ベンチャーデットとは?特徴やメリット、実際の調達事例などを紹介

2023.12.12

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ベンチャーデットとは?特徴やメリット、実際の調達事例などを紹介

エクイティファイナンス(以下、エクイティ)とデットファイナンス(以下、デット)の両方の性格を併せもつ資金調達手段として、近年注目を集めているベンチャーデット(英語:Venture Debt)。欧米では広く認知されており、日本でも大手銀行がベンチャーデットファンドを設立したり、大型調達がニュースになったりと市場規模は年々大きくなっています。

今回は、ベンチャーデットの概要や必要とされる背景、エクイティとの違いや提供・調達側の実例などを解説します。ベンチャーデットについて知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

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目次

ベンチャーデットとは?
■ベンチャーデットが必要とされる背景
■一般的融資やエクイティとの違い
■一般的な融資とベンチャーデットでは審査方法は異なる?
ベンチャーデットのメリット
■株式の希薄化を抑えられる
■資金の使いみちが比較的自由
■エクイティと比較して審査のプロセスが簡易的
ベンチャーデットのデメリット・注意点
■エクイティよりも調達できる金額が少ない
■金利がやや高め
ベンチャーデットが向いているスタートアップ企業のステージは?どのようなタイミングで利用するべき?
ベンチャーデットの提供側・調達側実例
■提供側の実例
■調達側の実例
まとめ

 

ベンチャーデットとは?

ベンチャーデットとは、エクイティ(資本)とデット(負債)の両方の性質をもった金融商品の総称

ベンチャーデットとは、エクイティ(資本)とデット(負債)の両方の性質をもった金融商品の総称です。ベンチャーデットではスタートアップ企業に対して金融機関が融資を行い、借り手側は転換社債や新株予約権(ワラント)を発行(付与)することで、金融機関のリスクを補う仕組みになっています。この資金調達は借入にあたるので、返済義務・返済期限があり、利息が発生することが特徴です。

また、詳しくは後述しますが、保有株式の希薄化(ダイリューション)をエクイティ調達より抑えつつ、成長資金を確保したいといったニーズに応えることも可能です。

借入にあたるので、返済義務・返済期限があり、利息が発生することが特徴

 

■ベンチャーデットが必要とされる背景

ベンチャーデットが必要とされる背景には、多様な資金調達方法へのニーズの高まりが考えられます。

例えば、日本では従来のスタートアップやベンチャー企業はVC調達などのエクイティや日本政策金融公庫・銀行など金融機関からの借入といったデットを活用することが一般的です。

株式の希薄化が起こるエクイティや、健全な財務状況が求められがちな一般的な融資などの性質上、「株式の希薄化をできるだけ抑えて、一時的に資金調達をしたい」「赤字継続のタイミングで、事業を成長させるための先行投資を行いたい」といった理由での調達は、従来の方法では困難であるケースも多く、これらのニーズを解決できる手法が求められるようになりました。

さらに、近年では新型コロナウイルス感染症の影響で、資金繰りの見直しを迫られる企業も増加しており、既存の資金調達手法を補えるベンチャーデットの需要増を後押ししているといえるでしょう。

ベンチャーデットの需要が高まってきた理由には、2022年頃からエクイティが厳しい状況に置かれていることも挙げられます。米国IT株の暴落に連鎖して日本の上場IT株も下落、結果としてIPO時の株価は下降しました。それに伴い、今までならば価値が付いていたスタートアップ企業の資金調達が難しくなりました。

エクイティでの資金調達が難しいとなると、デットでの資金調達が考えられます。しかし、スタートアップやベンチャー企業のビジネスモデルでは難しいケースもあり、相対的にエクイティではなくデットの需要が増加しているといえます。

ベンチャーデットという資金調達法が生まれた背景や経緯・現状などは、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。

関連記事:

“スタートアップ×融資”の最前線支援者に聞く、スタートアップ企業の資本政策”第3の選択肢”が今盛り上がる理由とは

 

