ベンチャー企業向け融資一覧|審査のポイントや創業期に活用できるスタートアップ融資も紹介
ベンチャー企業が活用できる資金調達方法はさまざまですが、融資もその一つとして挙げられます。
事業の成長、拡大のために、融資の活用を検討されているベンチャー企業にとって、自社に適した融資手段やその審査基準は気になる点ではないでしょうか。
本記事では、ベンチャー企業が融資を受けるメリットやデメリット、融資を受けるための具体的な方法、審査基準などを詳しく解説します。実際に融資を受けたベンチャー企業の事例も紹介します。融資プロセス全体の理解を深め、自社に合った資金調達戦略を検討する際にお役立てください。
目次
ベンチャー企業が活用できる融資とは
■融資とは
■融資とそのほかの資金調達方法の違い
ベンチャー企業が融資を受ける方法
■日本政策金融公庫
■銀行や信用金庫などの融資制度
■信用保証協会の融資支援制度
■自治体による制度融資
■ノンバンクのビジネスローン
■ベンチャーデット
ベンチャー企業が融資を受けるメリットとデメリット
ベンチャー企業が融資を受ける際の審査基準
■自己資金
■経験と信用
■返済能力と可能性
■資金使途
■事業の将来性やポテンシャル
ベンチャー企業が融資を受ける際の注意点
多様なファイナンスを活用し資金調達した事例
■株式会社ジラフ
【状況別】ベンチャー・スタートアップ企業の融資の選択肢
■「初期フェーズ」でも活用できるスタートアップ融資は?
■「債務超過」にあるベンチャー・スタートアップ企業でも活用できる融資は?
■「迅速な資金調達を行いたい」ときに活用できる融資は?
融資の手段は慎重に検討して、自社のビジネスを拡大させよう
ベンチャー企業が活用できる融資とは
財政状況が不安定な傾向にあるべンチャー企業は、歴史が長く事業が安定している企業と比べ、金融機関からの融資を受けるハードルが高いといわれています。ベンチャー企業にとって、融資はどのように捉えられるのでしょうか。
■融資とは
融資とは、銀行や信用金庫などの金融機関から資金を借り受けるかたちで調達する方法のことです。融資の審査では、返済能力や信用度の高さが重視されますが、ベンチャー企業は歴史がまだ浅く売上や収益、資金力が乏しいことから、信用力が低く見られる傾向にあります。そのため、融資を受けるのが難しいという側面があります。
融資を活用する際は、ベンチャー企業に適した融資元の選択が重要といわれています。ベンチャー企業にとって、融資はハードルが高い傾向にありますが、政府の支援策や、ベンチャー企業への融資実績がある金融機関など、フェーズや目的に即した適切な融資元を理解することで、ベンチャー企業の初期フェーズでも資金調達の道が開かれます。
■融資とそのほかの資金調達方法の違い
ベンチャー企業が活用できる資金調達方法は、融資だけではありません。ほかにも、ベンチャーキャピタルからの出資や、クラウドファンディングの活用、補助金・助成金の活用などさまざまな方法が存在します。
どの手段が適しているかは、企業のフェーズや資金の必要性の度合、資金の提供条件などによって異なります。例えば、ベンチャーキャピタルは、企業の将来性や成長期待が高い未上場企業に対し出資を行うプレーヤーが多いことなどもあり、設立間もないスタートアップやベンチャー企業も資金調達できる可能性が高まります。
本記事では「融資」に焦点を当て、ベンチャー企業が融資を選択するメリットや注意点を解説します。
関連記事:
ベンチャー企業の資金調達方法とは?調達先の選択肢と資金調達時の注意点を徹底解説
ベンチャー企業が活用できる融資一覧
ベンチャー企業が融資を受ける方法は、複数あります。本章では、日本政策金融公庫やベンチャーデットなど、ベンチャー企業が検討できる融資手段を紹介します。
融資制度の内容や条件などは、融資元により変わります。また、不定期に変更される可能性もあるため、活用を検討する時点の最新情報を確認するようにしましょう。
■日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、政府系の金融機関です。創業支援や新事業の育成を目的とした融資に力を入れており、金利が比較的低く、無担保・無保証での融資を受けられることから、ベンチャー企業にとって活用しやすい融資元の一つとして挙げられます。
日本政策金融公庫の融資制度には、さまざまな種類があり、企業の成長段階や必要とする資金の種類に応じて選択できます。
融資申請では面談が重視されるため、面談に向けた資料や事業計画書などの資料を準備する必要があります。最短2週間程度で融資が決まります。
