自己資金とは?認められる資金と認められない資金をまとめて解説
自己資金とは、事業を運営するために企業が自ら保有する資金を意味します。預貯金や贈与などの明確な出所がある資金は自己資金として認められ、事業の安定性や資金調達に重要な役割を果たします。企業にとっての、自己資本の重要性や基本を解説します。
目次
自己資金とは 自己資金の重要性 資金調達における信用力に影響するため 資金繰りを安定させるため リスクを分散するため 自己資金として認められる資金 預貯金 贈与で受け取ったお金 退職金 解約返戻金 資産を売却して得たお金 みなし自己資金 三者割当増資 内部留保 自己資金として認められない資金 口座に入っていないお金 口座に振り込まれた多額のお金 返済義務がある借入金 スタートアップ企業が確保しておきたい自己資金の目安 自己資金が不足する場合の対処法 外部から資金を調達する 事業拡大に向けて投資を加速させるなら請求書カード払い(BPSP)の活用も検討する 広告への投資ならマーケティング費や広告費の分割後払いサービス「AD YELL(アドエール)」も有用 自己資金を活用して事業の安定化をはかろう
事業を継続・拡大させるための資金として、特に創業期や創業まもない時期は自己資金が重要な役割を担うことになります。自己資金を活用するには、自己資金の範囲を正確に把握しておくことが大切です。
本記事では、自己資金として認められる資金や認められない資金について詳しく解説します。自己資金の不足分を補う方法も紹介しますので、ぜひご参考ください。
自己資金とは

自己資金とは、企業・個人が事業や投資を行う際に自ら用意した資金を指します。いわば開業に向けて自身で用意する資金であり、投資家や金融機関など外部からの得た資金ではなく、手元にある現金や資産が自己資金となります。
特にスタートアップ企業では、事業の初期フェーズにおいて自己資金が重要な役割を果たします。創業間もない段階では外部からの資金調達が難しい傾向にあるため、自己資金を使って開発やマーケティングに投資し、事業を軌道に乗せることが求められるためです。
自己資金と混同されやすいものに、自己資本と資本金があります。自己資金は自己資本の一部であり、企業の純資産を示す概念です。資本金は会社設立時の初期投資資金を指します。
事業開始にあたって自己資金を多く用意できれば、その分借り入れを減らせるため、安定した事業運営が行えるようになるでしょう。
自己資金の重要性

企業にとって、自己資金を持つことは重要といわれています。これはスタートアップ企業も同じです。
自己資金が重視される理由を解説します。
資金調達における信用力に影響するため
自己資金は、融資において審査基準の1つとされています。特に、自己資本比率は企業の財務健全性を示す指標として重視されます。
自己資本比率とは、企業の安全性を見るための基本的な指標であり、返済不要の資本の割合を図る分析指標のことです。自己資本比率が高いほど企業財政が安定していると見なさるため、融資審査を通過できる可能性も高まります。
そのため、金融機関や投資家からの信用力を高め信頼を得るには、一定の自己資金を投入することが重要といえるでしょう。企業の本気度を示すことで、将来的な資金調達がスムーズに進む可能性が高まります。
資金繰りを安定させるため
融資は借入金のため、元本と利息の返済が必要になります。しかし、事業の運営状況によっては返済が大きな負担となり、資金繰りの悪化につながることがあるかもしれません。一方、自己資金は返済不要なため、「返済」による資金繰りの圧迫は発生しません。
また、自己資金があれば、想定外のトラブルなどで急に資金が必要な事態が起きても、柔軟に対応できます。資金繰りの安定化につながることから、事業の持続可能な成長にも大きく寄与します。
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リスクを分散するため
どのような事業も、成功が保証されているわけではありません。そのため、特に初期フェーズにおいて外部からの借入に依存しすぎると、万一の失敗時に大きな負債を抱えるリスクがあります。自己資金を活用することで外部からの借入をおさえられれば、その分リスクも軽減されます。
また、自己資金を適切に活用し外部資金を調達するタイミングを見極めることで、リスクを分散しつつ事業を進められます。
手元に資金があれば、景気変動や市場の変化など不測の事態にも柔軟に対応可能です。資金繰りの問題で事業が中断するリスクの軽減にもつながります。
自己資金として認められる資金