■一般的融資やエクイティとの違い

ベンチャーデットと、金融機関などからの一般的な融資の違いに、貸付の判断基準が挙げられます。

例えば、一般的な融資では企業の財務状況や担保の有無によって、融資の可否や融資額が判断されることが通例です。一方、ベンチャーデットは、企業の将来的な可能性を基準として、貸付を行うかどうかが決められる傾向にあります。

また、スタートアップ企業は担保に新株予約権を発行するケースがあるので、株式の希薄化がやや起こりやすくなることも一般的な融資と異なる点です。

エクイティとの大きな違いは、返済義務と金利の有無です。ベンチャーデットで融資が行われた場合は返済義務と金利が生じます。

■一般的な融資とベンチャーデットでは審査方法は異なる?

上述したとおり、一般的な融資とベンチャーデットでは、貸付の判断基準が異なります。一般的な融資は、企業の資産・実績などから返済能力を査定して審査を行うことが多いといえます。一方、ベンチャーデットでは事業の将来性やポテンシャルが評価の対象となることが多い傾向です。

審査方法は、ベンチャーデットの事業によってさまざまですが、将来性やポテンシャルのほかにも、キャッシュフローの安定性や経営陣の経験・実績・業界の評価などが影響するケースもあります。

ベンチャーデットでは事業の将来性やポテンシャルが評価の対象となることが多い

 

そのほかの主な融資方法については、以下の記事でも解説しています。併せてご覧ください。

※関連記事:ベンチャーが融資を受ける方法とは?融資を活用するメリットとデメリット、注意点も解説

 

ベンチャーデットのメリット

エクイティで調達するケースと比較して、株式の希薄化を抑えられ、資金の使いみちの自由度が高い

ベンチャーデットは株式の希薄化を抑えられることや、資金の使用用途の自由さなどがメリットです。以下で、ベンチャーデットで資金調達をする利点を解説します。

■株式の希薄化を抑えられる

ベンチャーデットは、エクイティで調達するケースと比較して、株式の希薄化を抑えられることがメリットです。

エクイティは、返済義務がないものの、新たに株式を発行すると既存の株主が所持している分が希薄化してしまいます。一方で、例えば、ベンチャーデットで新株予約権付社債を額面の25%で引き受ければ、株式の希薄化率もほぼ同様の25%程度となり、エクイティと比べて希薄化の抑制が可能です。

■資金の使いみちが比較的自由

調達した資金の使いみちの自由度が高いことも、ベンチャーデットのメリットだといえるでしょう。

ベンチャーデットでの調達資金は、事業の成長だけでなく、運転資金、ランウェイ(企業がキャッシュ不足に陥るまでの残存期間)の確保、設備投資など、さまざまな目的に用いられます。

一方で、金融機関からの融資の場合は、審査時に使途を合意しているケースが多いので、一般的にベンチャーデットに比べて自由度が低くなる可能性が高いといえます。

事業計画と比べやや成長・拡大に時間を要する場合や、景気・市況が悪化したケース、エクイティが難しい状況・時期において、上記のような多様な使途でベンチャーデットを活用することは、スタートアップやベンチャー企業にとって、経営の柔軟性を確保する効果的なひとつの手段になるといえるでしょう。

エクイティと比較して審査のプロセスが簡易的

エクイティと比べて、ベンチャーデットの審査プロセスは簡易な場合が多いです。例えば、エクイティでの調達では、VCの投資担当者との面談や投資委員会が複数回に渡って開催されることが一般的です。

一方、ベンチャーデットはエクイティで求められる長期的な事業計画やマーケットの成長性などより、期限までに返済できるかどうかが重視されやすいので、デューデリジェンス(企業の経営状況・財務状況などを調査すること)の範囲も相対的に狭くなります。その結果、審査プロセスが簡易的になる傾向にあります。

審査のプロセスが簡易的であれば、ほかの調達方法と比べて融資までの期間が短くなる点もメリットだといえるでしょう。

株式の希薄化を抑え、多様な使途で資金を活用できるうえ、融資までの期間が短い

 