日本政策金融公庫が実施している融資制度については、こちらの記事で詳しく解説しています。制度の概要や活用のメリットも紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。
関連記事:
国庫を財源とする融資制度を解説!日本政策金融公庫とは
新事業育成資金
「新事業育成資金」は、特にベンチャー企業やスタートアップ企業を支援するために設けられた融資制度です。新規事業や革新的な事業の育成を目的としています。
対象者 | 高い成長性が見込まれる新たな事業を行う方であって、次の1~3のすべてに当てはまる方
1.新たな事業を事業化させておおむね7年以内の方 |
融資限度額 | 直接貸付 7億2千万円 |
返済期間 | 設備資金 20年以内(うち据置期間5年以内) 運転資金 7年以内(うち据置期間2年以内) |
※参照:新事業育成資金
新株予約権付融資(スタートアップ支援資金)
「新株予約権付融資」は、融資と同時に公庫が新株予約権を取得することにより、無担保で資金を供給する制度です。株式公開計画があるベンチャー企業を対象にしています。
対象者 | 高い成長性が見込まれる新たな事業に取組み、株式公開を目指すベンチャー企業 |
融資限度額 | 融資及び社債の合計の限度は20億円
※ただし、取得する新株予約権は、原則として、新株予約権を行使したものとして算出される株式数が、発行済株式総数を超えないものとする |
返済期間 | 20年以内(うち据置期間10年以内) |
新事業活動促進資金
「新事業活動促進資金」は、中小企業やベンチャー企業、スタートアップ企業が新規事業の展開や既存事業の拡大、革新的な事業活動を行う際の資金調達を支援するための融資制度です。
対象者 | 1.「経営革新計画」の承認を受けた方 2.「基盤確立事業実施計画」の認定を受けた方 3.「経営力向上計画」の認定を受けた方 4.中小企業等経営強化法に基づく中小企業等の経営強化に関する基本方針に定める新たな取り組みを行い、2年間で4%以上の付加価値額の伸び率が見込まれる方 5.技術・ノウハウ等に新規性がみられる方 6.上記1~5に該当しない方で、新たに第二創業(経営多角化、事業転換、新市場進出)を図る方または第二創業後おおむね5年以内の方 |
融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
返済期間 | 設備資金:20年以内(うち据置期間2年以内) 運転資金:7年以内(うち据置期間2年以内) |
※参照:新事業活動促進資金
企業活力強化貸付
「企業活力強化貸付」は、中小企業やベンチャー企業、スタートアップ企業が直面する経営課題に対応し、事業の持続的な成長や競争力強化を図るための資金調達を支援する融資制度です。
対象者 | 1.商業振興関連 次のいずれかの業種の事業を営む方 (1)卸売業 (2)小売業 (3)飲食サービス業 (4)サービス業 (5)不動産賃貸業 2.支払条件改善関連 取引先に対する支払条件の改善に取り組む方 3.キャッシュレス決済関連 卸売業、小売業、飲食サービス業、サービス業または道路旅客運送業を営む方であって、キャッシュレス決済の導入により生産性の向上を図る方 4.取引環境改善関連 親事業者の生産拠点の閉鎖・縮小、発注内容の見直しまたは脱炭素化の取組みの要請に伴い、自らの取引環境の改善に取り組む方 5.パートナーシップ構築宣言関連 「パートナーシップ構築宣言」を公表している方 6.流通関連 輸送、保管、荷さばき、流通加工その他の物資の流通に係る業務を行う方またはこれらの方を構成員とする事業協同組合等 |
融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
返済期間 | 設備資金:20年以内(うち据置期間2年以内) 運転資金:7年以内(うち据置期間2年以内) |
※参照:企業活力強化貸付
生活衛生貸付
「生活衛生貸付」は、主に生活衛生関係業種(飲食業、理美容業、クリーニング業、旅館業など)を営む中小企業や個人事業主を対象とした融資制度です。
対象者 | 生活衛生関係の事業を営む方および理容学校・美容学校を経営する方 |
融資限度額 | ・飲食店営業、喫茶店営業、食肉販売業、食鳥肉販売業、氷雪販売業、理容業、美容業、その他公衆浴場業:7,200万円 ・一般公衆浴場業:3億円(2施設以上の場合4億8,000万円) ・旅館業:4億円 ・興行場営業、サウナ営業:2億円 ・クリーニング業:1億2,000万円 |
返済期間 | 13年以内(うち据置期間1年以内、返済期間が7年超の場合2年以内)[一般公衆浴場業は30年以内] |
