資本政策とは?資本政策の重要性や立案の方法をわかりやすく解説

2024.10.18

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資本政策とは?資本政策の重要性や立案の方法をわかりやすく解説

資本政策は、将来を見据えた計画的な資金調達を行うために必要なものです。事業の資金不足を防ぐため、起業したばかりのスタートアップ企業も作成しておくことが推奨されます。資本政策を正しく把握し実行することで、企業の成長と安定した経営の実現につながるでしょう。

本記事では資本政策の基本や立案の方法などを解説します。資本政策における具体的な資金調達方法も解説します。ぜひ最後までご覧ください。

 

 

目次

資本政策とは
■資本政策の定義
■資本政策の重要性
資本政策を立案する4つの目的
■事業にかかる資金調達
■従業員・役員への福利厚生
■発行する株式の管理
■IPO・M&Aへの備え
資本政策の立案の流れ
■ステップ1.事業計画書の作成
■ステップ2.投資計画の立案
■ステップ3.キャッシュフローの整理
■ステップ4.資本政策の作成
資本政策における5つの資金調達方法
■個人や法人への株式移動
■既存株主への割り当ての増資
■新株の第三者への売買・贈与
■新株予約権の発行
■権利を限定した種類株式の活用
後悔しない資本政策を立案するポイント
■将来の事業継承も踏まえた株式数・比率を考える
■ストックオプションの取扱いに注意する
■資本政策表のフォーマットを参考にする
■専門家のサポートを受ける
資本政策は具体的に作成しよう

 

資本政策とは

資本政策は、事業計画を達成するために必要な資金調達と株主構成計画を策定すること

資本政策とは、資金の不安を払拭して事業を続けるために必要なものです。まずは資本政策の定義や作成の重要性について解説していきます。

 

■資本政策の定義

資本政策とは、事業計画を達成するために必要な資金調達と株主構成計画を策定することです。企業がどのように自己資本や他人資本により資金調達し、その資本構造を管理するかどうかに関する方針を決定します。

具体的には、いつ、誰から、どのような方法で、どの程度の資金を調達するのかを計画します。特に、資金調達の方法として株式の発行を想定し、将来的な上場も見据えて検討されることが多い傾向にあります。

適切な資本政策は、企業の成長と安定的な経営の実現に影響します。適切な資本政策がないと、資金不足や過剰な負債により企業の健全な運営が妨げられる可能性も出てきてしまうでしょう。

このように、資本政策は企業の成長戦略の中核であり、事業の成功に欠かせないものだといえます。

 

■資本政策の重要性

資本政策は企業のリスク管理、投資家へのリターン、財務の安定性、そして成長能力に直接的な影響を与えます。企業が戦略的目標を達成するためには、適切な資本政策を設計し、適時に適応させることが必要とされています。

例えば、株式を無計画に発行すると持株比率が低下し、株主総会での意思決定が難しくなる可能性があります。譲渡された株式は、相手の同意なしには取り戻せないため、慎重な計画が求められるでしょう。また、必要なときに円滑に資本を確保できなければ、事業に支障が出るリスクもあります。

将来の事業成長や事業拡大を成功させるためには、資本政策をリスクとリターンのバランスを考慮したうえで、戦略的視点から資本政策を作成することが重要といえます。

 

資本政策を立案する4つの目的

資本政策の主な目的は資金調達、福利厚生、株式の管理、IPOやM&Aへの備え

資本政策を立案する主な4つの目的について解説していきます。

 

■事業にかかる資金調達

資本政策の主な目的の1つは、企業の成長戦略を実現するための資金調達を、適切に行えるようにすることです。事業を進めるためには、原資が必要であり、いかに資金を調達するかを計画することは、特に重要なポイントといえます。

例えば、株式を発行することで投資家から資金を集める方法があります。株式発行による資金調達は金融機関からの融資と異なり、負債を抱えずに資金を確保できる点が魅力です。さらに、新株の発行による増資を図ることも可能です。

適切に資金調達を達成できれば、事業の機会を逃さず、持続的な成長を実現できるでしょう。

 

■従業員・役員への福利厚生

資本政策の一環として、従業員や役員に株式を一定額で取得できる権利を与えることがあります。ストックオプションなどの形で提供され、株価が上がればその差額で従業員や役員の金融資産が増加します。従業員や役員にとって大きなインセンティブとなり、モチベーションの向上が期待できるでしょう。

従業員や役員への株式提供は、個々のモチベーションを高め、企業全体のパフォーマンス向上につながる効果的な資本政策といえます。

 

■発行する株式の管理

発行する株式を適切に管理することは、企業経営において重要度が高いといえます。無計画に株式を発行し、持株比率が希薄化してしまうと、株主の発言権が強まることになるためです。もし自社の方針に反対する株主が増えてしまうと、経営の柔軟性が損なわれ、事業運営に支障が出る可能性があります。短期的な利益を優先すると、長期的な経営が難しくなることもあることを念頭においておきましょう。

