キャッシュは、スタートアップのクイックな成長の肝。「NP掛け払い」小島氏×「AD YELL」髙瀬が語るキャッシュフロー改善戦略

2023.08.07

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キャッシュは、スタートアップのクイックな成長の肝。「NP掛け払い」小島氏×「AD YELL」髙瀬が語るキャッシュフロー改善戦略

2023年7月3日より、戦略的パートナーシップを構築した株式会社バンカブルと株式会社ネットプロテクションズ。ともにBtoB向け後払い(BNPL=Buy Now, Pay Later)サービスとして、バンカブルでは広告費の4分割・後払いサービス「AD YELL(アドエール)」を、ネットプロテクションズでは与信や請求書作成、回収など請求に関わるすべての業務とリスクを保証するBtoB     後払い決済サービス「NP掛け払い」を提供しています。両サービスを使うことで、利用企業は決済・請求業務のデジタル化や、未回収リスクを低減することで、コア業務へ集中できる環境が整い、キャッシュフローの改善による事業成長への積極的な投資が見込めます。連携の背景や今後の展望について、株式会社ネットプロテクションズで「NP掛け払い」の統括責任者を務める小島真一さんと、株式会社バンカブルの代表取締役社長の髙瀬大輔が対談した様子をお届けします。

「以前からシナジーがあると考えていた」二社連携の背景

――バンカブルとネットプロテクションズ、二社が連携に至った経緯についてお聞かせください。

髙瀬:今回の連携に至る前から、ネットプロテクションズや提供サービスである「NP掛け払い」について認識していました。ただ、当時はまだ連携をお願いできるほど私たちのサービスが成長しきれておらず、いずれはと思っていたところ、良いタイミングで小島さんからご連絡をいただきました。

小島:そうだったんですね。

髙瀬:ええ。同じBtoBサービスですし、すごくシナジーがあると感じていました。「NP掛け払い」でキャッシュインを早め、弊社サービス「AD YELL」で広告費に関するキャッシュアウトを分散する。結果的にお客様のキャッシュフローをイン・アウト双方から同時にサポートすることで、お客さまの事業成長に繋げられるのではないかと考えていました。

小島:まさに私もそうした想いで連絡を取らせていただきました。弊社サービス「NP掛け払い」は、先ほど髙瀬さんから「キャッシュインを早める」とお話があったように、売り手と買い手の間に入って請求業務を請け負い、未回収リスクを保証するサービスです。「自由になれる、決済」がコンセプトでして、お客様が決済業務から解放されることでコア業務に集中できる状態を作り、 ビジネスへの挑戦を支援するべくサービス提供を行っています。

ただ、「NP掛け払い」だけで事業成長のハードルがすべて解決されるのかというと、答えはノーだと思っているんですね。特に成長企業の場合、やはり資金がないとスピード感を持って理想の状態までたどり着けない。資金がすべてではありませんが、やはり資金力が成長角度を上げるのは事実かなと。ですから、弊社では「早期立て替え払い」という請求書に記載の支払期日前に売上金を振り込むオプションも用意しています。

しかし、成長ドライバーの主要施策である広告投資の場合、前払いで支払うケースも多く、売上が立つ前に資金が出ていく事象が発生してしまっているんですよね。そのため、売上の入金を待つまでの期間はアクセルを踏めなくなってしまう。この課題を何とかできないのかと考えていたときにバンカブルの「AD YELL」を知りました。一緒に取り組めたら成長企業の事業環境を一緒により良いものに作っていけるんじゃないかと直感的に思った次第です。

実際にお話してみると、やはり両社が目指している世界や想いにかなり重なるところが多いとわかりました。その結果が、今回の連携に至ります。

――今回の連携により、ネットプロテクションズの顧客を「AD YELL」に、バンカブルの顧客を「NP掛け払い」に案内できるようになります。双方のサービス利用企業から、「NP掛け払い」「AD YELL」で解決できる課題について相談が寄せられている状況だったのでしょうか。

髙瀬:明確に寄せられていたわけではありませんが、私たちのメイン顧客である、投資フェーズに入っている中小規模の企業様にニーズがあるということはわかっていました。私たちは財務指標にアクセスできることもあって、顧客企業様の経営状況や事業拡大に必要な施策の打ちどころが把握できます。そのため、ファイナンスにまつわる課題の深さを理解していました。

小島:弊社はサービスの性質上、広告投資まで踏み込んで顧客とお話をする機会があまりなかったですし、今まではお話しても弊社が解決できる状況になかったので、積極的にヒアリングをして課題を明確化していたわけではありませんでした。