※参照:生活衛生貸付
振興事業貸付
「振興事業貸付」は、中小企業や小規模事業者が持続的な成長や競争力の強化を図るための資金調達を支援する融資制度です。
対象者 | 生活衛生関係の事業を営む方であって、振興計画の認定を受けている生活衛生同業組合の組合員 |
融資限度額 | 【設備資金】 ・飲食店営業、喫茶店営業、食肉販売業、食鳥肉販売業、 氷雪販売業、理容業、美容業:1億5,000万円 ・一般公衆浴場業(一般貸付とは別枠):1億5,000万円 ・旅館業、興行場営業:7億2,000万円 ・クリーニング業:3億円【運転資金】 ・全業種:5,700万円 |
返済期間 | 設備資金:20年以内(うち据置期間2年以内) 運転資金:7年以内(うち据置期間2年以内) |
※参照:振興事業貸付
挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)
「挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)」は、ベンチャー企業やスタートアップ企業、新事業展開・海外展開・事業再生等に取り組む企業等の財務体質強化や、ベンチャーキャピタル・民間金融機関などからの資金調達の円滑化を支援する融資制度です。
元本は5年1カ月以上先の決まったタイミングに一括で返済することになります。
対象者 | 次の1および2を満たす法人または個人企業
【1.融資制度】 【2.その他条件】 |
融資限度額 | 7,200万円(別枠) |
返済期間 | 5年1カ月以上20年以内 |
新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付(新型コロナ対策資本性劣後ローン)
「新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付」は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた中小企業やベンチャー企業、スタートアップ企業の資本を強化し、事業の再建や成長を支援するために設けられた融資制度です。
「挑戦支援資本強化特例制度」と同じく、元本は決められた返済日に一括で支払うことになります。
対象者 | 新型コロナウイルス感染症の影響を受けた法人または個人企業の方であって、次のいずれかに該当する方
1.J-Startupプログラムに選定された方または独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合から出資を受けた方 |
融資限度額 | 7,200万円(別枠) |
返済期間 | 5年1カ月、7年、10年、15年、20年のいずれか |
※参照:新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付(新型コロナ対策資本性劣後ローン)
■銀行や信用金庫などの融資制度
銀行や信用金庫、信用組合、リース、信販会社などの民間金融機関からの融資は企業にとって一般的な資金調達方法ですが、以前は、ベンチャー企業が融資を受けられるケースは少ない傾向にありました。
しかし、直近はその傾向に変化が見られはじめています。静岡銀行の「しずぎんニュービジネス育成資金」のように、将来性や成長性を持つ新しいビジネスに対して、積極的に投融資を行う例も出てきており、ベンチャー企業への追い風となっているといえるでしょう。
このように、民間金融機関からの融資を適切に活用することで、新しい事業の立ち上げや、事業拡大のための資金を確保し、企業の成長を加速させることが可能になります。
■信用保証協会の融資支援制度
信用保証協会は、ベンチャー企業や中小企業が金融機関から融資を受けやすくするために、「信用保証」を提供する公的機関です。信用保証協会法に基づき設立されたもので、企業が金融機関からの融資を必要とする際、信用保証協会が保証人となりその企業の信用度を補います。具体的には、企業が信用保証協会に保証料を支払い、その保証のもと金融機関から融資を受けることができるように支援しています。
信用保証協会の融資支援制度を活用することで、特に資金調達が困難とされるベンチャー企業や中小企業も、必要な資金をより容易かつ迅速に確保することが可能になります。
流動資産担保融資保証制度(ABL保証)
「流動資産担保融資保証制度(ABL保証)」は、企業が持つ売掛債権や棚卸資産などの流動資産を担保にして融資を受ける際、その返済を保証する制度です。不動産担保に過度に依存しない保証への取り組みとして設けられました。