一方で、株式は資金調達方法として有用な手段です。株式の発行を計画的に行い株主の集中化を図ることで、事業継承も円滑に行えるでしょう。適切に管理することで株式の希薄化を防ぎ、安定した経営を実現できます。

 

■IPO・M&Aへの備え

IPO(新規株式公開)を行うと株主は一般投資家にまで拡大し、持株比率に影響が出ます。M&A(企業の合併・買収)で事業の拡大やノウハウの取得を図るためには、多額の資金が必要です。資金不足がM&Aなどの妨げにならないよう、十分な資金を調達する必要がありますが、その場合も極端に持株比率が下がらないようにする必要があります。

IPOやM&Aに向けた資本政策は、持分比率の管理と十分な資金確保が大切なポイントです。将来を見据えた適切な資本政策が、M&Aや事業の成功の鍵といえるでしょう。

 

資本政策の立案の流れ

資本政策の主な目的は資金調達、福利厚生、株式の管理、IPOやM&Aへの備え

実際に資本政策はどのような流れで作ればよいのでしょうか。基本となる4ステップをみていきましょう。

 

■ステップ1.事業計画書の作成

まずは、事業計画書を作成します。事業計画書では、事業を運営していくうえでの具体的な行動計画を示し、どの程度の期間でどれだけの売上を達成するのかを現実的に検討します。

提示する数字は競合分析の結果を踏まえるなど、根拠のあるものにすることがポイントです。例えば、新製品の市場投入を計画する際、同業他社の売上データや市場動向を参考にすることで、より現実的な目標設定が可能になります。

事業計画書の作成については、こちらの記事で詳しく解説しています。

【事業フェーズ別】スタートアップの事業計画の作成ポイント|事業計画書で重要な要素とは

 

■ステップ2.投資計画の立案

次に作成した事業計画に基づき、いつ、どの程度の資金が必要かを算出します。具体的な資金調達方法も検討し、上場までを見据えた長期的な投資計画を立てましょう。

例えば、新規プロジェクト開始時に多額の資金が必要となるならば、エクイティファイナンスやデットファイナンスを検討することになります。上場を目指す企業ならば、株式公開時の資金需要も考慮しておきましょう。

関連記事:
デットファイナンスのメリット・デメリットとは?資金調達の成功ポイントも紹介

 

■ステップ3.キャッシュフローの整理

事業計画書や投資計画をもとに、将来のキャッシュフローを検討します。計画通りに経営が進んだ場合、どれだけのフリーキャッシュが残るかを予測します。

具体的には、営業活動、投資活動、財務活動の3つの観点からキャッシュフローを整理します。営業活動では、売上から経費を差し引いた純利益を算出し、投資活動では、設備投資や新規事業への投資額を考慮します。財務活動では、借入金の返済や株式発行による資金調達を含めて予測を行いましょう。

 

■ステップ4.資本政策の作成

最後に、企業の目標を実現するために必要となる、資本政策を作成します。事業計画や投資計画が具体的であるほど、作成する資本政策の精度も上がります。

例えば、企業が東証プライム市場、スタンダード市場、グロース市場に上場を目指す場合、それぞれの上場基準をクリアする必要があります。必要な資金や株主構成など、上場の条件を踏まえたうえで、達成できる筋道を立てていきましょう。

 

資本政策における5つの資金調達方法

資金調達方法・形態 特徴
株式移動 ・特定株主との関係強化
・株主の構成変更
持株割当増資 ・株主格構成や決議決定権の割合変更なし
・増資分だけ資金確保
第三者割当増資 ・割当は新規の取引先やビジネスパートナー
・既存株主の持株比率は低下
新株予約権の発行 ・従業員のインセンティブ
・権利の行使まで株式は増加しない
種類株式の発行 ・9つの権利を組み合わせて発行
・投資家などのニーズを満たしやすい

資本政策では、具体的にどのような資金調達方法が選択できるのでしょうか。5つの方法について、それぞれ特徴を解説していきます。

 

■個人や法人への株式移動

資本政策の一環として、個人や法人への株式移動という施策があります。売買や贈与を行うことで、株主構成の変更や特定の株主との関係を強化することが可能です。例えば、特定の投資家に株式を売却することで、企業にとって戦略的に重要な株主を迎え入れることができます。

株式の移動は相場に見合った適正な価格で行うことが大切です。企業の価値が適切に評価されることで、健全な資金調達が行えるでしょう。

このように、株式移動は、株主構成の最適化を目指すことと資金調達の両方を実現する手段となります。

 

