税理士事務所をM&Aするには?売却のメリットやスキームなどを徹底解説

2024.04.08

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税理士事務所をM&Aするには?売却のメリットやスキームなどを徹底解説

税理士事務所のM&Aは、後継者不足の問題をはじめ資金不足の解決など幅広いメリットがあります。また、M&A後は売却利益を活用して、新規事業の立ち上げも視野に入れることができます。

本記事では、税理士事務所のM&Aのニーズが高まっている背景、メリットやデメリット、さらに、成功させるためのポイントを詳細に紹介します。また、自社に適した方法を選べるよう、M&Aのスキームも詳しく解説しています。事業承継を実現するための参考にしてください。

目次

税理士事務所のM&Aニーズが高まっている背景
■税理士の高齢化
■税理士事務所の競争激化
税理士事務所がM&Aをするメリット
■後継者探しが不要になる
■顧客や従業員への負担を軽減できる
■売却利益が見込める
税理士事務所がM&Aをするデメリット・注意点
■株式譲渡ができない
■顧客や従業員が離れる可能性がある
■M&Aが完了するまでに時間がかかる
税理士事務所のM&Aの種類とスキーム
■税理士法人の合併のスキーム
■税理士法人の事業譲渡のスキーム
税理士事務所がM&Aを成功させるポイント
■M&Aの目的を明確化する
■M&Aに早めに取り掛かる
■事業改善をして事前に価値を高める
税理士事務所がM&Aをする際によくある質問
■M&Aにおすすめのタイミングは?
■税理士事務所の価値相場はいくらか?
■M&Aに費用はいくらかかるか?
税理士事務所のM&Aは売却後を見据えて計画することが重要

 

税理士事務所のM&Aニーズが高まっている背景

税理士業界では、事業承継の問題や事務所間での競争激化への対応策としてM&Aが注目されている

税理士業界でも、税理士の高齢化と市場内の競争激化が大きな懸念事項となっており、そうした課題を解決する手段としてM&Aが注目されています。

■税理士の高齢化

2014年に行われた日本税理士会連合会「第6回税理士実態調査」によると、60代以上の税理士が大半であるというデータがあります。少子高齢化の背景も相まって、この現状は年々悪化しているといえるでしょう。税理士は年齢を重ねても仕事を続けることが可能ですが、事務所を構えている場合、いずれは事業の継承が必要となります。

そこで、事業継承の問題を解決する有効な手段として、M&Aが注目されています。M&Aにより、経験豊富な税理士の知識とスキルをスムーズに次世代に引き継ぐことが可能となります。

■税理士事務所の競争激化

税理士業界では事務所間の価格競争が激化しているため、収入減少の問題に直面している事務所が増えています。加えて、業務内容の均一化により、顧客を集客するための差別化も難しくなっています。

このような環境下において、M&Aによる事務所の統合や提携が競争力を高め、安定した経営基盤を築く有効な手段となり得るでしょう。

 

税理士事務所がM&Aをするメリット

税理士事務所のM&Aの主なメリットは、後継者問題の解決や顧客・従業員への負担軽減、売却利益を得られること

税理士事務所をM&Aする主なメリットは、後継者問題の解決、顧客や従業員への負担軽減、売却利益の確保などが挙げられます。それぞれを詳しく確認していきましょう。

■後継者探しが不要になる

M&Aを通じて、事務所は第三者に業務をスムーズに引き継ぐことができます。特に、高齢化が進む税理士業界では、後継者問題は深刻な課題となっており、M&Aはこの問題を効果的に解決する手段となるでしょう。

後継者を見つけるための時間やコストを節約できるだけでなく、事務所の価値を維持しながら、事業を持続的に成長させることが可能です。

■顧客や従業員への負担を軽減できる

事務所を閉鎖すると、顧客は新たな税理士事務所を探す必要があり、従業員は職を失います。しかし、M&Aを通じて事業を別の事務所に引き継ぐことで、顧客は引き続き質の高いサービスを受けられ、従業員の雇用問題を避けることができます。