保証限度額 | 2億円(金融機関からの借入限度額は2億5千万円) ※保証割合80%の部分保証 |
保証期間 | 根保証:1年間 個別保証:1年以内 |
担保 | 流動資産(売掛債権および棚卸資産)のみ ただし、個別保証の場合は、売掛債権のみ |
小口零細企業保証制度
「小口零細企業保証制度」は、金融環境の変化による影響を受けやすい小規模企業者を対象として創設された保証制度です。ベンチャーやスタートアップを含む小規模企業の、比較的少額の資金調達を支援します。
対象者 | 以下の中小企業信用保険法第2条第3項に定める小規模企業者
(1)常時使用する従業員の数が20人(商業・サ-ビス業は5人)以下で、中小企業信用保険法施行令第1条第1項に定める業種に属する事業(以下「特定事業」という。)を行う事業者(下記(2)に掲げる事業者を除く。) |
保証限度額 | 72,000万円(既存の信用保証協会保証付融資残高と合計して2,000万円以内) |
保証期間 | 各信用保証協会が定める保証期間 |
担保 | 原則として不要 |
保証料率 | 各信用保証協会が定める保証料率 |
※参照:小口零細企業保証制度
■自治体による制度融資
ベンチャー企業が資金を調達しやすいように、「制度融資」を設けている自治体もあります。この制度で、実際に融資を行うのは金融機関です。つまり、自治体が金融機関と企業との橋渡し役となり、企業を支援する仕組みです。
ただし、制度融資は自治体、信用保証協会、金融機関の三者が連携して手続きを進めるため、融資が実行されるまでには約3カ月ほどかかることもあります。
ベンチャー企業にとって、低コストかつ比較的容易に資金調達できる制度融資は、有用な選択肢の一つといえるでしょう。
■ノンバンクのビジネスローン
ノンバンクからのビジネスローンは、信販会社や消費者金融など、銀行以外の金融機関が提供する事業資金専用の融資です。審査のハードルが比較的低く、申し込みから融資までのプロセスが迅速なため、できるかぎり早く資金を準備したいベンチャー企業にとって魅力的な選択肢になります。
しかし、場合により年率18%という高めの金利設定や、返済期間が短期に設定される傾向にあることから、活用する際は融資条件と企業の返済能力をよく見極めたうえで検討することが大切です。
■ベンチャーデット
ベンチャーデットは、エクイティ(資本)とデット(負債)の両方の性質を持つ金融商品で、特に、ベンチャーやスタートアップ企業が活用する方法です。ベンチャーデットでは、企業が金融機関から融資を受ける際に、転換社債や新株予約権(ワラント)を発行して、金融機関に対するリスクを軽減させます。
ベンチャーデットの大きな利点として、資金の使用目的に制限がないこと、また、そのほかの資金調達方法と比較して融資を受けるまでの時間が短いことが挙げられます。ベンチャーデットを活用することで、迅速に資金を確保することが可能になり、企業の成長機会を逃さずに資金を投入していくことができます。
なお、ベンチャーデットについては以下の記事もご参照ください。
関連記事:
ベンチャーデットとは?特徴やメリット、実際の調達事例などを紹介
ベンチャー企業が融資を受けるメリットとデメリット
ベンチャー企業が融資を活用するメリットとして、資金繰りが安定しやすくなる点が挙げられます。株式を発行して資金を調達する場合と比較して、経営権の希薄化を防ぐことができるでしょう。
一方、デメリットとしては、融資を受けることで返済義務が発生し、一定の金利負担が生じることが挙げられます。返済計画の見込みが甘いと将来的にキャッシュフローに悪影響を及ぼす可能性もあります。また、実際に融資を申し込む際、金融機関からの厳しい審査があるため、必ずしも希望する条件で融資を受けられるとは限りません。
また、融資元によってもメリットとデメリットが異なるため注意が必要です。
融資元 | メリット | デメリット |
日本政策金融公庫 | ・担保や保証無しで融資を受けられる ・民間の金融機関より返済期間が長い ・民間の金融機関と比べて金利が低い |
・綿密な計画書が必要で、作成の労力が大きい ・審査期間が長くかかる傾向がある ・支店や担当者は選べない |
銀行や信用金庫 | ・金利が低い ・企業の成長性を認めてもらえれば、多額の融資も可能 |
・手続きが複雑 ・融資を受けられるまでに時間がかかる |
信用保証協会 | ・担保や保証無しで融資を受けられる ・信用保証協会の保証が付くため金融機関からの融資が受けやすくなる |
・信用保証料がかかる ・審査期間が長い |
自治体による制度融資 | ・審査が通りやすい ・金利が低い ・アドバイスや相談などの経営サポートを受けられる場合がある |