手元にある現金の全てが自己資金となるわけではありません。まずは「自己資金として認められる資金」を具体的に解説します。
預貯金
預貯金は、自己資金として認められる代表的な資金です。資金の出所が明確であり、経営者の金銭能力を示す指標のため、融資の審査でも信頼性のある基準の一つとして活用されます。
経営者自身の口座だけでなく、企業や家族名義の預貯金も自己資金として活用できます。ただし、自分名義以外の口座の預貯金を自己資金として示す場合は、該当者の同意書や委任状が必要となります。事前に準備しておきましょう。
贈与で受け取ったお金
親族や友人から贈与されたお金は、自己資金として認められます。贈与された資金は返済義務がないため事業運営に活用しやすく、自己資本が増えることで金融機関や投資家からの信用も高まるでしょう。
ただし、贈与を自己資金として示すには、贈与証明書や贈与税の納税証明書などの書類が必要です。
退職金
経営者が前職を退職した際に受け取った退職金も、自己資金に含められます。退職金を自己資金として活用する場合、退職証明書や支給明細書などの書類が必要です。証明があることで資金の出所が明確になり、金融機関や投資家からの信頼を得ることができます。
退職金を起業資金として活用するケースも多いため、創業にあたっての重要な資金源の一つだといえるでしょう。
解約返戻金
生命保険や学資保険などを解約した際に返金される「解約返戻金」も自己資本にできます。資金の出所を示すため、解約返戻金を活用する場合は、保険証券や解約証明書などを準備しましょう。
資産を売却して得たお金
例えば不動産や株式など、保有している資産を売却して得たお金は自己資金として活用できます。その際は、売買契約書や領収書、口座明細書などの書類が必要となります。
みなし自己資金
「みなし自己資金」とは、事業を開始するためにすでに支払った費用のことです。備品や機械設備、事務所の保証金・敷金、内装費用など、創業準備に使用した費用が該当します。たとえ現金として残っていなくても、自己資金としてカウントできます。
ただし、資格取得のためのスクール費用や交際費など、用途によっては自己資金として認められない場合もあるため、注意が必要です。
三者割当増資
第三者割当増資は、企業が新たに発行する株式を特定の第三者に割り当てることで資金を調達する方法です。迅速な資金調達を目的として、事業拡大や新規プロジェクトに充てる事業費として活用されます。
調達した資金には、融資のような返済義務がありません。事業を成長させ企業価値を高めることが、出資者へのお返しとなります。
返済を気にせず事業に集中できる点は、特にリソースに限りのあるスタートアップ企業にとってメリットです。しかし、株式が希薄化するため、活用にあたっては株主との調整が求められるでしょう。
内部留保
内部留保とは、企業が利益を出した際にそれを配当として株主に渡すのではなく、企業内に残して再投資に充てる資金を指します。設備投資や研究開発、事業拡大など、さまざまな用途に活用されます。
内部留保があれば、景気変動や自然災害など、不足の事態に柔軟に対応することも可能です。安定した成長の実現が期待できます。
しかし、過剰な内部留保は株主に不満を与える可能性があるため、配当金とのバランスに留意する必要があるでしょう。
自己資金として認められない資金