私たちの事業成長は、「NP掛け払い」を利用して請求を出していただける金額が増えれば増えるほど、私たちの売上も上がっていくという課金システムの上に成り立っています。そのため、顧客が広告投資をして事業成長する部分に対して、もっと支援できないかという議論が社内でなされていました。

ただ、直接的にお聞きはしていないなかでも、早期立て替えニーズは結構多く、その理由として成長のための投資に早く資金を回したいニーズがあるということは感じていました。

キャッシュフロー改善による効果とは

――「NP掛け払い」や「AD YELL」を利用することでキャッシュフローが改善された事例について、その結果もたらされた効果や価値も含めてご紹介ください。

小島:「NP掛け払い」は古い商習慣が残る産業に対し、テクノロジーのイノベーションを起こそうとする企業にかなり価値を感じていただけるケースが多いと感じています。古い産業は習慣的に支払いが3ヵ月後や半年後で、十分な資金がないとキャッシュがもたないというケースがざらにあるんです。

当然、企業はデッドやエクイティなど、あらゆる資金調達手段を駆使して事業運営をしていくのですが、調達までにはかなり時間がかかります。私たちが提供している早期立て替えオプションは、申し込み後すぐに反映されるので、クイックな事業推進ができる。そのスピード感をご評価いただけていると感じます。資金調達において、待っている時間はデッドタイムだと思うんですよね。アクセルを踏めれば行けるのに、ガソリンがなくて踏めないという状態ですので、スピード感は重要だと思っています。

髙瀬:「AD YELL」はお客様によって使い方に幅があります。エクイティまでのファイナンス手段としてご利用いただいているケースもありますし、エリア拡大や新商品開発に注ぎ込むため、持っているキャッシュを効率的に投資したいというケースもあります。このうち、最近の事例では、エクイティでラウンドを重ねられている企業様のケースでは、調達の意味で「AD YELL」を利用されるのではなく、調達した原資にいかにレバレッジを掛けてサービスを届けていくのかということを考え、その一手段として「AD YELL」をお選びいただきました。

小島:広告費を後払いにできないことによる具体的な課題について、リアルな声があればお聞きしたいです。

髙瀬:シリーズAを超え、PMFをしてラウンドを重ね、シリーズBに向かおうかという狭間にいらっしゃった企業様からお聞きしたのは、「アクセルを踏めば伸びるとわかっているのに踏めない」という課題でした。調達した資金はありますが、人件費もかかればサービス開発にも投資を続けなければならない。資金を溶かしてしまうと次の調達までに時間がかかるため、「調達したのにアクセルが踏めない。デッドでどう繋ごうか」と。「AD YELLって借入じゃないんですね」とおっしゃったことが印象に残っています。「借入枠を削らなくていいんですね」と。「AD YELL」は4分割での支払いになるので、手元の資金で2倍踏めることになるんですよね。

小島:うーん、リアルですね。

髙瀬:ええ。あともう一つあります。期の最後のクオーターで数字を伸ばし、アップサイドをきちんと実現できれば、決算が昨年より良い財務状態になるため、期が明けたときにデッドファイナンスしやすくなる。意図的に期末の2ヵ月をぐっと踏んで締めて、決算が出たときに次の調達に投資しようということでご利用いただくというケースも、結構リアルなお話でした。

小島:なるほど。私たちはサービスを作って届ける側ですが、使われるお客様によって価値が違うので、提供し続けることで新たに見える価値の発見がありますね。

髙瀬:本当にその通りですね。借入枠を削らないことが喜ばれるとは立ち上げ当初は考えておらず、こちらからサービス価値として伝えられていませんでした。

その会社の「コア」に付加価値を付けて取り組むことが重要

――キャッシュフローを改善し、コア業務に集中できることが両社サービスを利用するメリットの一つです。では、スタートアップが注力したいコア業務とは何でしょうか。また、アウトソースすることが望ましい内容についてもお聞かせください。

髙瀬: AD YELLは、何かしらの業務をアウトソースして生産性が上がるというものではないですが、経営や事業を担う方の脳内シェアを占めるキャッシュフローへの不安や課題の解消に一役買う存在だと思っています。

また、コア業務についてですが、これはその会社の状態によるため「これに注力すべき」といったものではないというのが正直な想いですね。本質的には、やはり「サービスや商品を、よりお客様に喜ばれるために、いかに磨いていくか」だと思います。

まれに「広告投資をすれば売れる」という方がいらっしゃるのですが、あくまでもいいサービス・商品があったうえで、どれだけガソリンを注ぐかという話であり、広告投資は魔法の杖ではありませんとお伝えしています。

小島:髙瀬さんがおっしゃったように企業によって状況が異なるので、個人的な話になるのですが、付加価値が付きづらい業務は究極すべてアウトソースしていいと思っています。コストとの兼ね合いがあるので、取捨選択は必要になってくると思いますが。

