クラウドファンディングのデメリットとは?種類ごとの注意点や対策を解説
クラウドファンディングは、スタートアップ企業やベンチャー企業にとって、有用な資金調達方法です。
商品やサービスの認知度を高められる、融資などが難しい状況でも活用できるなどさまざまなメリットがありますが、一方でおさえておきたいデメリットもあります。
本記事では、クラウドファンディングの種類とデメリット、そしてそのデメリットを解消するための対策を紹介します。クラウドファンディングの活用を検討する際にお役立てください。
目次
クラウドファンディングとは
クラウドファンディングのおもな種類と特徴
各クラウドファンディングに共通するデメリット
■目標額を調達できる保証はない
■入金までに時間がかかる
■All-in方式ではプロジェクトの中断ができない
■支援金の全額を事業に使えるわけではない
【種類別】クラウドファンディングのデメリット
■購入型クラウドファンディングのデメリット
■金融型クラウドファンディングのデメリット
■株式型クラウドファンディングのデメリット
■ファンド型クラウドファンディングのデメリット
クラウドファンディングのデメリットへの対策
■支援者にプロジェクトの魅力を具体的にアピールする
■余裕をもったスケジュールで進行する
■プロジェクトの失敗も想定しておく
■事前に実用新案を申請しておく
クラウドファンディングの活用を検討したいケース
クラウドファンディングに応募する流れ
クラウドファンディング以外での資金調達方法
■日本政策金融公庫からの融資
■事業者向けの補助金・助成金の申請
クラウドファンディングは資金調達方法として有用な手段の1つ
クラウドファンディングとは
クラウドファンディングとは、「群衆(クラウド)」と「資金調達(ファンディング)」を組み合わせた造語であり、インターネットを通じて不特定多数の支援者から資金を集める手法を指します。
クラウドファンディングのプラットフォームを通じて、資金を求めるプロジェクトオーナーと支援者がマッチングすることで、特定の目的に向けた資金調達が可能となります。
エクイティファイナンスやデットファイナンスよりも手軽に活用できるため、特にスタートアップ企業や小規模プロジェクトの実行にあたり、有用な資金調達方法となっています。
クラウドファンディングのおもな種類と特徴
クラウドファンディングには、主に購入型、寄付型、融資型、株式型、ファンド型、ふるさと納税型の6つの種類があります。
それぞれの特徴は次の通りです。
種類 | リターン | 募集方式 | サービス例 |
購入型 | 商品やグッズ・サービス等 | ・All-or-Nothing型 ・All-In型 |
・Makuake ・GREENFUNDING |
寄付型 | 活動報告・お礼 | ・All-or-Nothing型 ・All-In型 |
・CAMPFIRE ・READYFOR |
融資型 | 分配・特典 | ・All-or-Nothing型 ・All-In型 |
・Crowd Bank ・Bankers |
株式型 | 株式 | ・All-or-Nothing型 ・All-In型 |
・FUNDINNO ・CF Angels |
ファンド型 | 分配・特典 | ・All-or-Nothing型 ・All-In型 |
・COZUCHI ・セキュリテ |
ふるさと納税型 | 返礼品・寄付金控除 | ・All-or-Nothing型 ・All-In型 |
・ふるなびクラウドファンディング ・ガバメントクラウドファンディング®(GCF®) |
購入型は、支援者に商品やサービスをリターンとして提供し、寄付型は、活動報告やお礼のみでリターンが発生しません。融資型は、融資を受けた企業が返済し、支援者は利息や特典を受け取ります。株式型は、非公開株をリターンとし、支援者は配当や株価の上昇に期待し支援を行います。ファンド型は特定プロジェクトへの資金提供で、金銭的リターンが得られます。最後に、ふるさと納税型は、自治体がプロジェクト資金を募り、支援者には返礼品や税控除が提供されます。
クラウドファンディングの募集形式には、目標達成時のみ支援金を受け取れるAll-or-Nothing方式と、目標未達成でも支援金を受け取れるAll-in方式があります。
各クラウドファンディングに共通するデメリット
クラウドファンディングでの資金調達にはいくつかデメリットがあります。本章では、各クラウドファンディングに共通する4つのデメリットを解説します。
■目標額を調達できる保証はない
クラウドファンディングには、「目標額を調達できる保証がない」という共通のデメリットがあります。支援者からの応募が集まらなければ、目標額には達しません。
特にクラウドファンディングを唯一の資金調達方法としている場合、目標額を得られなかった場合は、事業が進行できずに頓挫するリスクが高まります。そのため、クラウドファンディング以外の資金調達方法も併用するなど、リスクの分散を図ることが重要だといえます。
■入金までに時間がかかる
クラウドファンディングによる資金調達は、時間がかかりやすい側面があります。
プラットフォームでプロジェクトを公開するには、事前にクラウドファンディング事業者による審査が必要です。また、プロジェクトが掲載された後も、目標額に達するまでに数カ月かかるケースもあります。
クラウドファンディグの動き出しの時期によっては、資金が必要なタイミングでの入金が間に合わない可能性もあるでしょう。資金調達のスケジュールをしっかりと計画し、早めの取り組みが求められます。