顧客や従業員と信頼関係を保ったまま、事業を売却できる点も税理士事務所にとって重要といえるでしょう。

■売却利益が見込める

M&Aを実施することで、税理士事務所はまとまった売却利益を得られます。売却利益は、自身の退職後の生活資金や新たな事業への投資資金として活用できます。

さらに、M&A後も税理士として働き続ける選択肢があり、キャリアの継続も見込めます。このように、M&Aは事務所の所有者にとって経済的な利益をもたらすと同時に、新たなビジネスの機会も提供します。

 

税理士事務所がM&Aをするデメリット・注意点

税理士事務所のM&Aでは、株式譲渡ができないことや顧客・従業員が離れる可能性があることなどに注意が必要

税理士事務所のM&Aは多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットや注意点も存在します。株式譲渡の制限、顧客や従業員の流出のリスク、そして、M&Aのプロセスに要する時間が主な懸念事項です。

■株式譲渡ができない

多くの税理士事務所は個人事業主として運営されており、株式会社の形態ではないため、株式譲渡の方法でM&Aを行うことができません。ただし、税理士法人として組織されている場合は、出資持分の譲渡が可能です。

■顧客や従業員が離れる可能性がある

M&Aによる経営陣の変更は、顧客や従業員にとって大きな変化を意味します。特に、顧客が現在の経営者や担当税理士に対して高い信頼を寄せている場合は、注意が必要です。M&A後の人事変更により、経営者や主要な税理士が変わることでサービスの質や方針の変化を懸念して、契約を見直す可能性があります。

また、従業員も新しい経営方針や業務環境の変化に適応できない場合、転職を検討することがあります。

■M&Aが完了するまでに時間がかかる

M&Aには時間がかかることが多く、買い手の探索から交渉、最終的な契約の締結までには、数カ月から1年以上の時間を要することがあります。このため、計画的に進行できないと、経営者の退職計画や事務所の運営に支障をきたす可能性が出てきます。

適切な買い手を見つけ、希望する条件で合意に至るまでには、十分な時間と労力が必要なため、早めに動き出すとよいでしょう。

 

税理士事務所のM&Aの種類とスキーム

税理士事務所の主なM&Aスキームは合併と譲渡の2つ

税理士事務所のM&Aには、合併や事業譲渡などさまざまな形態が存在します。事務所の規模や経営戦略、将来の展望に応じてM&Aスキームを選択しましょう。以下では、税理士法人の合併と事業譲渡のスキームについて具体的に解説します。

■税理士法人の合併のスキーム

税理士法人の合併は、複数の事務所が一つに統合されるM&Aの手法です。さらに、吸収合併と新設合併の二つの形態に分かれています。

吸収合併は、一方の事務所が他方を吸収し、その法人格を維持する形式です。新設合併は、複数の事務所が解散し、新たな税理士法人を設立して事業を統合する方法です。

合併のプロセスは、まず適切な合併先を探し、その後交渉を行い、基本合意に至ります。その後、必要な事前開示事項の作成、債権者保護手続き、総社員の同意を経て、登記手続きと事後開示事項の作成を行います。

合併により、業務を効率化できるだけでなく、経営資源も集約することが可能となります。

■税理士法人の事業譲渡のスキーム

事業譲渡は、事務所の全部または一部の業務を別の事務所に譲渡し、その対価を受け取る手法です。出資持分譲渡も譲渡の一種です。

譲渡は、M&Aの条件の検討、適切な譲渡先の探索、交渉、基本合意の締結、買収監査、事業譲渡契約の締結、そして、最終的な精算の順で進めていきます。監査では財務状況や契約関係に問題がないかが確認されます。