次に「自己資金として認められない資金」を具体的に解説します。
口座に入っていないお金
銀行口座に入っていないお金は、自己資金として認められません。例えば、自宅や会社の金庫に保管していた現金、いわゆる「タンス預金」が該当します。
金融機関や投資家は、企業の自己資金の状況を銀行口座で確認することが一般的です。「タンス預金」は公的に確認できないほか、出所が不明確であるため、自己資金にはなりません。
口座に振り込まれた多額のお金
自分名義や会社名義の口座に、一時的に多額の金額が振り込まれた場合、そのお金は自己資金として認められないことがあります。資金の出所が不明確で「見せ金」の可能性があるとみなされるためです。見せ金とは、信用を得るために一時的に見せるお金のことです。
振り込まれた金額を自己資金として活用する場合は、出所を証明する書類を準備する必要があります。例えば、前述したように、退職金であれば退職証明書や支給明細書を、贈与金であれば贈与証明書や贈与税の納税証明書を用意しましょう。
返済義務がある借入金
返済義務がある借入金は、自己資金として認められません。経営者自身や企業が保有する資金ではなく、他者から借りた資金のためです。
そのため、親族や友人などから提供されたお金も、借金として受け取ると自己資金にも含められなくなります。自己資金として活用するには、返済義務がない贈与として受け取る必要があります。
スタートアップ企業が確保しておきたい自己資金の目安

スタートアップ企業が確保しておきたい自己資金の目安は、開業時の資金総額によって異なります。そのため一概に「いくら必要か」はいえませんが、一般的には、開業時の資金総額の3割から5割程度が目安とされています(※1)。また、例えば、日本政策金融公庫の新創業融資制度を活用するための条件には、開業時の資金総額の10分の1以上の自己資金が必要です。
一定の自己資金を準備することで資金調達しやすくなり、事業運営を安定化させるための基盤も整えやすくなります。活用したい制度なども参考に、自己資金として必要な額を把握しましょう。
自己資金が不足する場合の対処法

特に初期フェーズのスタートアップ企業にとって、自己資金は事業成長を加速させる資金源となります。しかし、事業運営の全てを自己資金でまかなえるケースは多くないでしょう。
自己資金では運営費が不足する場合の対処法を紹介します。
外部から資金を調達する
事業費を用意する際は、外部から資金調達を行うことが一般的です。例えば、投資家から出資を受けたり、金融機関から融資を受けたりするケースが多いでしょう。また、創業期のスタートアップ企業にとっては、決算書なしで申し込めるビジネスローンも有用な選択肢の1つです。
この他、日本政策金融公庫の制度融資や自治体による融資制度の活用も検討してみましょう。スタートアップ企業が活用しやすい融資制度については、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせてお役立てください。
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ベンチャー企業の資金調達方法とは?調達先の選択肢と資金調達時の注意点を徹底解説
事業拡大に向けて投資を加速させるなら請求書カード払い(BPSP)の活用も検討する
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請求書カード払い(BPSP)のメリットや具体的な活用シーンについては、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
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BPSPとは?企業が活用するメリットや課題、おすすめサービスを紹介
広告への投資ならマーケティング費や広告費の分割後払いサービス「AD YELL(アドエール)」も有用
スタートアップ企業にとっては、商品・サービスの認知を高めるマーケティング施策も重要といえます。広告費への投資を加速させるなら、BNPL(※2)の活用が有用です。
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*「担保・連帯保証不要」は原則であり、場合によってはその限りではありません。ご了承くださいませ。
自己資金を活用して事業の安定化をはかろう

自己資金には、認められるものと認められないものがあります。預貯金や贈与で受け取ったお金など、出所が明確な資金は自己資金として認められますが、タンス預金や返済義務がある借入金は含められません。
事業運営は、自己資金だけでなく外部からの資金調達も重要となります。一般的には金融機関からの融資が選択肢になるケースが多い傾向にありますが、資金繰りやリスク面を踏まえると、多様な選択肢から適切な方法を選択することが大切です。
資金繰りを安定させるためには、請求書カード払い(BPSP)やBNPLなど、資金調達に代わる手段も有用です。弊社も、マーケティング費や広告費の分割後払いサービス「AD YELL」や「請求書をクレジットカード払いにできる、Vankable 請求書カード払い」を通してファイナンス面からサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。
資金に余裕を持つことで、事業の安定化と成長を促進していきましょう。