自分たちが何をすべき集団なのかを考えると、多くの場合で「プロダクトを磨く」「届ける」が最もコアになると思うので、そこは自分たちで付加価値を付けてやっていく必要があるのかなと。

小島:アウトソースの例として、「NP掛け払い」を導入されている会社の事例を挙げます。導入時には経理が3人いて未払い率が高かったり請求ミスが多発していたりとトラブルを抱えていました。そこに「NP掛け払い」を導入し、今は何十倍と成長をしているのですが、経理の人数は以前から変わっていない。投資対効果でいうと、売上が何十倍になってもバックオフィスに割く人件費は変わらないという見方ができます

あといえるのは情緒的な部分ですね。成長企業に集まってくる人の多くはその企業のカルチャーやプロダクトの価値に共感し、自らもその創造に携わりたいという想いで     集まって     いると思っています。ですので、コア以外の業務のウエイトが重くなってくると、「自分は何をしにこの会社に入ったんだろう」とストレスがどんどん溜まっていくのではないかと思います     。このような状態に陥る社員が増えることで     、組織内で対立構造を生むことにもつながりかねない。アウトソースできるものは極力社内で担わず専門家に外注 することで、働く人の幸福度が上がり、人と会社が共に成長できる状態を作れるのではないかと思っています。

髙瀬:バックオフィスは減点報酬になりがちなセクションですから、発揮する価値が「コミュニケーション活性化」や「組織カルチャー構築」など定性的になりやすいですよね。分かりやすく、売上が10倍伸びて人数が変わらない=生産性10倍という生産性向上の話もありますね。。「AD YELL」は価値を定量化しやすいのかなという感想を抱きました。

目指す世界に向け、スクラムを組んで取り組んでいきたい

――今後の二社の展望、連携で目指す未来についてお聞かせください。

髙瀬:今回の二社連携も1つの成長ドライバーとして捉えており、本連携を機にさらに私たちも支援する企業様とともに成長していきたいと考えています。今後、弊社では、「〇〇YELL」として支援できるカテゴリーを一定広げていきたいと考えています。もう一点はさらに大きく捉えており、ミッションに掲げる「新たな金融のカタチ」の側面から、あらゆる成長を志す企業が挑戦できる社会をつくりたいと思っています。私たちは、広告費の分割・後払いサービスをやりたくて事業を立ち上げたわけではなく、ミッションを果たすうえでの一歩目として、弊社グループにアセットがある広告費からエントリーしたのが「AD YELL」なんですね。ですから、新たな金融のカタチを用いた、新たなベンチャーデット支援会社のプラットフォーマーになることを妄想をしています。今後も価値を提供し、私個人としては私たちの子ども世代が過ごしやすくなる世界に一歩でも近づけることができればいいなと思っています。

小島: 私たちも何としても必ず決済サービスをやりたかったわけではないんですね。あくまで価値提供を追求する手段の一つとして”決済”があると捉えています 。かといって、直近決済とは まったく違う業界のサービスを始めるのかというと、そうではありません。やはり決済を主軸としながら、ファイナンスやマーケティングといった周辺領域で戦略的に事業を生み出していきたいと思っています。また私たちの組織はフラットな構造で全員が業務に熱中できるようなティール型組織であり、それぞれが自律的に動きつつ、常に協力しあう環境であることを活かして、今後も誰もが安心かつスムーズに商取引ができる社会の実現を叶えるサービス創造を行っていきたいと考えております。

「NP掛け払い」に関していうと、リリースから10年ほどが経った今、今後はこれまで続けてきた売り手側への価値提供だけではなく、買い手向けの価値提供も強めていこうと思っています。ファイナンスやマーケティング系のサービスも提供していくことで、請求書を受け取っていなくても弊社の会員サービスを使いたいと思っていただけるような世界ができあがると思っています。そのなかで企業間取引において生ずる請求業務やリスクにおいても「NP掛け払い」も使って最適化したい といった循環構造を作っていくのが次のステージですね。

バンカブルさんとは、互いのアセットや哲学、想いが近しいところにあり、顧客インサイトもかなり共通点があると思っています。それらを持ち寄り、ディスカッションしながら「こういうサービスを作れたらいいよね」と進めていけたらいいですね。それこそ、私たちだけに留まらず、同じ想いを持つ別のパートナーとスクラムを組んでやっていくのもありだと個人的には思っています。今後が非常に楽しみです。

 

※掲載内容は取材当時のものです。

【取材ご協力】
株式会社ネットプロテクションズ / NP掛け払い事業 統括責任者 小島真一
WEBサイト:https://corp.netprotections.com/

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