デットファイナンスのメリット・デメリットとは?資金調達の成功ポイントも紹介
デットファイナンスとは、金融機関から借入を行い、事業資金を調達する方法です。すぐに大きな資金が必要な際に役立ちますが、種類別の特徴を把握したうえで活用を検討することが重要となります。
本記事では、デットファイナンスの種類や特徴を詳しく解説します。また、メリットやデメリット、自社の状況に合った資金調達方法を選ぶためのポイントなども紹介しています。ぜひ最後までお読みください。
目次
デットファイナンスとは
■借入や債券の発行により資金調達する方法のこと
■エクイティファイナンスとの違い
■ベンチャーデットの需要も高まっている
デットファイナンスの種類と特徴
■公的な金融機関からの融資
■民間の金融機関によるプロパー融資
■自治体も関わる制度融資
■活用目的が事業に特化したビジネスローン
■自社で利息を決める社債
■専用サービス経由で融資のソーシャルレンディング
■無担保で発行するコマーシャルペーパー
■複数の金融機関が関わるシンジケートローン
デットファイナンスで資金調達をするメリット
■企業の信用力が高まる
■節税効果を期待できる
■株式発行より経営への影響が少ない
デットファイナンスで資金調達をするデメリット
■期日までに返済できないと債務不履行となる
■自己資本比率が下がる
デットファイナンスによる資金調達を成功させるポイント
■資金調達の目的や使途を明確に説明できるようにする
■返済が現実的な額を申請する
■融資の専門家へ事前に相談する
デットファイナンス以外の資金調達方法も検討してみよう
デットファイナンスは信用力も高められる資金調達方法
デットファイナンスとは
まず、デットファイナンスの概要とエクイティファイナンスとの違いを解説します。また、デットファイナンスとエクイティファイナンス両方の性質を持ち合わせた「ベンチャーデット」についても紹介します。
■借入や債券の発行により資金調達する方法のこと
デットファイナンスは、金融機関やほかの貸し手から直接資金を借り入れられる資金調達方法です。速やかに大きな資金を手に入れられますが、借りた金額には金利が課され、それに基づいて返済計画が設定されます。
また、借入金は帳簿上で「負債」として分類されます。そのため、デットファイナンスを選択する際は、自社の返済能力を慎重に評価し、将来のキャッシュフローが安定しているかを確認しましょう。計画的に活用すれば、企業成長のサポートとなり得ます。
■エクイティファイナンスとの違い
デットファイナンスとエクイティファイナンスは、それぞれ異なる資金調達方法です。エクイティファイナンスは株式を発行して資金を調達する手法で、返済義務はありません。事業の成長を通じて企業価値を高めることが出資者へのリターンとなります。
一方、デットファイナンスは金融機関から借入れを行い、その金額に対して金利を上乗せして返済する必要があります。帳簿上では、エクイティファイナンスで得た資金は自己資金として扱われ、デットファイナンスの場合は負債に分類されます。
■ベンチャーデットの需要も高まっている
最近、ベンチャーデットと呼ばれる新しい形式の融資が注目されています。デットファイナンスとエクイティファイナンスの特性を兼ね備えた方法で、特にスタートアップ企業にとって魅力的な方法です。
ベンチャーデットでは、金融機関が直接企業に融資を行い、返済の一環として転換社債や新株予約権が発行されます。ベンチャーデットの大きなメリットは、株式の希薄化を小さくおさえることができる点です。つまり、投資家と創業者の両方にとって有利な条件を提供しつつ、必要な資金を確保することが可能となります。
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デットファイナンスの種類と特徴
種類 | 特徴 | スタートアップ企業・ ベンチャー向け |
公的金融機関による融資 | ・返済期間が長く低金利 | 〇 |
プロパー融資 | ・民間の金融機関による直接融資 ・実績を求められる |
△ |
制度融資 | ・スタートアップ・ベンチャー企業の支援目的 ・経営サポートもあり |
〇 |
ビジネスローン | ・最短で即日融資もあり ・無担保や連帯保証人なしでも活用可能 |
〇 |
社債 | ・利息や返済期限は企業側が設定 ・公募と私募集に分かれる |
△(私募集なら〇) |
ソーシャルレンディング | ・インターネット上で不特定多数から資金調達 ・ソーシャルレンディングサービスを活用 |
〇 |
コマーシャルペーパー | ・企業が発行する無担保の手形 ・返済期間は1年未満 |
△ |
シンジケートローン | ・複数の金融機関が連携 ・大規模な融資が可能になる |
△ |
デットファイナンスにはさまざまな融資方法がありますが、どのような方法が自社に適しているのでしょうか。ここでは、それぞれの融資形式の特徴と、スタートアップ企業やベンチャーに特に適した方法を解説していきます。
■公的な金融機関からの融資
公的な金融機関としては、日本銀行、日本政策投資銀行、日本政策金融公庫、商工組合中央金庫などがあります。返済期間が長く設定されており、低金利で活用できます。
特に、無担保や無保証人で申し込みできる融資プランも提供されているため、初めてビジネスを始める方や担保を用意できない方にとっても、活用しやすい資金調達の選択肢となっています。
■民間の金融機関によるプロパー融資