・手続きに要する期間が長い ・自治体ごとで制度設計が異なる ・融資の上限金額が設定されている |
ノンバンクのビジネスローン | ・審査期間が短いため早く融資を受けられる ・ネット上だけで申し込みから融資を受けるまで完結できる ・借入の枠内で、繰り返し借入と返済ができる |
・銀行や信用金庫などと比べて金利が高い ・銀行や信用金庫などと比べて借入限度額が低い |
これらのメリットとデメリットを踏まえたうえで、自社の状況に合った資金調達方法を検討する必要があります。事業の成長段階や資金の用途、返済能力などを考慮し、融資プランを立てることが重要といえるでしょう。
弊社では、スタートアップ企業の「資金調達」をテーマにしたオフラインイベントを開催しました。事業ステージ別のデットファイナンス手法などについても触れていますので、ぜひこちらの記事もご参照ください。
【イベントレポート】福岡発 スタートアップ企業×資金調達支援のプロが深堀る! 資金調達との向き合い方
ベンチャー企業が融資を受ける際の審査基準
ベンチャー企業が融資を受ける際の審査基準はどのようになっているのでしょうか。融資の審査の際に重視される要素を紹介します。
■自己資金
ベンチャー企業が融資を受ける際に重視される要素の一つが、自己資金の割合です。これは企業がスタートするために必要な資金全体に対して、経営者自身が用意できる資金の比率を指します。
通常、融資の審査過程では経営者の預金通帳の提出が求められることが多く、自己資金の割合が低い、あるいは自己資金が全くない場合には、融資を受けることが難しくなります。審査をスムーズに通過するためには、自己資金の割合を高めに保ちましょう。実際に融資を申し込む際には、希望する融資額の約3分の1相当の自己資金を準備しておくことが求められます。
また、すでに一定の借入金がある場合は、それを自己資金として計算することはできないため、審査において不利になる可能性が高いことも念頭においておきましょう。
■経験と信用
融資の審査では、計画しているビジネスに関わる業務の経験がどの程度あるかも重要な判断基準となります。事業内容がこれまでの経験と直接結びついている場合は、プラスに働くことが多い傾向にあります。まったく新しい分野に挑戦する場合、審査がより厳しくなる可能性が高いとされています。
さらに、審査においては経営者の個人信用情報も重要だといわれています。過去の借入履歴、税金の滞納状況、支払いトラブルの有無、光熱費や携帯電話料金などの日常生活の支払いが適切に行われているかどうかもチェックされています。
そのため、融資による資金調達を成功させるためには、事業に関連する業務経験の豊富さと、健全な信用情報を保つことが重要だといえるでしょう。
■返済能力と可能性
手がけているビジネスが、将来的に利益を生み出し計画通りに返済できるかどうか、つまり返済能力と可能性は重要な審査基準です。評価にあたっては、事業計画書に記載されている利益の算出が現実的か、資金繰りが可能かをチェックされます。
返済能力とビジネスの成長性を金融機関に認めてもらうためには、充実した事業計画書を準備しておくことが必要です。計画書には創業の動機、経営者のプロフィール、具体的な事業内容、既存の取引先などを詳細に記載し、ビジネスプランの実現性をしっかりと示すことが求められます。事業計画書における記載ミスや計算誤りは、審査においてマイナスの影響を与えかねないため、作成には十分な注意を払うことが大切です。
以下の記事では、ベンチャーやスタートアップ企業が事業計画書を作成するポイントについて詳しく解説しています。あわせてお読みいただくことをおすすめします。
関連記事:
【事業フェーズ別】スタートアップの事業計画の作成ポイント|事業計画書で重要な要素とは
■資金使途
事業計画書に記載された資金の使い道が、適切であるかどうかも審査対象となります。金融機関は、融資する資金が事業の発展に効果的に使われるかどうかを評価します。そのため、融資がなぜ必要なのか、具体的な数値を用いながら示すことが求められます。例えば、オフィス物件を借りるための融資なら、家賃や入居にかかる費用が明記された書類なども提出する必要があるでしょう。
このように、資金使途に根拠を持たせ、事業での融資活用がなぜ必要なのかを具体的に伝えることが、審査を通過するポイントになるでしょう。
■事業の将来性やポテンシャル
一般的な融資では、資産や過去の実績が重視されますが、ベンチャー企業の場合は、事業の将来性やポテンシャルが重要項目となります。革新的なアイデアや、市場での成長性が高いビジネスプランを持つ企業は、将来の収益性への期待値を高く評価してもらえる傾向にあります。
