ベンチャーが融資を受ける方法とは?融資を活用するメリットとデメリット、注意点も解説
ベンチャー企業が活用できる資金調達方法はさまざまですが、融資もその一つとして挙げられます。
事業の成長、拡大のために、融資の活用を検討されているベンチャー企業にとって、自社に適した融資手段やその審査基準は気になる点ではないでしょうか。
本記事では、ベンチャー企業が融資を受けるメリットやデメリット、融資を受けるための具体的な方法、審査基準などを詳しく解説します。実際に融資を受けたベンチャー企業の事例も紹介します。融資プロセス全体の理解を深め、自社に合った資金調達戦略を検討する際にお役立てください。
目次
ベンチャー企業が活用できる融資とは
■融資とは
■融資とそのほかの資金調達方法の違い
ベンチャー企業が融資を受ける方法
■日本政策金融公庫
■銀行や信用金庫などの融資制度
■信用保証協会の融資支援制度
■自治体による制度融資
■ノンバンクのビジネスローン
■ベンチャーデット
ベンチャー企業が融資を受けるメリットとデメリット
ベンチャー企業が融資を受ける際の審査基準
■自己資金
■経験と信用
■返済能力と可能性
■資金使途
■事業の将来性やポテンシャル
ベンチャー企業が融資を受ける際の注意点
多様なファイナンスを活用し資金調達した事例
■株式会社ジラフ
融資の手段は慎重に検討して、自社のビジネスを拡大させよう
ベンチャー企業が活用できる融資とは
財政状況が不安定な傾向にあるべンチャー企業は、歴史が長く事業が安定している企業と比べ、金融機関からの融資を受けるハードルが高いといわれています。ベンチャー企業にとって、融資はどのように捉えられるのでしょうか。
■融資とは
融資とは、銀行や信用金庫などの金融機関から資金を借り受けるかたちで調達する方法のことです。融資の審査では、返済能力や信用度の高さが重視されますが、ベンチャー企業は歴史がまだ浅く売上や収益、資金力が乏しいことから、信用力が低く見られる傾向にあります。そのため、融資を受けるのが難しいという側面があります。
融資を活用する際は、ベンチャー企業に適した融資元の選択が重要といわれています。ベンチャー企業にとって、融資はハードルが高い傾向にありますが、政府の支援策や、ベンチャー企業への融資実績がある金融機関など、フェーズや目的に即した適切な融資元を理解することで、ベンチャー企業の初期フェーズでも資金調達の道が開かれます。
■融資とそのほかの資金調達方法の違い
ベンチャー企業が活用できる資金調達方法は、融資だけではありません。ほかにも、ベンチャーキャピタルからの出資や、クラウドファンディングの活用、補助金・助成金の活用などさまざまな方法が存在します。
どの手段が適しているかは、企業のフェーズや資金の必要性の度合、資金の提供条件などによって異なります。例えば、ベンチャーキャピタルは、企業の将来性や成長期待が高い未上場企業に対し出資を行うプレーヤーが多いことなどもあり、設立間もないスタートアップやベンチャー企業も資金調達できる可能性が高まります。
本記事では「融資」に焦点を当て、ベンチャー企業が融資を選択するメリットや注意点を解説します。
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ベンチャー企業の資金調達方法とは?調達先の選択肢と資金調達時の注意点を徹底解説
ベンチャー企業が融資を受ける方法
ベンチャー企業が融資を受ける方法は、複数あります。本章では、日本政策金融公庫やベンチャーデットなど、6つの融資手段を紹介します。
■日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、政府系の金融機関です。創業支援や新事業の育成を目的とした融資に力を入れており、金利が比較的低く、無担保・無保証での融資を受けられることから、ベンチャー企業にとって活用しやすい融資元の一つとして挙げられます。
日本政策金融公庫の融資制度には、「新事業育成資金」や「新株予約権付融資」、「挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)」の3種類があり、企業の成長段階や必要とする資金の種類に応じて選択できます。
融資申請では面談が重視されるため、面談に向けた資料や事業計画書などの資料を準備する必要があります。最短二週間程度で融資が決まります。
■銀行や信用金庫などの融資制度
銀行や信用金庫、信用組合、リース、信販会社などの民間金融機関からの融資は企業にとって一般的な資金調達方法ですが、以前は、ベンチャー企業が融資を受けられるケースは少ない傾向にありました。
