【事業フェーズ別】スタートアップの事業計画の作成ポイント|事業計画書で重要な要素とは
事業計画書は、事業の目指す目標を明確にし、それに基づいた事業内容や金融機関・投資家など資金調達先から重視される要素を記載します。特に、資金調達を行う際には、資金調達を受けるステークホルダーを説得できる強力な事業計画書が必要不可欠といえます。
本記事では、事業計画書の概要や記載しておきたい要素、スタートアップの成長フェーズにあわせた作成するうえでのポイントを紹介します。ぜひ事業計画書を作成する際にお役立てください。
目次
スタートアップ企業の立ち上げに必要な事業計画
■事業計画書とは
■事業計画の基本的な立て方
スタートアップ企業の事業計画で重視されること
■ビジネスモデル・将来性
■独自性
■市場ニーズへの深い理解
スタートアップ企業が事業計画書に記載しておきたい要素
■経営者のプロフィール
■自社のターゲット層
■ユーザーの課題と解決策
■市場規模と将来性
■自社の独自性
■ビジネスモデル
■数値計画
■資本政策
【事業フェーズ別】事業計画書を作成する際のポイント
■スタートアップ企業の事業フェーズとは
■各成長フェーズの特徴と事業計画のポイント
■事業フェーズに応じたマーケティング戦略を策定する
【資金調達方法別】事業計画書を作成する際のポイント
■金融機関から融資を受ける場合
■投資家から出資を受ける場合
■公的機関の補助金や助成金を活用する場合
自社の事業フェーズや目的に応じて事業計画書を作成しよう
スタートアップ企業の立ち上げに必要な事業計画
スタートアップ企業の成功は、明確なビジョンと具体的な行動計画に基づく事業計画の策定から始まります。また、事業計画を記した事業計画書を作成することでビジネスの方向性を明確化し、従業員やそのほかのステークホルダーに共有することができます。
まずは事業計画書とは何か、基本的なことから理解していきましょう。
■事業計画書とは
事業計画書とは、事業の目標やビジョン、戦略を具体的に記述した資料のことです。会社を立ち上げる際に必ず提出が求められるわけではありませんが、ビジネスプランや資金計画を明確にすることで、今後の課題を早期に見つけ出し対策を講じることに役立ちます。
また、資金調達の際には金融機関や投資家に事業計画書の提出を求められることもあり、その内容は資金調達の成否に直結するといっても過言ではありません。
事業計画書には特定のフォーマットはありませんが、一般的には事業の概要や市場分析、財務計画、代表者の経歴などを記載します。スタートアップ企業にとって事業計画書を通じて自らのビジョンを伝えることは、企業のさらなる成長促進につながる一手といえるでしょう。
■事業計画の基本的な立て方
事業計画を策定する際は、まず外部環境(経済状況や競合他社の動向など、自社のコントロール外にある要素)と内部環境(自社の人材、設備、資源など管理可能な要素)を分析することから始めます。
分析を踏まえて達成したい目的と目標を明確化し、そのうえで目標達成のために直面するであろう課題と、それらを解決する方法を明確にします。最後に、計画を実行に移すためのアクションプランを立てます。
計画の実施後は、PDCAサイクルを用いて計画の進行をチェックし、必要に応じて計画を見直し、改善していくことになります。
スタートアップ企業の事業計画で重視されること
一般的な企業とスタートアップ企業では、事業計画書において重視される要素が異なります。何が重要かを把握し事業計画書に反映させることが、資金調達や事業成功の鍵を握るともいえるでしょう。
スタートアップ企業が事業計画で特に重視したい要素を、具体的に解説していきます。
■ビジネスモデル・将来性
一般的な企業の場合、過去の実績に基づいた数値が求められるケースが多い傾向にあります。一方で、スタートアップ企業は、数値データよりも事業のアイデアやビジネスモデルの明確さ、将来性が重視されます。
金融機関や投資家に融資を求める場合、ビジネスモデルが不明瞭で将来性がないと判断されてしまえば、資金調達が難しくなるでしょう。
■独自性
市場には数多くの競合が存在していたり、類似した商品やサービスが存在したりするケースがあります。このような環境において、スタートアップ企業が成功をおさめるためには、事業計画書で自社の独自性を明確に示すことが重要となるでしょう。
まずは、自社の商品やサービスが他社とどのように違うのかを明確にします。さらには、市場にどのような新しい価値をもたらし、どのような顧客のニーズや課題を解決するのかを詳細に説明することが求められます。
このプロセスを通じて、投資家や顧客に対し、自社のポジショニングと市場における重要性を強調することができるでしょう。
■市場ニーズへの深い理解