M&Aが完了した後に、従業員や取引先に対して周知をすることも重要なステップです。

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税理士事務所がM&Aを成功させるポイント

税理士事務所がM&Aを成功させるポイントは、目的を明確にすること、早めに行動すること、事業価値を高めることの3つ

ここでは、税理士事務所のM&Aを成功させるポイントを紹介します。事前にポイントを把握しておけば、M&Aの過程をスムーズに進行できるようになるでしょう。

■M&Aの目的を明確化する

M&Aを行ううえで重要なことは、M&A自体を目的とせず、M&Aを通じて何を達成したいのかを明確にすることです。譲渡価格や維持したい従業員の待遇など、具体的な目標を設定し、それに適したM&Aのスキームを選択しましょう。

明確にした目的を全て実現できる税理士事務所が見つかるとは限らないため、目的に優先順位を明確に付けておくことで、M&Aの方向性がぶれるのを防ぐことができます。

■M&Aに早めに取り掛かる

M&Aの完了までには予想以上に時間がかかることが多く、不測の事態に備えるためにも早めの対応が必要です。特に、経営者の健康問題など予期せぬ事態が発生するリスクを考慮すると、M&Aを検討し始めたら、可能な限り早いタイミングで行動を起こすようにしましょう。

余裕を持たせたスケジューリングにより、交渉にかける時間も十分に確保できるため、好条件での合意を期待できるでしょう。

■事業改善をして事前に価値を高める

M&Aを通じて望む成果を得るためには、買収や合併を検討している相手にとって魅力的な事業かどうかが重要とされます。また、事業の価値を高めることで、よりよい条件でのM&Aが可能になり、手元に残る利益も増えます。

魅力のある事業になるために、財務状況の改善やサービス品質の向上に努めましょう。

 

税理士事務所がM&Aをする際によくある質問

税理士事務所のM&Aに関するよくある質問への回答

最後に、税理士事務所のM&Aに関するよくある疑問に回答します。

■M&Aにおすすめのタイミングは?

一般的に、事業が好調な時期にM&Aを行うことで、事務所の価値を最大限に引き出すことができます。業界が再編されている時期も、買収を積極的に行っている企業が増えるため、M&Aを実現しやすくなります。

また、事務所の経営者が健康で、M&Aの準備を積極的に進められる状態のときもよいでしょう。これらの条件が揃っているときが、M&Aを実施することに適したタイミングといえます。

■税理士事務所の価値相場はいくらか?

税理士事務所の価値を評価する際に、一般的な目安は、1年間の顧問報酬や過去2~3年分の営業利益です。また、DCF法(ディスカウンテッド・キャッシュフロー法)や時価純資産法などの財務評価手法を用いるケースもあります。

各方法により算出された価値は、税理士事務所の業績や将来性、市場の需給状況によっても変動します。正確な価値を把握するためには、専門家の意見を仰ぐことをおすすめします。

■M&Aに費用はいくらかかるか?

M&Aの過程では、登記費用や契約書作成に伴う印紙代など、さまざまな費用が発生します。特に、M&Aのサポート業者を活用する場合は、成功報酬として譲渡価格の数パーセントが費用として発生することが一般的です。

ただし、中小企業庁などの公的機関が提供するM&A支援制度を活用することで、これらの費用を一部補助してもらえる場合もあります。

 

税理士事務所のM&Aは売却後を見据えて計画することが重要

税理士事務所のM&Aは売却後を見据えて計画することが重要

税理士事務所のM&Aは、経営者の高齢化や後継者不足への対応策として考え得る一つのな方法です。M&Aを成功させるには、専門業者のサポートを受け、事業価値を高めておきましょう。また、M&A後の成長には、資金繰りの柔軟性を保ちながらのマーケティング活動が欠かせません。

この点で、バンカブルの「AD YELL(アドエール)※1」のような広告費分割・後払いできるサービス(BNPL※2)を活用することも選択肢となります。
また、税理士事務所の顧客との関係性を深め、企業価値を高めていくうえで幅広い財務・ファイナンス手段の一つとして理解しておくことも重要といわれているため、詳しくは以下をご参照ください。

 

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