融資における審査基準はベンチャーデットの事業によってさまざまですが、キャッシュフローの安定性や事業に関連した業務経験の有無、さらには業界内での評判なども評価対象となるケースもあります。
このように、ベンチャー企業への融資では、現在の資産や業績よりも、未来へのビジョンとそれを実現するための潜在能力の有無が評価されます。融資による資金調達を成功させるためには、評価項目を踏まえた事業計画書の作成や説明を行うことがポイントといえるでしょう。
関連記事:
【事業フェーズ別】スタートアップの事業計画の作成ポイント|事業計画書で重要な要素とは
ベンチャー企業が融資を受ける際の注意点
融資を活用するにあたって、着金されるまでに時間がかかる可能性が高いことを考慮しておきましょう。ベンチャー企業が融資を受けるためには、事業計画書の作成から必要書類の準備、申請手続き、そして審査を経て、融資が承認されるまで、数週間から数カ月かかることも珍しくありません。
融資の種類や金融機関によって、実際に資金を手にできるまでの期間は大きく異なりますが、どの融資でも即座に資金を手にすることはできません。急ぎで資金が必要な場合は、ファクタリング(売掛債権を売却し資金を得る手段)など他の資金調達方法も検討してみましょう。
資金調達の目的が広告費にあるのであれば、BNPL(※1)を活用する手段や、より早期の資金繰り改善として、期日の迫った請求書をクレジットカードで支払うことで、支払期限を延長させるサービス活用による手立てもあります。
例えば、バンカブルの広告費の4分割・後払いサービス「AD YELL(アドエール)」(※2)や「Vankable請求書カード払い」は、キャッシュフローの圧迫を軽減し、早期に・簡単に資金確保へとつながり、先行投資が可能になります。
どの資金調達方法を選択する場合でも、期間に余裕を持って進めることが大切です。特に、融資は準備する書類も多いため、しっかりと計画を練るようにしましょう。
関連記事:
ベンチャー企業の資金調達方法とは?調達先の選択肢と資金調達時の注意点を徹底解説
※1 後払い式の決済手段「Buy Now, Pay Later」の略。信用調査が簡易なため、欧米・若年層を中心に市場の広がりを見せている。今後、さらなる市場規模の拡大が予測されており、BtoB向けサービスの広がりも注目を集めている。
※2 「AD YELL」は、バンカブルが提供しているWeb広告の出稿費用を4回に分割・後払いが可能となるサービスです。請求書払いと法人カード払いに対応しており、オンラインによるお申し込みから最短3営業日でご利用が可能になります。原則として、担保や連帯保証人のご用意が不要(*)で、融資ではなく立替でサポートするため、今後の事業者さまの借入枠にも影響を及ぼしません。これらのサービスを通じて、事業者様のキャッシュサイクルを改善し、運転資金を圧迫しない形で事業成長を支援いたします。
*「担保・連帯保証不要」は原則であり、場合によってはその限りではありません。ご了承くださいませ。
多様なファイナンスを活用し資金調達した事例
ベンチャー企業が融資や出資など多様な手段で資金調達を成功させた事例を紹介します。
■株式会社ジラフ
株式会社ジラフは、買取比較サイト「ヒカカク!」を始めとする複数のウェブサービスや、トレカ・スニーカーフリマアプリ「magi」、さらには実店舗を含むさまざまなビジネスを展開しています。株式会社ジラフでは、Siiibo証券を利用してベンチャーデットを調達し、シリーズDラウンドで約20億円の資金を集めることに成功しました。その他ベンチャーキャピタル(VC)やコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)など多様なファイナンスを活用した資金調達を実施されてきました。
ベンチャー企業が融資を受けるためには、事業の多角化や将来性を示すことが重要であり、多様な資金調達の選択肢を検討することで、大きな成長のチャンスをつかめることが伺えます。
【状況別】ベンチャー・スタートアップ企業の融資の選択肢
前述した通り、ベンチャーやスタートアップの企業が活用できる融資制度はさまざまです。しかし、各融資で特徴や条件などが異なるため、常に紹介した全ての融資が選択肢として検討できるわけではありません。
本章では、企業の状況や事業フェーズなど、「どのタイミングでどの融資が選択肢として検討できるのか」を紹介します。
自社の成長に適した融資制度を検討する際に、参考までにご活用ください。
■「初期フェーズ」でも活用できるスタートアップ融資は?