スタートアップ企業が市場で成功を収めるためには、市場のニーズへの深い理解が欠かせません。どんなに優れた商品やサービスを開発しても、それが市場の求めるものでなければ顧客を集客できないためです。逆にいえば、市場ニーズに合致した事業であれば、事業の成功への期待値も高まります。
事業計画書には、提供する商品やサービスが市場のニーズにどのように応えるのかを明確に示しましょう。
スタートアップ企業が事業計画書に記載しておきたい要素
基本的に、事業計画書に記載する内容に決まりはありません。ここでは、特にスタートアップ企業が事業計画署に記載しておきたい要素を紹介します。
■経営者のプロフィール
スタートアップ企業の場合、一般的な企業に比べ実績が少なく数値的な説得力に欠けるため、経営者の経歴や人柄が重視されやすい傾向にあります。
そのため、経営者のプロフィールは記載しておいた方がよいでしょう。事業計画書に経営者の経験やスキルを示すことで、企業を成長させる資質があることをアピールにつながります。
■自社のターゲット層
ユーザーは誰で、その属性を含むターゲット層がどのようなカテゴリになるのかを具体的に設定しておきましょう。例えば、年齢、性別、職業、収入、趣味などで細分化し、ユーザーの言語化しペルソナ設定することもひとつです。自社のユーザー・ターゲット層を明確にすることで、提供する商品やサービスが実際に市場のどういったニーズに応えるのかを示すことができます。
ユーザー・ターゲット層の明確化は、マーケティング戦略を策定するうえでの基盤となります。また、投資家や金融機関に対しても、事業計画の現実性と実行可能性をより効果的に伝えることが可能となるでしょう。
■ユーザーの課題と解決策
事業計画では、ユーザーの具体的な課題と、その課題に対して自社の商品やサービスがどのように解決できるのかを示すことが求められます。課題と解決策を提示することで、自社のビジネスが市場においてどのような価値を提供するのか、そしてなぜ必要とされるのかを明確に伝えられるようになるでしょう。
また、事業の目標と進むべき方向がより鮮明になり、実現可能性を高めることにもつながります。
■市場規模と将来性
優れた商品やサービスを開発しても、対象とする市場の規模が限られている場合、大きな成長は望めません。そのため事業計画には、現在の市場規模だけでなく、将来にわたってその市場がどの程度成長する可能性があるのか、成長性の分析も盛り込むことが必要です。
市場の成長性を示すことで、事業が生み出す利益の可能性を投資家などのステークホルダーに伝えられ、事業計画の信頼性によって投資を受ける可能性を高めることができます。
■自社の独自性
多くの投資家は、スタートアップ企業に革新的な事業を求めているため、事業計画書では市場内での自社のポジショニング、競合他社との差異、そして自社の強みを明確に示すことが求められます。
市場における独自性と競争優位性を具体的に提示することで、投資家や関係者に自社の事業が持つ潜在的な価値と成長の可能性を把握してもらいやすくなるでしょう。
■ビジネスモデル
自社のサービス・商品がどのようにビジネスとして収益を生み、ユーザーに価値を提供するのかを提示することで、投資家やステークホルダーは事業の潜在的な価値を認識しやすくなります。
そのため、事業のコストや収益構造を具体的に説明することが求められます。自社のビジネスモデルを、一目で理解できるように図式化しておくことも効果的です。第三者が見ても、自社の事業計画をより理解してもらえるようになるでしょう。
■数値計画
数値計画とは、業界の特有な指標を基に立てた売上予測や仕入計画など、より掘り下げた将来計画のことを指します。重要業績評価指標(KPI)を基準に策定することが一般的です。このKPIを用いることで、目標達成の度合いを明確に可視化し、事業の進行管理を効果的に行うことが可能になります。
数値計画は、事業の目標に対する達成度合を示すだけでなく、投資家や関係者に対して、事業の健全性と成長の見込みを具体的に伝えるための重要な要素ともいえるでしょう。
■資本政策
資本政策では、特定の期限内に予定している増資の具体的な金額や目標達成時の株価上昇の見込みなど、明確な数値や期間を示すことが推奨されます。
これらの情報を具体的に提示することで、投資家などのステークホルダーに対して、自社の資金調達の戦略およびその影響をより分かりやすく伝えることができます。特に、上場を視野に入れている場合は、上場を通じて株主に期待できるリターンについても詳細に記述することが必要です。
資本政策を具体的に定めることは、企業の財務計画の透明性を高め、事業の成長を判断するための重要な要素となるため、投資家などのステークホルダーから信頼を得ることにも寄与するでしょう。
【事業フェーズ別】事業計画書を作成する際のポイント
スタートアップ企業が事業計画書で重視される要素は、一般的な企業と異なりますが、さらに企業の事業フェーズによっても求められる要素は異なります。