 

ベンチャーデットのデメリット・注意点

数百億円の大型調達をベンチャーデット単体で叶えるのは難しい

ベンチャーデットのデメリットは、エクイティよりも調達できる金額が少なく、金利がやや高い傾向にある点です。ここからは、ベンチャーデット調達を行ううえで注意しておきたいポイントについて解説します。

■エクイティよりも調達できる金額が少ない

ベンチャーデットはデットとエクイティの両方の性質をもっている商品であるので、特にエクイティと比べて調達金額は少ないケースがほとんどです。

例えば、エクイティのように、数百億円の大型調達をベンチャーデット単体で叶えるのは難しいといえるでしょう。

また、日本では、スタートアップ大国といえる米国と比較していまだベンチャーデットの事業者が少ないので、複数の事業者を利用してもエクイティより調達金額が多くなる可能性は低いといえそうです。現状、ベンチャーデットの市場規模はエクイティに比べて10〜20%で、その分調達できる上限額が少ないとも考えられます。

■金利がやや高め

銀行融資などのデットと比較すると、ベンチャーデットは金利が高い点もデメリットです。

スタートアップやベンチャー企業が調達しやすい審査基準を設けている点もあり、一般的な融資よりもリスクが高いことから、必然的に金利も高い設定になっているといえます。

また、融資の対象が大手企業ではなく、スタートアップやベンチャー企業で、事業の蓋然性がまだ見えにくいといった理由などから、ベンチャーデット事業者視点で完済されない可能性が一定あります。

未収リスクを見込んだうえで、融資事業として成立する条件を整えていかなければいけないので、リスク管理の観点から金利は高い傾向にあります。

 

ベンチャーデットのデメリットは、エクイティよりも調達できる金額が少なく、金利がやや高い

 

ベンチャーデットが向いているスタートアップ企業のステージは?どのようなタイミングで利用した方がよい?

ベンチャーデットの利用が向いているのは、アーリー以降

ベンチャーデットの利用がより向いているのは、スタートアップ企業の場合、アーリー以降のフェーズといえます。

ビジネスモデル・収益モデルが検証されている、いわゆるPMF(プロダクトマーケットフィット)している状態で、投資を行えば目的とする事業規模まで拡大できていることが、ある程度見えている状態であれば、よりベンチャーデットと相性のよい段階だといえるでしょう。

「“スタートアップ×融資”の最前線支援者に聞く、スタートアップ企業の資本政策”第3の選択肢”が今盛り上がる理由とは」によると、ベンチャーデットの利用に適している共通のポイントとして、以下のように語られています。

「共通していえるのは、髙瀬さんが先ほどおっしゃったようにシリーズB以降のフェーズであること。PMFをしていて、組織もできてきていて、ある程度の売上の伸びみたいなものが不可逆ななかで、エクイティもしっかりできていて、上場に向けて進む方向にほぼ間違いのない状態という会社の場合、デットでもインパクトのある資金調達ができる状態になる。」

逆に、まだ売上が立たないシード期のスタートアップ企業がベンチャーデットを利用するのは難しい可能性が高いといえます。ビジネスモデルができていない時期においては、企業の将来性・蓋然性が見えにくく、融資可否を判断するためのポイントが少ないためです。

 

ベンチャーデットの提供側・調達側実例

ベンチャーデットの利用件数は年々増加しており、大手銀行などの金融機関も商品を取り扱っている

ここからは、ベンチャーデットの提供側と調達側の実例を紹介します。ベンチャーデットの利用件数は年々増加しており、大手銀行などの金融機関も商品を取り扱っています。また、大型のベンチャーデット事例も増えてきていますので、モデルケースとして参考にしてみるのもよいでしょう。

