】美容業など、生活に関わる事業向けの融資
飲食店営業や理容業、美容業、旅館業、クリーニング業など、生活に関わる事業向けの融資制度を紹介します。
■生活衛生貸付
生活衛生貸付は特定の業種に対して提供される融資制度です。業種によって融資限度額が異なり、例として、飲食店営業では最大7,200万円、旅館業では最大4億8,000万円の融資が可能となります。返済期間は基本的に13年以内、担保や保証人の要件は個別に相談が必要です。
この制度を活用することで、旅館業者であれば大規模な改修や設備の改善に必要な資金を確保し、サービスの向上を図ることができます。
■振興事業貸付
振興事業貸付は、振興計画の認定を受けた生活衛生同業組合の組合員を対象とする融資制度です。最大で7億2,000万円の融資を受けることが可能で、返済期間は設備資金が最長20年、運転資金は最長7年となっています。
例えば、飲食業の同業組合が新たな店舗の開設や大規模な改装を計画している場合、この融資を活用することで必要な資金を確保し、事業の拡大や改善を図ることができます。
振興事業貸付は、組合員が持続的な成長と競争力の強化を実現するための支援策の1つといえるでしょう。適切に活用することで、業界全体の活性化にも貢献することが期待されています。
新創業融資制度の廃止に伴い、2024年4月からは「新規開業資金」が拡充
新創業融資制度は、2024年3月に廃止された一般事業向けの融資です。本章では廃止された背景や、刷新された新規開業資金の内容について解説していきます。
■新創業融資制度が廃止された背景
新創業融資制度では、融資を受ける際に創業資金総額の1/10以上の自己資金が必要でした。また、融資の限度額は3,000万円と、一般事業向けの融資限度額(7,200万円)と比べ少額でした。
このような背景から、事業者への支援を拡充・強化する目的で、新創業融資制度が廃止され、2024年4月から新規開業資金という新しい融資制度が始まりました。
■スタートアップ向け融資制度「新規開業資金」とは
新規開業資金は、スタートアップ企業や新規事業を始める方を対象とした融資制度です。新創業融資制度の頃と異なり、融資の限度額は7,200万円、利率は一律0.65%引き下げられています。融資で得た資金は、事業の開始前後に必要となる設備資金や運転資金に活用できます。
返済期間は、設備資金で最長20年(うち据置期間5年以内)、運転資金で最長10年(うち据置期間5年以内)です。担保や保証人は必要としません。
事業者の年齢や性別、創業の再チャレンジなどに応じて金利や返済期間が調整される柔軟な制度のため、さまざまな企業にとって活用を検討できる制度となっています。
日本政策金融公庫で融資を受けるメリット
日本政策金融公庫の融資はさまざまな事業フェーズで活用できる制度ですが、特にシード期は積極的に検討したい選択肢といえます。創業して間もないスタートアップ企業にとって、民間金融機関からの融資よりも、公庫の方が融資を受けられる可能性が高いためです。
アーリー期やミドル期などでも活用できる制度はあります。ただし、事業拡大・成長を加速させたいフェーズでは、審査に時間がかかる公庫の融資よりも、ベンチャーキャピタルやベンチャーデットなどが選択肢となってくる可能性が高いでしょう。
自社の状況に合わせて、適切な資金調達方法を選択していくことが必要です。本章では公庫の融資制度を活用するメリットを解説します。
■金利の低さ
日本政策金融公庫の融資を活用するメリットの1つは、金利の低さにあります。2024年7月1日時点での基準利率は、1.35〜3.80%と設定されています。民間の金融機関では金利が5%を超えることもあるため、低金利で融資を受けられる公庫の制度は魅力的だといえるでしょう。
新規事業を開始する際、日本政策金融公庫からの融資を活用することで、資金調達コストをおさえられ、事業の初期段階での経済的負担を軽減できます。事業者はより安定したスタートを切ることができ、必要な投資に注力していくことが可能となります。
このように、日本政策金融公庫の低金利融資は、事業者にとって返済の負担を減らし、事業の安定性を高めるのによい選択肢といえます。
■担保・保証人なしでも融資を受けられる
日本政策金融公庫の融資制度では、相談次第で無担保・保証人なしでも融資を受けられる場合があります。
新規事業を立ち上げる個人事業主であれば、資金調達の際に担保や保証人を用意することが難しい場合でも、公庫の融資制度なら活用できる可能性が高まります。ほかの金融機関からの資金調達に比べて、事業開始時の資金確保が容易になり、スムーズに事業をスタートさせることが可能となるでしょう。
スタートアップ企業や個人にとって、事業を始める際の資金調達のハードルが大きく下がることは利点の1つといえます。
■経営のサポートを受けられる
日本政策金融公庫の融資では、資金提供だけでなく経営面のサポートも受けられます。経営に関するアドバイスが受けられたり、企業診断やSWOT分析などの支援ツールを無料で提供してもらえたりします。
例えば、新規事業を立ち上げた企業が経営戦略を見直したい場合、公庫の専門家からアドバイスを受けることで、経営改善や成長戦略を立てやすくなります。また、販路拡大のためのマッチングサービスも提供されているため、事業成長のためのパートナー探しがスムーズに行えます。
このように日本政策金融公庫は、融資を通じて企業の成長を総合的にサポートしてくれます。資金だけでなく、経営支援の面でも強力なパートナーとなります。
日本政策金融公庫で融資を受ける基本の流れ