■All-in方式ではプロジェクトの中断ができない
前述した通り、All-in方式のクラウドファンディングは、目標額の達成度合いにかかわらず支援金を受け取れますが、プロジェクトの実施が必須です。そのため、資金不足のまま事業を開始しなければならない可能性も出てきてしまいます。
資金不足により事業が失敗することになれば、企業としての信用を損なうリスクにつながり、次回以降の資金調達に大きな支障をきたす可能性もあります。
All-in方式を活用する場合は、特に慎重な事業計画と資金計画が必要となります。
■支援金の全額を事業に使えるわけではない
クラウドファンディングで集まった支援金は、全額を事業に充てられるわけではありません。まず、クラウドファンディングの事業者に対して手数料を支払う必要があり、購入型の場合は支援者へのリターンにかかる費用も発生します。
このようなコストを差し引くため、実際に事業に使える資金は「集まった支援金」よりも減少します。手数料やリターンのコストを考慮したうえで、事業に必要な資金が十分に確保できるかを事前に計算しておく必要があるでしょう。
【種類別】クラウドファンディングのデメリット
本章では、スタートアップ企業やベンチャー企業の資金調達の選択肢となる、購入型・金融型・株式型・ファンド型について、各クラウドファンディング特有のデメリットを解説します。
■購入型クラウドファンディングのデメリット
購入型クラウドファンディングのデメリットの1つは、支援者を募るためにプロジェクト内容を公開する必要があるため、アイデアの盗用リスクが生じることです。資金調達前にアイデアが広まり、資金力のある企業や個人に先に実用化されてしまう可能性がゼロではありません。
アイデアの保護やタイミングの調整がポイントとなるため、場合によっては知的財産権の登録なども検討した方がよいでしょう。
■金融型クラウドファンディングのデメリット
金融型クラウドファンディングでは、金利が金融機関の融資よりも高いケースがあるというデメリットがあります。従来の金融機関の融資と比較して利便性の高い手段といえますが、返済の負担が大きければ、資金調達に成功しても、返済が難しくなり最終的に経営が立ち行かなくなることも考えられます。
事前に返済条件を慎重に検討し、無理のない資金調達を計画・実行することが大切です。
■株式型クラウドファンディングのデメリット
株式型クラウドファンディングには、年間で集められる資金が1億円未満という上限があります。政府はスタートアップ5か年計画の一環として、この上限を、1億円から5億円に拡大する検討を進めていますが、2024年7月現在ではまだ制約があります。
また、小口の株主が増えることで管理業務が複雑化し、事務負担が増加するリスクもあります。
※参考:金融庁 事務局説明資料
■ファンド型クラウドファンディングのデメリット
ファンド型クラウドファンディングでは、一定期間内に出資者へリターンや配当の提供が必要です。もしプロジェクトが成果を出せなかった場合、出資者からの信用を失い、今後の資金調達が難しくなるリスクが高まります。
例えば、期待されたリターンが実現しないことで投資家の信頼を失い、将来のプロジェクトに投資してもらえないというケースも考えられます。
リスク管理を徹底し、現実的な収益見込みを設定することが重要といえるでしょう。
クラウドファンディングのデメリットへの対策
クラウドファンディングのデメリットに対する、具体的な対策を解説します。自社での施策を検討する際にお役立てください。
■支援者にプロジェクトの魅力を具体的にアピールする
クラウドファンディングで資金調達をするには、いかに支援者を集めるかがポイントになります。そのため、支援者にプロジェクトの魅力を具体的にアピールすることを意識しましょう。
プロジェクトの全体像や解決したい課題を分かりやすく説明し、支援者にプロジェクトが成功するイメージを抱いてもらうことが必要です。さらにSNS広告など、プロジェクトの存在を広く知ってもらえるような施策も有用です。
支援者との信頼関係を築くことで、プロジェクトの成功率を高めることができます。
■余裕をもったスケジュールで進行する
クラウドファンディングの審査や資金集めには時間がかかるため、余裕を持って取り組むようにしましょう。
前提として、クラウドファンディングは数カ月先を見据えた新規アイデアの実現など、中長期的なプロジェクトに適している資金調達方法であり、直近の資金不足の解消に適した手段ではありません。
事業計画や資金繰り表をもとに資金が必要なタイミングを見極め、適切に活用することがクラウドファンディング成功の鍵を握るでしょう。
■プロジェクトの失敗も想定しておく
クラウドファンディングの全てのプロジェクトが成功するわけではありません。さまざまなリスクをおさえるために、失敗する可能性も念頭において準備をしておきましょう。
例えば、リスクを下げるためには、目標額に達した場合のみ資金を受け取れるAll or Nothing方式を選ぶことも有用です。また、金融型のクラウドファンディングでは、金利をできるだけおさえることが求められます。さらに、寄付型を選択すれば、支援者へのリターンの心配がないため、リスク管理がしやすくなります。
クラウドファンディングにも種類があるため、自社の状況や将来を見据えて適切な選択肢を検討していきましょう。
■事前に実用新案を申請しておく