■既存株主への割り当ての増資

既存株主への割り当てによる増資は、持株の割合に応じて増資を行う施策です。株主構成や決議決定権の割合を変えずに、資金を確保できます。

例えば、ある企業が1億円の資金を必要とする場合、既存株主に対して持株比率に応じた新株を発行します。これにより、株主の権利を維持しながら必要な資金を調達できます。

既存株主への割り当て増資は、株主の構成や決議権を維持しつつ資金を確保する効果的な方法です。安定した資金調達の実現につながるでしょう。

 

■新株の第三者への売買・贈与

新株の第三者への売買や贈与は、第三者割当増資とも呼ばれています。新規の取引先やビジネスパートナーに、株式を売買または贈与する方法です。そのため、既存株主の持株比率は低下します。

例えば、新規ビジネスパートナーに株式を割り当てることで、企業はそのパートナーからの資金を得られ、さらに戦略的な協力関係を築けます。一方で、既存の株主は持株比率が低下するため、その点を考慮した計画が必要です。

 

■新株予約権の発行

新株予約権の発行は、従業員のインセンティブとして有効な方法の1つです。特定の人に付与することで、持株比率を上げることもできます。また、社債に新株予約権を付けると、行使されるまで株式は増えません。

特定の従業員に新株予約権を付与することで、その人のモチベーションやエンゲージメントの向上を期待できます。結果的に、企業の成長を促進することにも寄与するでしょう。さらに、新株予約権が行使されるまで株式は増えないため、既存株主の持株比率がすぐに希薄化することはありません。

 

■権利を限定した種類株式の活用

種類株式とは、権利内容を変更できる株式のことです。配当や決議権など、9つの権利を組み合わせて活用できます。

例えば、特定の投資家に配当優先株を発行すれば、その投資家の配当ニーズを満たせます。また、決議権を限定した株式を発行することで、柔軟な経営権を保持しながら資金調達することが可能となります。

種類株式の活用は投資家の多様なニーズを満たし、柔軟な資本政策を実現するために効果的といえます。

 

後悔しない資本政策を立案するポイント

資本制作を作成する際は、将来の事業承継を見据える、ストックオプションは慎重に行うなどに注意

資本政策に不備があると、将来の経営に影響が出る可能性があります。後悔のない資本政策にするためにおさえておきたいポイントを解説します。

 

■将来の事業継承も踏まえた株式数・比率を考える

将来の事業継承を見据えた資本政策を作成する際は、株式数と持株比率のバランスを十分に考慮しておきましょう。例えば、経営側で50%を超える持株比率を維持していると、株主総会で単独可決が可能となり、事業継承がスムーズに進みます。

また、経営においても意思決定をスムーズに行えるため、事業の柔軟性や安定性が保たれます。

 

■ストックオプションの取扱いに注意する

ストックオプションは、従業員や経営者が自社株を事前に定めた価格で購入できる権利です。前述したとおり、効果的な資本政策ですが、発行過多(発行済み株式数の10%以上)になると、追加で発行できなくなるため、取扱いには注意が必要です。

ストックオプションを多く発行しすぎると、今後の資金調達に制約が生じてしまいます。また、ストックオプションを付与された従業員がIPOのタイミングで権利を行使し、その後退職するリスクもあります。これは、企業にとって大きな損失となりかねません。

ストックオプションの発行は慎重に行い、企業の長期的な成長と従業員のモチベーション維持の両立をはかるよう取り組んでいきましょう。

 

■資本政策表のフォーマットを参考にする

資本政策を策定する際は、インターネット上に公開されているフォーマットを活用するのもおすすめです。例えば、日本政策金融公庫では、事業計画書や資金繰り表の雛形をダウンロードできます。記載例もあるため、初めての作成でもスムーズに進められるでしょう。

ほかにもスタートアップ企業が活用できるフォーマットがあるため、事業計画の具体性を高める際に役立ちます。

 

■専門家のサポートを受ける

資本政策の作成には、事業計画書や投資計画など多くの検討事項があります。初めて作成する際には、どのような株式の発行が適しているか、比率などを判断するのは難しいかもしれません。そのようなときは専門家に相談しアドバイスをもらうのもよい手です。

例えば、中小企業基盤整備機構では無料の相談窓口を設置しており、専門家のアドバイスを受けながら資本政策を策定できます。専門家のサポートを受けることで資本政策の精度を高め、効率的な資金調達を実現できるでしょう。

 

資本政策は具体的に作成しよう

資本政策は具体的に作成しよう

企業が持続的に成長していくには、資本政策が重要な鍵となります。自社の将来を明確にイメージし、資金不足が起きないように具体的に計画を立てていきましょう。

初めての資本政策の作成で不安がある場合は、専門家に相談するのも1つの手段です。

弊社では、広告費の4分割・後払いサービス「AD YELL(アドエール)」(※1)を提供しています。企業の成長をファイナンス面からサポートさせていただきますので、事業成長に向けた投資や、キャッシュフローへの懸念をお持ちの際は、ぜひ弊社にご相談ください。

 

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