民間の金融機関によるプロパー融資は、信用保証協会の保証を受けずに実施されるため、金融機関にとってのリスクが高まります。このため、融資の申し込みにあたっては、企業の財務状況や過去の実績が厳しく評価されることが一般的となっています。
また、融資を受ける際には不動産などの資産を担保として提供するケースがしばしば見られます。そうすることにより、金融機関は融資に伴うリスクを管理し、より安定した資金供給を行えるのです。
■自治体も関わる制度融資
自治体や民間の金融機関、信用保証協会が連携して提供する制度融資は、特に中小企業やスタートアップ企業を対象にしています。審査のハードルが低いため、スタートアップ企業でも活用しやすいでしょう。
加えて、事業の安定化や成長に向けた経営支援を受けられるケースもあります。また、自治体が関わる制度融資は、地域経済の活性化も目的としていることがあります。
■活用目的が事業に特化したビジネスローン
ビジネスローンは、その名の通り、活用目的が事業活動に限定されたローンです。事業資金の調達に特化しており、消費者金融を含む多様な金融機関が取り扱っています。
ビジネスローンの特徴の1つとして、融資までが迅速である点が挙げられます。申込みから融資までの期間が短く、最短で即日対応されるケースもあります。緊急の資金調達が必要な経営者にとっては重要な選択肢となるでしょう。
■自社で利息を決める社債
社債は、自社が設定した利率で資金を調達し、投資家に利息を上乗せして償還期間後に返済する金融手段です。不特定多数に向けて発行する公募債と、50人未満の限定された投資家に引き受けてもらう私募債の2種類があります。
公募債は広範な市場にアプローチでき、私募債はより狭い範囲での資金調達が可能になります。そのため、企業は自社の財務状況や市場環境に応じて、適した社債の形式を選択し、効率的に資本を調達できます。
■専用サービス経由で融資のソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングは、インターネットを介して不特定多数の投資家から資金を集める方法です。専用のソーシャルレンディングサービスを活用して、経営者と出資者を効果的にマッチングさせます。従来の金融機関を介さないため、より多くの人々が出資者として参加できる点が特徴の1つです。
資金を調達した企業や個人は、決められた条件と期間に基づき、融資を受けた資金をソーシャルレンディングサービスを通じて返済します。
■無担保で発行するコマーシャルペーパー
コマーシャルペーパーは、企業が市場に向けて独自に発行する無担保の短期手形です。通常、返済期間は1年未満と短く設定されており、無担保であるため、高い信用力が欠かせません。そのため、信用評価が低い企業には活用が難しくなる可能性があります。
■複数の金融機関が関わるシンジケートローン
シンジケートローンは、1つの金融機関が幹事となり、ほかの金融機関と協力して企業に資金を提供する方法です。契約の条件が参加する全金融機関に共通して適用されるため、企業はより大きな金額を安定して調達できます。
また、リスク分散の観点からも有利であり、1つの金融機関だけに依存するよりも金融の安定性が向上します。シンジケートローンは、特に大規模プロジェクトや国際的な事業展開を計画している企業に適した融資方法です。
デットファイナンスで資金調達をするメリット
デットファイナンスでの資金調達は信用力が上がる、節税効果があるなどのメリットがあります。その理由を確認していきましょう。
■企業の信用力が高まる
デットファイナンスによる返済実績が積み重ねられることで、企業の信用力が向上します。定期的に返済を行える企業は、金融機関によって事業が安定して利益を生み出している優良な顧客と見なされます。
企業の信用力が向上することは、将来的に更なる融資を受けやすくなるだけでなく、条件面で有利な金利での借入れが期待できるようになります。
■節税効果を期待できる
デットファイナンスでは、資本金が増えることなく、必要な資金を調達できるため、エクイティファイナンスと比べて法人税の負担増加がありません。さらに、負債として計上されることから、金利支払いが税務上の経費として扱われ、節税効果が期待できます。
実質的な資金調達コストをおさえることが可能になり、企業の財務効率を高められるでしょう。
■株式発行より経営への影響が少ない
デットファイナンスを活用することで、株式を発行することなく資金を調達できます。経営権の分散を防ぎ、現在の株主の持株比率に影響を与えることなく、経営の安定を保てます。配当金の負担も発生しません。
利息が決まっているため、返済計画も立てやすく、経営の自由度を保ちながら資金調達ができるでしょう。
デットファイナンスで資金調達をするデメリット
デットファイナンスは迅速な資金調達方法ですが、いくつかのデメリットが存在します。ここでは、特におさえておきたいリスク面について詳しく取り上げます。
■期日までに返済できないと債務不履行となる
デットファイナンスで調達した資金を事業に充てても、常に利益が保証されるわけではありません。返済が遅れると延滞金が発生し、経済的な負担が増大します。さらに、最悪の場合、資産の差し押さえや倒産に至る可能性もあります。そのため、デットファイナンスは返済計画を慎重に立てることが不可欠です。
■自己資本比率が下がる
デットファイナンスを活用すると、帳簿上で自己資本比率が低下します。自己資金率が下がると、金融機関や投資家から見て経営が不安定であると判断されがちです。