しかし、近年はその傾向に変化が見られはじめています。静岡銀行の「しずぎんニュービジネス育成資金」のように、将来性や成長性を持つ新しいビジネスに対して、積極的に投融資を行う例も出てきており、ベンチャー企業への追い風となっているといえるでしょう。
このように、民間金融機関からの融資を適切に活用することで、新しい事業の立ち上げや、事業拡大のための資金を確保し、企業の成長を加速させることが可能になります。
■信用保証協会の融資支援制度
信用保証協会は、ベンチャー企業や中小企業が金融機関から融資を受けやすくするために、「信用保証」を提供する公的機関です。信用保証協会法に基づき設立されたもので、企業が金融機関からの融資を必要とする際、信用保証協会が保証人となりその企業の信用度を補います。具体的には、企業が信用保証協会に保証料を支払い、その保証のもと金融機関から融資を受けることができるように支援しています。
信用保証協会の融資支援制度を活用することで、特に資金調達が困難とされるベンチャー企業や中小企業も、必要な資金をより容易かつ迅速に確保することが可能になります。
■自治体による制度融資
ベンチャー企業が資金を調達しやすいように、「制度融資」を設けている自治体もあります。この制度で、実際に融資を行うのは金融機関です。つまり、自治体が金融機関と企業との橋渡し役となり、企業を支援する仕組みです。
ただし、制度融資は自治体、信用保証協会、金融機関の三者が連携して手続きを進めるため、融資が実行されるまでには約3カ月ほどかかることもあります。
ベンチャー企業にとって、低コストかつ比較的容易に資金調達できる制度融資は、有用な選択肢の一つといえるでしょう。
■ノンバンクのビジネスローン
ノンバンクからのビジネスローンは、信販会社や消費者金融など、銀行以外の金融機関が提供する事業資金専用の融資です。審査のハードルが比較的低く、申し込みから融資までのプロセスが迅速なため、できるかぎり早く資金を準備したいベンチャー企業にとって魅力的な選択肢になります。
しかし、場合により年率18%という高めの金利設定や、返済期間が短期に設定される傾向にあることから、活用する際は融資条件と企業の返済能力をよく見極めたうえで検討することが大切です。
■ベンチャーデット
ベンチャーデットは、エクイティ(資本)とデット(負債)の両方の性質を持つ金融商品で、特に、ベンチャーやスタートアップ企業が活用する方法です。ベンチャーデットでは、企業が金融機関から融資を受ける際に、転換社債や新株予約権(ワラント)を発行して、金融機関に対するリスクを軽減させます。
ベンチャーデットの大きな利点として、資金の使用目的に制限がないこと、また、そのほかの資金調達手段と比較して融資を受けるまでの時間が短いことが挙げられます。ベンチャーデットを活用することで、迅速に資金を確保することが可能になり、企業の成長機会を逃さずに資金を投入していくことができます。
なお、ベンチャーデットについては以下の記事もご参照ください。
関連記事:
ベンチャーデットとは?特徴やメリット、実際の調達事例などを紹介
ベンチャー企業が融資を受けるメリットとデメリット
ベンチャー企業が融資を活用するメリットとして、資金繰りが安定しやすくなる点が挙げられます。株式を発行して資金を調達する場合と比較して、経営権の希薄化を防ぐことができるでしょう。
一方、デメリットとしては、融資を受けることで返済義務が発生し、一定の金利負担が生じることが挙げられます。返済計画の見込みが甘いと将来的にキャッシュフローに悪影響を及ぼす可能性もあります。また、実際に融資を申し込む際、金融機関からの厳しい審査があるため、必ずしも希望する条件で融資を受けられるとは限りません。
また、融資元によってもメリットとデメリットが異なるため注意が必要です。
融資元 | メリット | デメリット |
日本政策金融公庫 | ・担保や保証無しで融資を受けられる ・民間の金融機関より返済期間が長い ・民間の金融機関と比べて金利が低い |
・綿密な計画書が必要で、作成の労力が大きい ・審査期間が長くかかる傾向がある ・支店や担当者は選べない |
銀行や信用金庫 | ・金利が低い ・企業の成長性を認めてもらえれば、多額の融資も可能 |
・手続きが複雑 ・融資を受けられるまでに時間がかかる |
信用保証協会 | ・担保や保証無しで融資を受けられる ・信用保証協会の保証が付くため金融機関からの融資が受けやすくなる |
・信用保証料がかかる ・審査期間が長い |