ここからは、スタートアップ企業の成長フェーズに応じた、事業計画書作成に対するポイントを解説します。
■スタートアップ企業の事業フェーズとは
事業フェーズには、シード期、アーリー期、ミドル期、レイター期という四つの段階があり、各段階で組織の状況や直面する課題が異なります。そのため、事業計画を策定する際、スタートアップ企業にとって自社がどのフェーズにあるかを把握することが大切です。
例えば、シード期では製品開発と市場適合の把握が主な課題であり、アーリー期では製品の市場適合性の確認や初期の顧客基盤の構築に焦点を当てることになります。ミドル期には事業の拡大と収益性の向上を目指し、レイター期にはさらなる市場拡大や新たな収益源の確保が主な目標といえるでしょう。
自社がどのフェーズに位置しているかを理解し、それぞれのフェーズに適した事業計画や戦略を立てることが必要です。
■各成長フェーズの特徴と事業計画のポイント
シード期、アーリー期、ミドル期、レイター期の各成長フェーズごとの特徴と、それぞれのフェーズにおける事業計画のポイントを紹介します。
シード期
シード期は、創業して間もない初期段階です。ビジネスアイデアは存在しても、それを市場に投下し検証している段階で、具体化した現実的な計画がまだ形成されていないことが多い傾向にあります。
立ち上げには会社設立費や人件費など初期投資が必要になることから、シード期は必要な資金の確保が一つの課題です。また、商品やサービスが市場に受け入れられるかどうかが不確実なため、外部からの資金調達が難しい傾向にあることも課題といえるでしょう。
その場合まず、自己資金や親族、友人からの借入が主な資金源となることが多いかもしれませんが、信用度を高める事業計画書を策定すれば、例えば日本政策金融公庫からの融資を受けられる可能性もあります。
シード期にある企業は、限られたリソースを最大限活用しながら、効果的な事業計画を立て、資金調達の機会を広げることが必要です。
アーリー期
アーリー期はスタートアップ企業の成長段階であり、場合によっては自社の商品やサービスからの利益が見込めるフェーズになっていきます。
重要なことは新規ユーザーを集客し、顧客基盤を安定化しつつ拡大するための戦略を立てることです。そのために、例えば広告や口コミなどを活用して集客しながら認知度を高め、事業の成長を促進する必要があります。
更なる事業の拡大を目指し、人件費や開発費、広告宣伝費等の成長資金への投資も欠かせません。投資家等の資金調達側は、提供する商品やサービスの将来性と事業の蓋然性を徐々に求める傾向にあるためその点を考慮した事業計画を策定し、説得し得る材料を策定することが重要といわれています。
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ミドル期
ミドル期は市場での認知度が高まり顧客基盤が拡大していくなど、事業が軌道に乗って急速に拡大してくるフェーズです。事業が安定し始めることから、リピーターの増加に加え、新規顧客の集客によるさらなる事業拡大が可能になります。
この時期はすでに一定の信用度が確立されているため、例えば金融機関からの融資は前のフェーズより受けやすいようにになります。しかし、メイン事業の成長を維持しつつ、新たなビジネスチャンスに挑戦するには、相応の時間、人的資源、財務的投資が必要です。
資金調達を目指す際には、今後の高い成長ポテンシャルを示す事業計画の策定が重要といえるでしょう。事業計画には既存の成功を基に、どのようにして事業を成長させ、新しい市場を開拓していくかの具体策を盛り込む必要があります。
レイター期
レイター期に差し掛かると、事業の成長は安定的に伸長をしながら、その先の上場やM&Aへ向けたステップを踏んでいきます。
成長を続けるためには新規事業の展開や新たな拠点の開設など、さらなる拡大が求められます。
レイター期では、経営者が中長期的な視野に立った戦略を持ち、それを事業計画に反映させることが大切です。これにより投資家からの評価を一層高め、企業価値の拡大につなげることが可能になります。
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■事業フェーズに応じたマーケティング戦略を策定する
スタートアップ企業が成長していくうえで、事業計画とマーケティング戦略は密接に関連しています。自社の認知を拡大し商品・サービスを届けていくにはたマーケティング戦略が重要となりますが、展開するアクションは成長フェーズにより異なります。