特に、自己資金率が低い企業は、追加の融資や公的な補助金・助成金の活用が難しくなることが考えられます。したがって、資金調達の選択肢が限られ、企業成長の機会が制限されることがあります。デットファイナンスは計画的に活用し、自己資本比率の健全性を維持しましょう。
デットファイナンスによる資金調達を成功させるポイント
デットファイナンスを成功させるためには、具体的に何をしたらよいのでしょうか。早期に資金を調達するため、これから紹介する方法を参考にしてみてください。
■資金調達の目的や使途を明確に説明できるようにする
資金調達を成功させるためには、「資金に余裕が欲しい」といった不明瞭な理由ではなく、具体的な資金の使途を示す必要があります。例えば、「仕入れを増やすため」や「営業強化のための人員増員」といった具体的な計画を説明し、これがどのように売上につながり、その結果として返済が見込めるのかを詳しく伝えましょう。
また、金融機関が納得できるような、詳細かつ実行可能な事業計画書の作成も欠かせません。融資の申し込みが承認される確率を高められます。
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■返済が現実的な額を申請する
赤字が続く状態では、多額の融資を申し込んでも審査が通過しないことがあります。融資額が増えるほど、金利の返済負担も増大します。したがって、自社の資金ではまかなえない範囲だけを申し込み、自社の投資ラウンドを意識し、事業のフェーズに合った額を検討しましょう。
申請の際は、事業の将来性や返済可能性を示せる材料を用意することが重要となります。例えば、事業計画書や資金繰り表、財務諸表、返済計画書などが有効です。
キャッシュフローを改善すれば融資調達額をおさえられる
キャッシュフローを改善すると、デットファイナンスによる資金調達額を効果的に減らせます。運転資金に余裕が出ることで、必要とされる融資額をおさえられるためです。
具体的には、売掛債権や債権の未入金額を減らすことが効果的でしょう。売上の入金サイクルを短縮し、手元資金を増やすことにつなげられます。さらに、広告費の4分割・後払いサービス「AD YELL(アドエール)」(※1)をはじめとする、支払いの分割サービスを活用することで、一時的な支出の負担を軽減し、キャッシュフローの改善を図ることもおすすめします。
このような戦略は、特にスタートアップや成長期の企業にとって、資金調達のリスクをおさえつつ、必要な投資に集中するための重要な手段となるでしょう。
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*「担保・連帯保証不要」は原則であり、場合によってはその限りではありません。ご了承くださいませ。
■融資の専門家へ事前に相談する
資金調達においては、専門家の意見を事前に聞くことも重要といえます。資金調達に関する無料の相談サービスを提供しているのは、日本政策金融公庫や中小機構、商工会議所や商工会などです。例えば、自社で検討した返済計画に問題点があるかどうかも相談できます。
また、税理士や会計士、経営コンサルティング会社での相談も可能ですが、こちらは有料となることが一般的です。返済能力や資金調達の方法に関して具体的なアドバイスをもらえます。専門家との事前相談は、計画的かつ効果的な融資申請へとつながるため、ぜひ視野に入れてみましょう。
デットファイナンス以外の資金調達方法も検討してみよう
デットファイナンスは多くの企業にとって一般的な資金調達方法ですが、特にスタートアップやベンチャー企業にとって、自社の事業フェーズや特定の状況に応じた資金調達方法を選ぶことが重要といえます。
資金調達にはデットファイナンス以外にも多くの選択肢があります。例えば、ベンチャーデット、ファクタリング、RBF(レベニューベースファイナンス)、クラウドファンディングなどです。さらに、「スタートアップ5か年計画」関連の政府や地方自治体の制度を活用することもいいでしょう。
それぞれ異なる利点と条件を持っているため、企業のニーズに適した方法を選ぶことが、成功への鍵となります。多様な資金調達方法を把握し、活用することで、自社の成長につなげましょう。
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デットファイナンスは信用力も高められる資金調達方法
デットファイナンスは、金融機関からの借入を通じて資金を調達する方法です。この方式では、元本に金利が上乗せされ、返済期間中に金利を支払う必要があります。デットファイナンスを活用するメリットとして、金融機関からの信用力向上や節税効果が期待できます。しかし、滞納するリスクや自己資金率の低下といったデメリットも把握しなくてはいけません。
デットファイナンスを活用する際は、デメリットを理解し、適切な対策を講じることが重要となります。具体的には、返済計画をしっかりと立て、事業のキャッシュフローを常に把握することが求められます。また、弊社の「AD YELL(アドエール)」を活用すると、キャッシュフローの改善も図れます。資金調達に関するリスクをおさえながら、事業の拡大や発展を目指していきましょう。
ADYELLを活用して、
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