日本政策金融公庫で融資を受ける際の、基本的な流れは次のとおりです。
1.相談:融資についての相談を行います。オンライン相談も可能です。
2.申請:必要な書類(決算書や見積書など)を準備して申請します。
3.面談:申請後、面談を行います。
4.融資:融資が承認されると資金が提供されます。
5.返済:融資を受けた後は、契約に基づいて返済を行います。
相談は誰でもオンラインで行うことが可能です。面談はオンライン面談や電話面談などが可能なケースもありますが、原則は担当者との対面での面談となります。
申請から融資を受けられるまで、おおよそ一カ月程度かかることが想定されます。申請の時期や書類の状態など、状況により期間もは変わるため、余裕を持ったスケジュールで動くことをおすすめします。
日本政策金融公庫で融資を受ける際の注意点
金利の低さや無担保などで融資を受けやすい日本政策金融公庫の融資ですが、いくつか注意しておきたい点もあります。
■満額の融資を受けられるとは限らない
日本政策金融公庫の融資は、条件を満たせば必ず希望額を満額融資してもらえるというわけではありません。資金が不足する場合は、あわせて民間の金融機関からの融資も検討する必要が出てくるでしょう。
例えば、事業拡大のために5,000万円の融資を希望しても、審査の結果、3,000万円しか融資されないことも考えられます。
審査基準は明確に公表されているわけではないため、まずは日本政策金融公庫に相談し、自社の事業計画や必要な資金について説明してみましょう。申請にあたって適切なアドバイスがもらえるかもしれません。また、このような状況に備え、ほかの資金調達方法も視野に入れておくことが大切です。
■融資制度は変更される可能性がある
日本政策金融公庫の融資制度は、制度の名前が同じでも、年度ごとに内容が変更されることがあります。これまでと同じ条件で融資が受けられるとは限らないため、最新の情報を確認する必要があります。
例えば、新型コロナウイルスのような感染症の拡大や地震などの災害が発生すると、新しい融資制度が設けられることがあります。このような場合、既存融資制度の条件が変更されることがあるため、常に最新情報をチェックする必要があります。
国庫による融資以外の資金調達方法
日本政策金融公庫の融資は、「融資」のため返済の際に少なからず金利の負担が必要です。本章では原則返済の負担がかからない資金調達方法の例として、基本的に返済義務がない調達手段のエクイティファイナンスとクラウドファンディング、得た資金を効率よく活用する手段としてBNPL(※1)を紹介します。
※1 後払い式の決済手段「Buy Now, Pay Later」の略。信用調査が簡易なため、欧米・若年層を中心に市場の広がりを見せている。今後、さらなる市場規模の拡大が予測されており、BtoB向けサービスの広がりも注目を集めている。
■株式の発行
株式発行による資金調達では、融資と異なり、得た資金について返済の義務がありません。株式を発行することで投資家から資金を調達し、事業の拡大や新規プロジェクトに投資することができます。
例えば、個人事業主が株式会社に組織変更し、株式を発行することで、金融機関からの信用度が高まり、将来的に倒産した場合も負債の責任を有限にすることができます。これにより、リスクを分散しながら事業資金を確保できます。
株式発行は負債を抱えることがなく、また企業としての信用度の向上や負債のリスク軽減というメリットがあります。
■クラウドファンディングの活用
クラウドファンディングは、不特定多数の人から資金を調達できる方法です。寄付型のクラウドファンディングを活用すれば、リターンの義務がないため、集まった資金をそのまま事業に充てられます。
また、新製品の開発費用をクラウドファンディングで集めることで、資金を確保しながら事前に市場の反応を確認することができます。クラウドファンディングの手数料はサービスによってことなるため、事前に確認しておきましょう。
クラウドファンディングは、資金調達の柔軟性が高く、事業の初期段階で活用しやすい方法といえます。
■BNPLの活用
BNPL(Buy Now, Pay Later)は、代金を後日一括もしくは分割して支払う方法です。支払いの完済を先延ばしにすることで、一時的な支出をおさえ、収入を得るまでの時間的猶予を確保できます。
弊社では、広告費の4分割・後払いサービス「AD YELL(アドエール)」(※2)や仕入費の4分割・後払いサービス「STOCK YELL(ストックエール)」(※3)を提供しています。売上が立ってから、または売上と並行して支払いができるため、キャッシュフローの負担軽減が期待できます。
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日本政策金融公庫の融資制度を適切に活用していこう
日本政策金融公庫では、国庫を財源としてさまざまな融資制度を提供しています。スタートアップ企業が活用できる制度も多いため、特にシード期など資金調達方法の選択肢が限られている状況では、有用な選択肢となるでしょう。
公庫の融資だけで必要な資金を全てまかなえるとは限らないため、株式発行やクラウドファンディングなど、返済の負担がない資金調達方法の活用も検討する必要があります。
弊社では、「AD YELL」や「STOCK YELL」を通じてファイナンス面から事業をサポートさせていただいています。最新情報をもとに適切な資金調達方法を選び、理想の未来を実現していきましょう。
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