創業期に活用できるスタートアップ企業向けの融資として、2024年4月から、「新規開業資金」が開始されました。従来の「新創業融資制度」を廃止して設けられた、新しい融資制度です。
融資の限度額が拡充されたり、利率が引き下げられたりなど、従来よりもさらにスタートアップ企業が活用しやすい制度へと刷新されています。また、事業者の年齢や創業の再チャレンジなどに応じて金利や返済期間が調整される、柔軟な融資という点も利点と言えます。
初期フェーズにあるスタートアップやベンチャー企業にとって資金調達の有用な選択肢となるでしょう。
新規開業資金についてはこちらの記事でも解説しています。あわせてご覧ください。
関連記事:
国庫を財源とする融資制度を解説!日本政策金融公庫とは
■「債務超過」にあるベンチャー・スタートアップ企業でも活用できる融資は?
債務超過の状況では、融資による資金調達のハードルはさらに高くなる傾向にあります。特に創業後間もなく、金融機関との関係がまだあまり築けていないベンチャー企業やスタートアップ企業にとって、融資の審査は厳しくなる可能性が高いでしょう。
ただし、企業の状況によって融資を受けられる可能性はゼロではありません。例えば、事業に対して将来的な成長が大きく見込まれる場合や債務超過の期間が短いような場合です。また、事業再建を目的とした融資制度も活用できる可能性があります。
債務超過からの立て直しに活用できる融資制度には次のようなものがあります。
- 日本政策金融公庫や商工組合中央金庫などの政府系金融機関の融資(事業再生・企業再建支援資金、セーフティネット貸付、通運事業近代化基金融資 など)
- 民間金融機関や金融業の融資(ビジネスローン、DIPファイナンスなど)
- 自治体の制度融資
一例のため、実際に検討する際は各金融機関や資金調達コンサルティングなどに相談のうえ、活用する融資を選択し準備を進めましょう。
■「迅速な資金調達を行いたい」ときに活用できる融資は?
基本的に融資での資金調達は時間がかかりやすい傾向にあります。融資を受けられるまで数カ月かかることもあるため、迅速に資金を得たい場合には不向きといえるでしょう。
ただし、融資のなかでもブリッジローンやビジネスローンであれば、スピーディーな資金調達が可能です。早ければ数日から1週間程度での借入が可能なケースもあるため、レスキューファイナンスとして有用な選択肢となるでしょう。
短期間での資金調達ができる一方、金利は通常の融資よりも高く設定されていることが一般的です。「もうすぐキャッシュインがあるため、すぐに返済できる」といった場合は問題ありませんが、返済期間が長引くと利息の負担が大きくなるため注意が必要です。あくまで「つなぎ」としての短期で活用したい方法となります。
融資の手段は慎重に検討して、自社のビジネスを拡大させよう
ベンチャー企業の成長には資金調達が欠かせません。ベンチャーデットなど、融資自体の種別の多様化や提供するプレーヤーも増えていますので、資金調達方法の選択肢として理解を深める必要性が増しているでしょう。融資を受ける際のメリットとデメリットは、選択する方法によって異なります。そのため、企業の現状や将来計画に合った資金調達方法を逆引きして選ぶことが大切です。
2022年11月に決定された「スタートアップ育成5か年計画」では、事業成長担保権など新しい資金調達方法の創設が進められています。
また、スタートアップやベンチャー企業の資金調達方法の選択肢は融資だけではありません。エクイティやその他の方法など、事業フェーズや自社の状況にあわせて適切な資金調達を行うことが、事業成長の要といえます。
資金調達においてベンチャー企業やスタートアップ企業を取り巻く環境も変わってきています。最新の動向にも注目しながら、自社に適切な方法を選択し、事業の成功につなげていきましょう。
弊社では、キャッシュフローの圧迫を軽減できる広告費の4分割・後払いサービス「AD YELL」などのBNPLサービスを通して、さらなる事業成長をサポートします。詳しくは以下のリンクよりご確認ください。
広告費の4分割・後払い(BNPL)サービス|AD YELL(アドエール)
広告媒体仕入れの支払いサイト延長サービス|AD YELL PRO(アドエールプロ)
請求書をクレジットカードで支払い延長「Vankable請求書カード払い」
ADYELLを活用して、
さらなる事業成長へ