クラウドファンディングでのアイデア盗用を防ぐためには、事前に実用新案を申請しておくことが有効です。実用新案とは、物品の形状や構造、組み合わせに関する考案を保護する権利であり、取得しておくことで盗用リスクを下げることができます。
事前にこのような権利を確保することで、クラウドファンディングのリスク管理がより強固になります。
クラウドファンディングの活用を検討したいケース
前述してきた通りクラウドファンディングにはさまざまなデメリットがありますが、多くのメリットがあることも事実です。特に次のようなケースでは、クラウドファンディグの検討価値が高いといえるでしょう。
- 商品やサービスの認知度を高めたい場合
- コミュニティや支持者の形成において、ファンベースを必要とするプロジェクトの場合
- 資金調達方法が限られている場合
クラウドファンディングはマーケティングやプロモーションの手段として有用です。そのため、認知度を高めたい場合に効果的な方法となります。例えば、超音波洗浄機「SONIC SOAK」は、購入型クラウドファンディングを活用することで、その機能性の高さと新規性で注目を集め、認知度を高めることに成功しました。
また、顧客の反応を測りたい場合やコミュニティや支持者を形成したい場合もクラウドファンディングが活用できます。例えば、「HUG COFFEE」は、新型コロナウイルスによる危機を乗り越えるためにクラウドファンディングを活用し、地域密着型の魅力を広めることで多くのファンを集客しました。公開1日目で目標金額を達成した成功事例です。
クラウドファンディングに応募する流れ
クラウドファンディングによる資金調達を行うには、大きく3ステップあります。
- 応募するプロジェクトの計画立て
- クラウドファンディングサービスの厳選
- 各サービスのフォームに従い応募
まず、プロジェクトの目的や内容、目標、そして支援者に向けた投資のメリットを明確にします。支援者がプロジェクトの内容を理解し、投資したくなるように、分かりやすい文章で計画を作成することが求められます。
次に、購入型や寄付型など、応募できる種類やかかる手数料、サポート体制などを考慮して活用するクラウドファンディングサービスを選びます。複数のプラットフォームサイトを比較し、自社のニーズに合致するサービスを選定します。
最後に、選んだクラウドファンディングサービスで会員登録を行い、必要な情報を入力します。審査に通過するとサイト上にプロジェクトを公開できるようになります。
クラウドファンディングのなかには、無料相談を提供しているサービスもあるため、事前にアドバイスを受けるのもよいでしょう。
クラウドファンディング以外での資金調達方法
クラウドファンディングで希望額全ての資金調達をできるとは限りません。リスクを分散させるためにも、クラウドファンディング以外の資金調達方法を併せて検討しておきましょう。
本章では、スタートアップ企業が長期的なプロジェクトに活用できる主な資金調達方法として、日本政策金融公庫からの融資と補助金・助成金を紹介します。
今回ご紹介する以外にも、選択肢となる資金調達方法は多岐に渡ります。スタートアップ企業向けの資金調達方法については、次の記事で詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
関連記事:
スタートアップ企業における資金調達のポイント|成長フェーズ別の資金調達方法も紹介
■日本政策金融公庫からの融資
日本政策金融公庫は、民間の金融機関の取り組みを補完することを目的に、日本の中小企業や小規模事業者、農林漁業者などを支援する政策金融機関です。
一般的に、民間の金融機関よりも金利が低い傾向があり、特定の条件を満たす場合には無利子・無担保の融資も活用可能です。
スタートアップ企業向けの融資も多いため、さまざまなケースで活用できる可能性が高い資金調達方法といえます。
公庫融資についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。具体的な融資も紹介していますので、お役立てください。
関連記事:
ベンチャーが融資を受ける方法とは?融資を活用するメリットとデメリット、注意点も解説
国庫を財源とする融資制度を解説!日本政策金融公庫とは
■事業者向けの補助金・助成金の申請
事業者向けの補助金や助成金は、入金が後払いになるものの、返済が不要というメリットがあります。さまざまな補助金や助成金があり、例えば、新規事業を対象とした「ものづくり補助金」や「事業再構築補助金」などがあります。
補助金や助成金の内容や応募条件は不定期に変更される可能性があるため、活用する際はその時点での最新情報を確認するようにしましょう。
クラウドファンディングは資金調達方法として有用な手段の1つ
クラウドファンディングには、活用する種類によりさまざまなデメリットがあります。自社の状況や目的にあった種類を選ぶこと、またリスクを分散できるような施策をとることがポイントとなるでしょう。
注意点もありますが、クラウドファンディングは資金調達方法として有用な手段でもあります。メリットとリスクを踏まえて、活用について検討することが大切です。
プロジェクトの資金を確保するには、資金調達を行うとともにキャッシュフローを見直したり、足元の資金繰り改善というアプローチも検討したいところです。
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