■提供側の実例

上述したとおり、多くの大手銀行もベンチャーデットへの取り組みをはじめています。現在発表されているなかでも、以下のような事例があります。

みずほフィナンシャルグループ:100億円のベンチャーデットファンドを設立

りそな銀行:2023年10月にも100億円のベンチャーデットファンドを設立

あおぞら銀行:2026年3月期までにベンチャーデットなどを130件まで増加

静岡銀行:2027年度迄にベンチャーデット実行額1000億円を目指す

例えば、みずほフィナンシャルグループのベンチャーデットは、人工知能や脱炭素をテーマに掲げるスタートアップ企業を対象に、1社あたり2〜3億円程度を投資する計画が進んでいるそうです。

銀行以外では、SFDキャピタル・Siiibo証券(シーボ)・Fivotなども、スタートアップ向けのベンチャーデットを手掛けています。

また、新しい資金調達方法として、ベンチャーデット周辺のサービスも登場しています。例えば、弊社の「AD YELL(アドエール)」は、広告費を4分割して後払いできるサービスで、売上よりも先に媒体への広告費の支払いが発生するといった、キャッシュフローにおける悩みごとを解決することが可能です。

加えて、仕入費を4分割して後払いできる「STOCK YELL(ストックエール)」も提供しており、広告費・仕入費の負担を軽減して投資継続・強化から、事業成長へ繋げていただく攻めの一手として活用いただいています。

大手銀行等がベンチャーデットに取り組むとともに、類似サービスも数多く生まれていることから、スタートアップ企業が資金調達しやすい土壌は徐々に育ってきているといえるでしょう。

そのほか、資金調達先の具体例や注意点などは以下の記事でも確認いただけます。ぜひ、参考にしてみてください。

※関連記事:ベンチャー企業の資金調達方法とは?調達先の選択肢と資金調達時の注意点を徹底解説

※出典:
みずほキャピタル株式会社・株式会社みずほ銀行/株式会社 JUNTEN BIO への投資について~「みずほベンチャーデットファンド」の初号案件~
株式会社りそな銀行/「ベンチャーデット」の取扱開始について
株式会社あおぞら銀行/2022年度決算および新中期経営計画
株式会社しずおかフィナンシャルグループ/2022年度 決算の概要

■調達側の実例

ベンチャーデットの調達側事例としては、全国のスーパーマーケット・ドラッグストア事業者への小売向けECプラットフォーム「Stailer(ステイラー)」を提供する、株式会社10Xがメガバンク・地銀・ベンチャーデットファンドから行った15億円の調達が挙げられます。

借入先の金融機関は、静岡銀行・三井住友銀行・三菱UFJ銀行・山梨中央銀行・Fivot・SDFキャピタル・Yoiiで、静岡銀行・Fivot・SDFキャピタルは上述したベンチャーデットを積極的に手掛けています。

またコレクター向けトレカ専門店「magi」を運営するジラフは、Siiibo証券を活用してベンチャーデット調達に成功。調達のタイミングは、シリーズDラウンドの3rdクローズで行われており、エクイティと合わせて行われました。このように、エクイティ直後にベンチャーデットを実施するケースは多く見られます。

 

ベンチャーデットで攻めの資金調達を実現

ベンチャーデットで攻めの資金調達を実現

本記事では、ベンチャーデットの概要や成長している要因、メリット・デメリットや実際の調達事例などを解説しました。

今回紹介した弊社の「AD YELL(アドエール)」(※1)「STOCK YELL(ストックエール)」(※2)も、ベンチャーデットの周辺サービスとして、広告費・仕入費の資金確保からキャッシュフロー改善につながるサービスです。このような周辺サービス含め、ひとくちにベンチャーデットといってもさまざまな手法があります。

今まさに、多様な資金調達ニーズに応える選択肢は増えてきており、多様な選択肢をまず知り、事業フェーズ・目的・資金使途等の変数に応じてより最適な手段を選ぶ必要性が高まっています。

弊社では、「AD YELL」「STOCK YELL」の具体的な活用事例から、より適切なフェーズや他資金調達との整理等を紹介する無料相談も行っています。以下 実際のお客様のサービス利用前後のお声を含めた事例記事含め、ぜひお役立てください。

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