自治体による制度融資 | ・審査が通りやすい ・金利が低い ・アドバイスや相談などの経営サポートを受けられる場合がある |
・手続きに要する期間が長い ・自治体ごとで制度設計が異なる ・融資の上限金額が設定されている |
ノンバンクのビジネスローン | ・審査期間が短いため早く融資を受けられる ・ネット上だけで申し込みから融資を受けるまで完結できる ・借入の枠内で、繰り返し借入と返済ができる |
・銀行や信用金庫などと比べて金利が高い ・銀行や信用金庫などと比べて借入限度額が低い |
これらのメリットとデメリットを踏まえたうえで、自社の状況に合った資金調達方法を検討する必要があります。事業の成長段階や資金の用途、返済能力などを考慮し、融資プランを立てることが重要といえるでしょう。
当社では、スタートアップ企業の「資金調達」をテーマにしたオフラインイベントを開催しました。事業ステージ別のデットファイナンス手法などについても触れていますので、ぜひこちらの記事もご参照ください。
【イベントレポート】福岡発 スタートアップ企業×資金調達支援のプロが深堀る! 資金調達との向き合い方
ベンチャー企業が融資を受ける際の審査基準
ベンチャー企業が融資を受ける際の審査基準はどのようになっているのでしょうか。融資の審査の際に重視される要素を紹介します。
■自己資金
ベンチャー企業が融資を受ける際に重視される要素の一つが、自己資金の割合です。これは企業がスタートするために必要な資金全体に対して、経営者自身が用意できる資金の比率を指します。
通常、融資の審査過程では経営者の預金通帳の提出が求められることが多く、自己資金の割合が低い、あるいは自己資金が全くない場合には、融資を受けることが難しくなります。審査をスムーズに通過するためには、自己資金の割合を高めに保ちましょう。実際に融資を申し込む際には、希望する融資額の約3分の1相当の自己資金を準備しておくことが求められます。
また、すでに一定の借入金がある場合は、それを自己資金として計算することはできないため、審査において不利になる可能性が高いことも念頭においておきましょう。
■経験と信用
融資の審査では、計画しているビジネスに関わる業務の経験がどの程度あるかも重要な判断基準となります。事業内容がこれまでの経験と直接結びついている場合は、プラスに働くことが多い傾向にあります。まったく新しい分野に挑戦する場合、審査がより厳しくなる可能性が高いとされています。
さらに、審査においては経営者の個人信用情報も重要だといわれています。過去の借入履歴、税金の滞納状況、支払いトラブルの有無、光熱費や携帯電話料金などの日常生活の支払いが適切に行われているかどうかもチェックされています。
そのため、融資による資金調達を成功させるためには、事業に関連する業務経験の豊富さと、健全な信用情報を保つことが重要だといえるでしょう。
■返済能力と可能性
手がけているビジネスが、将来的に利益を生み出し計画通りに返済できるかどうか、つまり返済能力と可能性は重要な審査基準です。評価にあたっては、事業計画書に記載されている利益の算出が現実的か、資金繰りが可能かをチェックされます。
返済能力とビジネスの成長性を金融機関に認めてもらうためには、充実した事業計画書を準備しておくことが必要です。計画書には創業の動機、経営者のプロフィール、具体的な事業内容、既存の取引先などを詳細に記載し、ビジネスプランの実現性をしっかりと示すことが求められます。事業計画書における記載ミスや計算誤りは、審査においてマイナスの影響を与えかねないため、作成には十分な注意を払うことが大切です。
以下の記事では、ベンチャーやスタートアップ企業が事業計画書を作成するポイントについて詳しく解説しています。あわせてお読みいただくことをおすすめします。
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【事業フェーズ別】スタートアップの事業計画の作成ポイント|事業計画書で重要な要素とは
■資金使途
事業計画書に記載された資金の使い道が、適切であるかどうかも審査対象となります。金融機関は、融資する資金が事業の発展に効果的に使われるかどうかを評価します。そのため、融資がなぜ必要なのか、具体的な数値を用いながら示すことが求められます。例えば、オフィス物件を借りるための融資なら、家賃や入居にかかる費用が明記された書類なども提出する必要があるでしょう。
このように、資金使途に根拠を持たせ、事業での融資活用がなぜ必要なのかを具体的に伝えることが、審査を通過するポイントになるでしょう。
■事業の将来性やポテンシャル