例えば、シード期は顧客基盤がまだ確立されていないため、やみくもに広告を出稿するよりも、顧客のニーズ、ターゲット市場への深い理解やそこを踏まえた質の高いコンテンツ発信等により、初期の顧客との関係性を強固にすることへ注力した方が、結果その先の事業成長につなげられる可能性があります。アーリー期からレイター期にかけては、事業計画・フェーズごとに適した顧客基盤の拡大のため、広告を活用し、企業の成長を促進することも必要でしょう。
一方で、新しい広告を出稿する場合や広告規模を大きくするには、一定の資金が必要不可欠です。
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スタートアップ企業に効果的な広告戦略とは?広告効果を高めるポイントや成功事例を紹介
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*「担保・連帯保証不要」は原則であり、場合によってはその限りではありません。ご了承くださいませ。
【資金調達方法別】事業計画書を作成する際のポイント
資金調達を目的とした事業計画書を作成する際は、選定した手段に応じて強調した方がいいポイントも変わります。
ここでは、資金調達方法別に事業計画書を作成するポイントを紹介します。
■金融機関から融資を受ける場合
金融機関からの融資(デットファイナンス)を受ける際は、返済能力が重視されます。そのため、事業計画書には事業の概要だけでなく、予想される利益と返済計画を詳細に記載することが重要なポイントの一つです。また、金融機関からは、事業計画書以外にもExcelなどで作成された詳細な資料の提出を求められることがあります。
近年では、多様な資金調達手段へのニーズの高まりから、デット(負債)とエクイティ(資本)の両方の性質を持ったベンチャーデットに対する関心が高まっています。こちらは、スタートアップ企業が金融機関から融資を受ける際、転換社債や新株予約権の発行によって金融機関が負うリスクを分散させる仕組みです。
ベンチャーデットについてはこちらの記事で詳しく解説していますので、ご参考にしていただければ幸いです。
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ベンチャーデットとは?特徴やメリット、実際の調達事例などを紹介
■投資家から出資を受ける場合
投資先を決める際に重視することは、投資家によって異なります。そのため、投資家からの出資(エクイティファイナンス)を受ける際は、その投資家に合わせて事業計画書をカスタマイズすることが大切です。
例えば、エンジェル投資家は他社と比較して高い事業価値(将来性)と明確なリターンを求める傾向にあります。ベンチャーキャピタルは高い成長率と成功確率、そしてEXIT(事業売却)による売却益を重視する一方、クラウドファンディングでは、不特定多数の方の共感を得ることが成否に直結するため、プロジェクトの魅力や目標額、リターンを明確に提示することがポイントです。
各投資家のニーズに合わせた事業計画書の策定が、資金調達を成功させる鍵といえます。
■公的機関の補助金や助成金を活用する場合
公的機関の補助金や助成金を活用する場合は、それぞれの適用条件を事前に確認し、対応する事業計画書を用意する必要があります。自社の事業が公的支援の目的や基準にどう適合しているかを具体的に示すことで、資金調達の成功の可能性を高められるでしょう。
補助金や助成金は返済の義務がないため、企業の負担を軽減しながら事業展開を加速させることが可能です。
自社の事業フェーズや目的に応じて事業計画書を作成しよう
スタートアップ企業が資金調達をするにあたって、事業計画書の提出を求められることが一般的です。事業計画書に求められる内容は融資や投資を受ける相手によって異なるため、作成の際は相手が求める情報、重視するポイントを盛り込むことが大切といえます。
また、事業計画書には、事業フェーズに応じたマーケティング戦略も反映させましょう。企業の状況によっては、広告以外にリソースを割いた方がいいケースや、逆にそれまでよりも広告出稿の規模を大きくした方がいいケースも考えられます。
新しい戦略を実行する際、資金面に不安があるようなら「AD YELL」のような広告費の分割・後払いサービスを活用する手段もあります。資金調達には多様な方法があるため、自社の状況や実現したい方向性に合わせて選択していきましょう。
事業計画書は、企業の未来を具体的に描くものです。ビジョンや目標を明確にすることで、企業の戦略的な意思決定を促進し、さらなる成長へとつなげることができます。
また、戦略策定時に活用していただける、広告費や仕入費の分割・後払いサービス(BNPL)の概要やメリット、成功事例などを紹介した資料を無料でダウンロードしていただけます。ぜひ、広告費の後払いサービスの導入を検討する際にお役立てください。
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