一般的な融資では、資産や過去の実績が重視されますが、ベンチャー企業の場合は、事業の将来性やポテンシャルが重要項目となります。革新的なアイデアや、市場での成長性が高いビジネスプランを持つ企業は、将来の収益性への期待値を高く評価してもらえる傾向にあります。
融資における審査基準はベンチャーデットの事業によってさまざまですが、キャッシュフローの安定性や事業に関連した業務経験の有無、さらには業界内での評判なども評価対象となるケースもあります。
このように、ベンチャー企業への融資では、現在の資産や業績よりも、未来へのビジョンとそれを実現するための潜在能力の有無が評価されます。融資による資金調達を成功させるためには、評価項目を踏まえた事業計画書の作成や説明を行うことがポイントといえるでしょう。
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【事業フェーズ別】スタートアップの事業計画の作成ポイント|事業計画書で重要な要素とは
ベンチャー企業が融資を受ける際の注意点
融資を活用するにあたって、着金されるまでに時間がかかる可能性が高いことを考慮しておきましょう。ベンチャー企業が融資を受けるためには、事業計画書の作成から必要書類の準備、申請手続き、そして審査を経て、融資が承認されるまで、数週間から数カ月かかることも珍しくありません。
融資の種類や金融機関によって、実際に資金を手にできるまでの期間は大きく異なりますが、どの融資でも即座に資金を手にすることはできません。急ぎで資金が必要な場合は、ファクタリング(売掛債権を売却し資金を得る手段)など他の資金調達方法も検討してみましょう。
資金調達の目的が広告費や仕入費にあるのであれば、BNPL※1を活用する手段もあります。例えば、バンカブルの広告費の4分割・後払いサービス「AD YELL(アドエール)※2」や、仕入費の4分割・後払いサービス「STOCK YELL(ストックエール)※3」では、キャッシュフローの圧迫を軽減し、早期に・簡単に資金確保へとつながり、先行投資が可能になります。
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どの資金調達方法を選択する場合でも、期間に余裕を持って進めることが大切です。特に、融資は準備する書類も多いため、しっかりと計画を練るようにしましょう。
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ベンチャー企業の資金調達方法とは?調達先の選択肢と資金調達時の注意点を徹底解説
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多様なファイナンスを活用し資金調達した事例
ベンチャー企業が融資や出資など多様な手段で資金調達を成功させた事例を紹介します。
■株式会社ジラフ
株式会社ジラフは、買取比較サイト「ヒカカク!」を始めとする複数のウェブサービスや、トレカ・スニーカーフリマアプリ「magi」、さらには実店舗を含むさまざまなビジネスを展開しています。株式会社ジラフでは、Siiibo証券を利用してベンチャーデットを調達し、シリーズDラウンドで約20億円の資金を集めることに成功しました。その他ベンチャーキャピタル(VC)やコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)など多様なファイナンスを活用した資金調達を実施されてきました。
ベンチャー企業が融資を受けるためには、事業の多角化や将来性を示すことが重要であり、多様な資金調達の選択肢を検討することで、大きな成長のチャンスをつかめることが伺えます。
融資の手段は慎重に検討して、自社のビジネスを拡大させよう
ベンチャー企業の成長には資金調達が欠かせません。ベンチャーデットなど、融資自体の種別の多様化や提供するプレーヤーも増えていますので、資金調達方法の選択肢として理解を深める必要性が増しているでしょう。融資を受ける際のメリットとデメリットは、選択する方法によって異なります。そのため、企業の現状や将来計画に合った資金調達方法を逆引きして選ぶことが大切です。
2022年11月に決定された「スタートアップ育成5か年計画」では、事業成長担保権など新しい資金調達方法の創設が進められています。資金調達においてベンチャー企業やスタートアップを取り巻く環境も変わってきているため、最新の動向にも注目しながら自社に適切な方法を選択し、事業の成功につなげていきましょう。
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